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氷塊と金鉱石

そして4月。


訪問していただき、ありがとうございます。

王城の楽団が演奏するダンスのしらべが、向かい合った男女にふりそそぐ…。そんな言葉だけであれば、親密な甘い雰囲気も思い出さないわけではない。ただ…この王城の一角にある薬草園の今の状態の男女ふたりには、甘い雰囲気など微塵もなかった。


「また黙りか」


黙りたくて黙っているわけではないサフィーナは、もう限界を突破していた。


「私の質問に、質問で返さないで下さい。今回の夜会が、そういう目的があって行われていることは、存じあげております。されど、私が王太子様やフィニアス様と御縁を結ぶなど、鉱山で金鉱石を見つけるようなもの…。かといって、他の騎士の方が好き好んで、男爵領に来てくださるとお想いですか?男爵領も継げない私の元に…。騎士の方は、すでに皆様、准貴族の地位を与えられているのですよ。それに、幾人かは今回の功績で領地を戴くのですよね?ご自分が男爵という身分になられるのに、その身分を棄てますか?私がそちらに嫁げばいいと、お想いになられるかもしれませんが、私にだって、夢がございます。私は、将来領主となる弟を領内で支えてあげたいのです。ですから、私の婚姻は、政略でもいいので、弟や、男爵家にプラスになる方…。私と一緒に弟と領地を支えて下さる…そんな方がいいのです。…其故、ここに来たときこの薬草園を見て、いずれは、男爵領でこのような素晴らしい薬草園を作り上げたいという気持ちで、見ていたのです」


サフィーナがフィニアスに対して言ったことは、本当に思っていることだ。だが、一番に思っているのは、面倒だから、薬草園で楽しもうと思ったのだ。薬草園は、サフィーナが思っていた通り立派で、すごく興奮したし、夜会なんかよりも、楽しい場所だった。


だが…まさか今夜の主役フィニアスが、夜会を抜け出し薬草園にきた。そしてサフィーナに剣を突き付け不機嫌を隠しもしない態度でサフィーナにここにいる理由を問いただした時から、サフィーナは、楽しい時間が壊されてしまったように感じていた。


「…ほう…。よく口が回ることだ」


「納得していただけましたか?」


フィニアスの嫌味をサフィーナは、無視する事にした。不敬だろうが、なんだろうが、フィニアスの嫌味につきあっていたら、この状況を打破出来ないだろうと、サフィーナは思った。


「…ふん。言葉だけならなんとでも言えるな」


政略でも、良いなどと…。と呟かれたフィニアスの言葉は、サフィーナに届いてはいない。サフィーナは、呟かれた言葉を問いたいところだが、問うたら、また堂々巡りがおきそうだと、サフィーナは聞こえていないふりをした。


「フィニアス樣!フィニアス樣!」


中庭のほうから女性の声がしたとおもったら、小柄な侍女服を着た中年の女性が必死の形相で薬草園に入ってきた。


「ミリー」


「薬草園で、何をなさっているのですか!?皆様フィニアス樣をお探しですよ!」


「ああ、すまない。こちらのお嬢さんと楽しく、話をしていたんだ」


楽しく!?…楽しく!?なんて、頭の中で繰り返し疑問に思ったサフィーナの眉間にしわがよる。


「まぁ!さようですか!始めましてお嬢様、フィニアス様を赤子の時から、お世話させていただいているミリーと申します」


フィニアスの言葉をまともに信じたその侍女が、とても嬉しそうに笑顔でサフィーナに挨拶をしてきた。


「始めまして。アンソニー・フォン・ルーベンが娘、サフィーナ・フォン・ルーベンです」


丁寧に挨拶をされたら、サフィーナとて、丁寧に挨拶をしなければと、フィニアスに対する嫌悪感を隠すように、笑顔で侍女に淑女の嗜みとしてカテーシーを行った。


「ルーベン家と言うと…王都の西にある男爵家でございますか?」


「ええ。よくご存じで」


「もちろんでございます。レム・フォード商会が懇意にさせていただいております!」


「!伯父上が!?」


「ああ!えっ…」


伯父上が?と驚いたのは、フィニアスで、レム・フォード商会ときいて、ああ。と納得した後、フィニアスがレム・フォード商会と縁者なのだと驚いたサフィーナ。


そう…王都一、いやアーレル大陸一と言っていいだろうレム・フォード商会。そこが、もと、王妃の実家だと知るものは少ない。レム・フォード商会は、侯爵家でもある。王国よりも、財政力のある家だ。もと王妃が亡くなった事により、王国に対して、支援金を減らそうとしていたが、フィニアスへの褒章として、騎士団の副団長への就任を国がした事により、減額を免れていた。


「まぁ!まだそのような話をされていらっしゃらないのに、楽しい時間を過ごされたのですか?」


「あ、ああ…。そうなんだ。女性と話をしていて、こんなに楽しかったのは、母上やミリー以外で、初めてだ…。…そうだ!ミリー!彼女ではダメであろうか?私の婚約者に…」


そういってフィニアスは、笑った。凍てつくその笑顔は、目が笑っていなかった。





亀以上にのろい更新を待っててくださっている皆様に大感謝です。


少しでも、楽しんでいただければ何よりです。

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