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13.いつだって新鮮

9/28追記

エピソードが抜け落ちていたので追加しました

 


 くたびれた顔をしたビジネスマン、小さい子供を連れた夫婦、大学生カップル、肌が白い人、黄色い人、黒い人。多くの人がキャリーバッグやお土産が入った紙袋を持ってせかせかと歩いて行き来している。

 そんな中私は毎日使っている通勤バック1つをもって目的地に向かって一心不乱に歩いている。

 横を見るとガラス窓の向こうには白くて大きな翼の乗り物、飛行機が見えている。そう、ここは飛行場である。


 実は私、今めちゃくちゃ焦っている。

 あーどうしよう!早く行かなきゃいけないのに人も多いし走るわけには行かない…

 それもこれも彼奴らのせい!

 もーせっかく時間に余裕持ってこようと思ってたのに…これじゃ遅れちゃうよ!




 遡ること1時間前、私は荷物を片付け定時ダッシュをキメようと鼻息を荒くしていた。1つ言っておくけど本当にフンってしてたわけじゃないので悪しからず。

 でも、本当に久しぶりに花音と会えるって知ってからこの日をすごく楽しみにしていた私は一日中そわそわしていたようで、今西ちゃんには「先輩今日は何かいいことでもあるんですか?」と聞かれてしまった。今西ちゃんニヤニヤしてたからな〜多分悠真くんのことを言ってるのかなって思ったけど「うーん、どうかな〜?」とお茶を濁した。


 しかし、出会ってしまったのだ…そう、篤と明に…急いでる時に会いたくない人ナンバーワンなのに…

 会えば必ずと言っていいほど絡んでくる。それがお前らの仕事だとで思ってるのか?賃金は出ないぞ??って言いたいくらい絡んでくる。


「悪いけど今急いでるから!」


 そう主張しつつ横を切ろうとしたが、


 パシッ


 篤に腕を掴まれてしまった。


「待て待て。そう慌ててもいいことないぞ。急がば回れって言うだろ?」


「そうだよ舞。それで、そんなに急いでどこに行くの?彼、とか?」


 2人は胡散臭い笑みを浮かべてそう問いかける。


「違う。花音だから…!遅れたのがあんた達のせいだって知ったらきっと怒るでしょうね」


 花音と聞き、2人は苦い顔になった。


 花音は私の親友しているだけあり、この2人にもかなり強く出ることができる。なんなら私なんかより強い。3人から告げられる無理難題をはねつけることができるのだから。見習いたいものだ。


 2人が一瞬ひるんだ間に篤の手からするりと抜け出し、そのまま振り返ることなく会社を出たのだ。


 そして、早歩きで駅にたどり着いたものの惜しくも乗る予定だった電車に遅れてしまったのだ。

 あそこで2人に捕まらなければ余裕を持って行けたのに…

 と、いうことで時間ギリギリになってしまったのだ。




 内心で愚痴をこぼしながら黙々と歩いていると、ようやく目的地に着いた。

 すると自動扉の奥からぞろぞろとキャリーケースを携えた人達が出てきた。じっとその人達に目を向けているとお目当の人物を見つけた。


「あ!いた!

 おーい、花音ー!」


 そう、私の大親友の花音だ。

 呼んだ声に気がついたようで、女神の微笑みを浮かべると手を振って応えてくれた。


 いやー、あいも変わらず綺麗な人だなぁ。ほら、周りの男の人も女の人も花音に視線が釘付けになってるし!



「舞!会いたかったよ!」


 そう言って思いっきり抱きしめられた。花音は背が高いから私はすっぽり花音の腕の中に収まってしまうのだけど、ここめちゃくちゃ居心地がいい。なんか、フローラルな香りがするし!


