6.棚からなんとやら
お久しぶりです!
ん?あれ、ここって私の部屋だよね…
目を開けると自宅にいた。
あれれ?いつの間に帰ってきたんだ??
確か明の家に行ってたんだよね、マンション出たらへんまで覚えてるけどその後のこと何にも覚えてない…
というか朝になってるし…
どういうこっちゃ??
とりあえずリビングに行ってみるとテーブルの上にメモを見つけた。
舞さんへ
おはようございます。体調大丈夫ですか?
舞さんの鞄に入っていた鍵を使って家に入りました。勝手に鞄を開けてしまいすみません。
冷蔵庫にスポーツドリンクとおかゆを入れておいたので良かったら温めて食べてください。
鍵はポストに入れておきますね
悠真
…。あー!
そうだ!マンション出た後に熱が出てるってなって、悠真くんがタクシー呼んでくれてる間に意識がなくなっちゃったんだ…
うわ〜申し訳ないことをしてしまった…
ここまで運ぶの大変だっただろうに…
どうやら悠真くんは帰ってしまったようで玄関に靴もない。
気を取り直して熱を測ってみると至って平熱である。うん、治ったみたいだね。体もスッキリしてて軽いしね。
昨日の昼から何も食べてなかった上、熱で体力を消費していたのでとてもお腹が空いていた。
おかゆがあるということで冷蔵庫の扉をあけると、そこには手作りのタマゴ粥があった。
まじかー。手作りかー。
てっきりコンビニとかで売ってるレトルトのやつかと思ってた。
悠真くんが作ったんだよね、これ。
そういえば料理はするって言ってたもんね…
いや、ほんと、ありがたや〜
絶対将来いい主夫になるよ…
早速レンジでチンして食べてみると
「え、何これ!?美味しい!」
思わず口に出してしまうくらい美味しかった。優しい母の味って感じ。
どうしよう、本格的に悠真くんのオカン力がすごいんだが…
弟子入りしようかしら。相手いないけど嫁入り修行してみようかしら?
お腹もいっぱいになったところで、悠真くんにお礼をしなければとスマホを取り出した。
が、ここであることに気がついてしまった
「悠真くんの連絡先知らないんだった…」
そう、LINEも知らなければ携帯番号も知らない。
テーブルの上に置いてあったメモの裏側を確認して見てもなにも書いていない。
そうだよね…所詮私たちは恋人(仮)にすらならないような関係だもんね。一昨日までは全く知らない人だったわけだし…
今となってはただの他人だもんね…
悠真くんと話しているとずっと前から知ってる人と話してるみたいに楽しかったからすっかり忘れてたわ。
でも、いろいろ面倒かけたしお礼の1つや2つしたかったんだけどな…
どうしたものかと思っているとインターホンが鳴った。
もしや悠真くんでは!?と思ってインターホンを見て見ると、そこにいたのは見知らぬイケメン。
誰だ?知り合いにこんな人いたっけ?
類は友を呼ぶっていうし、明か篤の知り合いとか?
でも2人の知り合いがわざわざうちに来ることなんて普通に考えてないしなぁ…
とりあえず通話ボタンを押してみた
「はい。どちら様でしょうか?」
「え、あれ?俺ですよ」
俺?いや、誰やねん!!
これは人違いパターンかなぁ。もしくは俺俺詐欺とか?
「もしかしたら階数間違ったりしてませんか?すみませんが知らない方な気がするのですが…」
「え、でもここって野垣舞さんのお宅ですよね?表札に野垣ってあるし…
俺です!悠真です!」
え、悠真くん!?
急いで玄関に行って鍵を開けるとそこにはやっぱりイケメンがいた。
「あ!舞さんおはよう!具合どうかなって思ってきちゃったんだけど、迷惑だったかな?」
キラッキラした笑顔からの心配してる表情をしたイケメンがいたよ。
もう、存在が眩しいよ。
でもその声は確かに悠真くんのもので、彼が悠真くんであることは間違いないようだ。
「本当に悠真くんだったんだ…
いや、迷惑なんかじゃないよ!逆に迷惑をかけて申し訳ないです。
ささっ、どうぞお上りください」
「にしても焦ったなぁ〜
本当に部屋間違えたのかとか、舞さんが熱で記憶が飛んじゃったんじゃないかとか色々考えちゃったよ」
そう苦笑している悠真くん。
「私も一体どこの誰だろう?って焦ったよ…
悠真くん昨日までと別人じゃない?
全然気がつかなかったんだけど」
「あー。最近忙しくて髪の毛切る時間も無くて、ようやく一区切りついたと思ったら風邪こじらせちゃったんだよね。
そこで舞さんと出会った感じなんだ。
でも前髪長くて視界も悪いから朝一番で切ってきてもらったんだ」
にしても衝撃的ビフォーアフターだよね。
あのもっさりは無くなってしまったのか…少し寂しい気がするね。
「なるほどね…
いや〜でも本当にびっくりした!
あ!そうだ!
悠真くんが作ってくれたお粥すごく美味しかったです!
色々看病していただきありがとうございました!」
「お粥食べてくれたんだ。
美味しかったならよかった。
ところで体調はどう?熱下がった?」
そう言いながら悠真くんの手のひらが私のおでこに触れた。
あと、それに伴いお顔が近づいてきた。
「熱なら下がったから!
