閑話‐サフィーナの前世
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「堤防は、ないの?ダムは?」
私がその言葉を言ったのは、5才の時だったと思う。男爵領に水害がおこり、民家には影響がなかったけど、田畑に被害が出て、父と母が困っていたからだ。
堤防や、ダムというものを父と母が知らない事に私は、驚き…その時、不意にこの世界ではない記憶が頭の中に浮かんで、私は高熱を出し、寝込んでしまった。
寝込んでいる間も、次々とこの世界とはまるで違う世界の記憶が私の頭の中をスライドショーみたいに駆け巡った。
私の前世は、類瀬 紗奈という名前だった。
日本という国に生まれ、仲のいい両親と弟。平凡だけど、楽しい暮らしをしていた。父は、警察官、母は、看護士。私も看護士を目指し、看護学校に通っていたし、弟は、警察官になりたいと言って高校で剣道をやっていた。小さい頃、私自身も剣道をやっていたが、中学でやめてしまった事も、フラッシュバックした。薬草に興味をもったのは、看護士になろうと頑張っていた事も、あるのかなと、単純に思った。サフィーナの世界では、見ることが出来ない世界を私は、見ていた。
車、飛行機、電車…。冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機…。テレビ、スマホ…他にもサフィーナの世界には、ないものばかりだ。
私の前世に、当たり前の物が、今はない。サフィーナに作れと言っても、無理な物ばかり。
でも…出来る事は、あるはず。私がサフィーナの記憶にいる意味があるはず…。
「大丈夫?サフィーナ」
不安げな表情で、熱のさがった私の瞳にうつりこんだのは、父と母だった。
「大丈夫…。あの…あのね…」
母から冷たい甘い水を飲ませて貰った私は、前世の話を両親にした。夢だと思われても仕方ないし、私の事を気持ち悪いと思うかもしれない。でも、私の中にある前世の記憶が男爵領の役にたつのであれば、と思ったのだ。
「なるほど。…それで、サフィーナは、どこかが痛いだとか、そういうのは、ないんだね」
私の話を静に聞いてくれていた父が、私に笑顔で問う。やっぱり、こんな私の話信じる事なんか、出来ないよね…。私だって、こんな記憶がなくて、こんな話を聞かされたら、怪しい人だって思うもの。
「うん…。あ、の…」
「うーん。じゃあ、明日、その堤防っていうのが、どういうのか、お父さんに教えてくれるかい?」
父が私の話をまともに聞いてくれていた事に、私はびっくりした。
「信じて…くれるの?」
「ん?サフィーナが嘘なんかつくはずないだろう?お父さんとお母さんの愛する娘なんだから」
それはもう…快活な笑顔で、父が私を見た。母も一緒に頷いている。本当に嬉しかった。
翌日から、前世の記憶をたよりに、男爵領を発展させる事に、力を注いだ。堤防は、前世では、コンクリートが主だったものだが、この世界には、レンガがあるから、レンガを重ねる時に使うセメントがあるので、それを使ってもいいが、経費がかかりすぎるだろうから、川幅を広くし、掘った土や岩は、川の左右に土嚢として使う。土嚢を高くつみあげながら、強く踏み固める。土嚢の外側に沿うように苗木を植える。川底は、以前より少し低い程度。川幅は、以前の倍。土嚢は、当時のサフィーナの背丈より高いものが湖まで立派なものが続いて出来た。土嚢に沿うように、植えたサフィーナと同じぐらいの高さの苗木も今では、サフィーナを追い越して、立派になった。
ダムは、流石につくることはできないので、学校を開くことを提案した。今のこの世界で、平民の幼児教育は、なされない。男の子は、騎士見習いには、なれるが、多少の費用は必要で、騎士になったらその時払えなかった費用を払う事ができるが、必ずしも騎士になれるかと聞かれたら、そんな簡単なものではない。貴族は、ガバメントや親から様々な教育を受けた上で、騎士見習いになるので、苦労する事は、そうそうないが、平民は、騎士見習いになったとき、やっと教育を受ける事になるので、それが辛くなると、騎士の道をあきらめてしまうのだ。平民から騎士になるのは、一筋縄ではいかない。騎士になれなかった男の子達は、見習い期間の費用がはらえず、ほとんどが重労働につく。女の子は、騎士になろうと思えばなれないことは、ないが、男の子よりも更に困難な道だ。それがわかってるがゆえ、知り合いの店で働いたりしているのだ。
だが、サフィーナは、幼少より教育を受ければ、自分がどのみちにふさわしいか、見極められるし、男の子達も、騎士見習いや、重労働という道だけではなく、いろんな方向に将来選ぶ事ができると思ったからだ。男爵家で行おうとしていたが、流石にダメだと、執事にとめられたので、男爵領の中心地にある教会の集会所で行う事にした。強制ではなく、希望者のみだ。もちろん、費用は、無料。無料といえど、何もしないというのは、ダメだと、思ったので、当番制で集会所の掃除をしてもらう事にした。教師には、サフィーナをみていたガバメントに給料を増やし、教えて貰った。執事や侍女も仕事の合間をぬってガバメントの手伝いをしてくれた。教会の人達も、男爵領のためになるのならと、皆、協力してくれて、男爵領は、それまで以上に発展していった。
今では、この学校というシステムがゼウレス国中に行き渡っていた。それが男爵領のサフィーナが発案したというのを知るものは、男爵家に勤めるもの以外、知らない事である。
昨日…新しい話がうかんでしまい…書こうかなやんで…。いやいや…と悶々しております。
新しい話をすすめてたら申し訳ないです。