ちょ、ちょっと近いかなぁ〜」
いきなり近づいてきたら心臓ちゃんがびっくりしちゃうからね!
明と篤は置いておいてそのほかの男の人に耐性とか無いからね!しかも悠真くんの顔すごく整ってるから余計に耐えられない!!
年齢=彼氏なしをなめないで欲しい。
「うん。下がったね。
よかった〜
体はだるくない?」
距離を取ることに成功した!
うんうん、このくらい離れてないとね!
「ぜんっぜんだるくない!
むしろ軽いよ!
すっかり元気になったみたい」
悠真くんも次の日には元気になってたし、多分そういう風邪なんだろうね!
「そっか。でも一応今日一日ゆっくりしようね。
俺、来る前に色々用意してきたから。俺に任せて舞さんはゆっくりしててね」
「うんうん。って、え!?
大丈夫だよ!本当にもう良くなったし、悠真くんの貴重な時間がもったいない!」
「大丈夫!俺今ひと段落ついたところだし」
いや、何一つ大丈夫じゃないからね!
昨日も病み上がりの悠真くんにわざわざ彼氏のフリしてもらったし…この時点でもうすでに私が悠真くんの看病をした分は余裕でチャラになってるし、むしろ病み上がりなのに付き合ってもらってしまって本当に申し訳ない。
挙げ句の果てに出先で意識を失った私を家まで連れてきてくれて、看病までしてくれた、と。
うん。私悠真くんにとてつもなく恩があるよね。
というか悠真くんがいい人すぎると思うんだ。親切すぎると思うんだ。
これじゃ悪い人に騙されちゃうんじゃ無いか?心配だなぁ
「悠真くん。悠真くんがすっごくいい人で親切な人だってことは分かってるし、それは素晴らしいことだと思う」
「え、いきなりなに?なんで俺褒められてるの?」
いきなり正座をして姿勢を正す私に困惑した表情の悠真くん。
「だけどね!世の中には悪い人もたくさんいるんだからね!
気をつけないといけないんだよ」
騙されてからじゃ遅いんだからね!
「うん?そうだね、大丈夫だよ。
俺しっかりしてるからね」
そう笑顔でいう悠真くん。
本当に大丈夫か?大丈夫じゃ無いと思うんだけどねぇ…
心配になってきたよ…
「悠真くん。あのさ、昨日からたくさんお世話になったし何かお礼をしたいんだけど、何かして欲しいこととかある?
できる限りのことはいたします!」
「お礼って、昨日のは俺が看病してくれた舞さんにお礼をしたんだよ。
だから舞さんがお礼する必要なんて無いと思うんだけど…」
「いやいや、看病したとはいえ病み上がりだった悠真くんに彼氏のフリしてもらったり、私の看病までしてもらってしまって…
本当に助かりましたので!」
人の親切に触れたよね。
普段菫達にいいように使われることが多いせいか、親切にしてもらうと人一倍嬉しく感じるようになったと思う。それに自分も困ってる人がいたら助けたいって思うようになったんだよね。
「そうか…
だったらお願いしたいことがあるんだけど」
「うん。なになに?」
女に二言はないよ!この野垣 舞になんでもお任せあれ!
「俺の彼女になってください!」
そう言って勢いよく頭を下げた悠真くん。
私は大混乱。幻聴が聞こえたのかな?
「え、待って今なんて言った?
彼女とか言った??」
「言いました。俺の彼女になって欲しいんです!
だめ、ですか?」
そう言って頭を上げた悠真くんの顔は真っ赤で、どうやら聞き間違いではなさそうだ。
「なになに。もしかして悠真くんも何か困ってることとかあるのかな?
悠真くんかっこいいし、何か女の子関係で困ってるとか?
そういうことなら…「違う!あの、俺、舞さんのことが好きなんなんだ!
だから付き合って欲しいなって…
でも嫌だったら断ってくれて全然いいです」
…。
今度こそ思考停止したわ。
え、なに、もしかして私今告白されてるの?
どういうことだーーーー!!!
まさかまさかの人生初の告白をされるというシチュエーション!?
「もしかして人違いとかじゃ無いよね?」
「人違いなんかじゃ無い!
俺は舞さんのことが好きなんだ。
舞さんは俺のこと嫌い?」
そう聞かれたら
「嫌いじゃ無いよ」
と答えるしか無いよね。だってこんなにいい人なかなかいないからね。
嫌いなわけないよね。
「じゃあお試しでもいいから俺と付き合ってください」
「お、お試し?」
お試しってなに?そんなんあるの?
初耳なんですけども…
「うん。試食みたいなものだよ。
それに、車を買う時だって試し乗りしたりするでしょ?それで良かったら購入するでしょ?
それと同じだよ」
「試食…お試し…試し乗り…
わかった。お試しする」
大混乱に陥った私はこのように結論を出したのだった。
わけもわからず悠真くんに流された感も拭えないが…
「本当!?嬉しい!
俺、舞さんに好きになってもらえるように頑張るね!」
それまで不安そうな表情をしていた悠真くんが嬉しそうに笑ったのでとりあえず良しとしよう。
美形の笑顔、プライスレス!
それにできる限りお願い聞くって決めたしね。
野垣 舞、彼氏(仮)からの彼氏(試運転)ができました(?)