「私も会いたかったよ〜」


 ぎゅっと私も抱きつき返した。あっ花音の胸柔らかい〜とか思ったのは内緒ね笑

 これが私と花音の再会の挨拶なのである。ちょっと恥ずかしいけど幼少期から高校の途中までアメリカで過ごした花音の影響で慣れたよ。

 菫は「なんで舞ちゃんに抱きついてるの!?ずるい」とかなんとか言ってたけど、菫も結構抱きついてくるからな〜別に私が誰とハグしてようと関係ないじゃない!って思った記憶あるな〜




 積もる話もそれはそれは山のようにあるので今日は私の家に花音が泊まりにくるという話をしていたので、早速電車に乗り込んだ。



「お邪魔します」


「はーい!いらっしゃいませ〜」


 我が家についた。


「おお〜舞の家に来るのも久しぶり!」


「あー確かに、去年一回来たっきりだもんね」


 花音はアメリカでの勉強に忙しくてなかなかこっちに帰ってこれてなかったもんね…大学時代は毎日会っていたから余計に寂しかった…


 昨日の夜に仕込んでおいた親子丼をパパッと仕上げて夕飯にして、お風呂に入った。

 花音は私が作った親子丼を「美味しい!舞料理の腕あげたね!すごく美味しいよ!」とべた褒めしてくれた。ふっはっはー!




 それから用意しておいたお酒をちびちび飲みながら花音のアメリカでの話をいっぱい聞いた。花音には大学時代から付き合ってる彼氏さんがいるんだけど二つ年上の彼、和馬くんも今はアメリカで働いている。休みが会う時に旅行に行ったりしていて、写真付きのメールが届くこともなんどもあった。

 ほんとね、花音と和馬くんカップルはナイスカップルなの!二人ともびっくりするくらい優しいし美人だし!!大学の憧れの的だったんだよね。懐かしいなぁ。




「それで、舞は最近どうなの?」


 おう…

 ひとしきり話したところで私に話題が移ってきた。


「それがね、なんと!彼氏みたいな感じの人ができたの」


 ここは悠真くんのことを話そうと思った。


「え!?本当に!!!」


 一瞬ガバッと前のめりになった花音だったけど、すぐな元の位置に戻ると真面目な顔で


「待って。一旦待って。

 確認なんだけどね、その人ってあの2人のうちのどちらかとか?」


「あの2人??」


 誰のことだ??


「あっ、その反応は違うね。

 うん。理解した!

 舞おめでとう!!!やったじゃん!本当に良かったよ。私は!うれしい!」


 結果的にとても喜んでくれた。なんていい子なんだのだろうか!好き!!!


「それでそれで!その人ってどんな人なの!?どんな風に出会ったの!?というか私の知ってる人???」


 怒涛の質問攻めが始まった。





「なるほどね〜」


 一通り私の話が終わるとしみじみと花音はそう吐き出した。ちなみにこの頃には私達は完全に酔っていた。


「それにしてもなんともレアな出会い方だよね。運命感じちゃうんじゃ無い?」


 ニヤニヤしながらチューハイ缶を煽る花音は完全におっさんである。


「運命か…でも確かにこれまでの20うん年間ここまで恋が発展したことなかったから確かにすごいことだなって思う」


「そうね…舞は本当に苦労してきたわ。だからこそ!その悠真くんと幸せになってもらいたい!!!」


 片手でチューハイ缶を握りしめ、片膝立ててそう力説する花音はさながら選挙戦に挑む候補者のようだ。思わず「よっ!花音!日本一〜!」と拍手を送ってしまった。酔っ払いテンション恐るべし…


「ねね!悠真くんの写真ってないの?みーたーい!」


 写真か…探そうと思いカメラロールをスクロールしていてふと気がつく。


 そういえば、私達写真を撮ったこと無いや。


 3人に写真(隠し撮りや不意打ちがほとんど)を撮られては「うわっ変な顔してるな」とか「菫の方がかわいいね」あの2人は言うし、「舞ちゃんの寝顔かわいいね」などとどう見てもよだれが垂れてアホみたいに寝こけてる写真を指して言われてきたのだ。そりゃ写真撮るのもあんまり好きじゃ無いわけです。

 でも花音とは残したい思い出もいっぱいあるからって撮るようになったな…


「うーん。無いみたい…」


「残念〜。美男美女を見慣れてる舞がかっこいいって言うほどの顔が見たかったのになぁ〜」


「そんなこと言ってたら和馬くんに報告しちゃうんだからね!」


「良いわよ。だって和馬は私が和馬の顔も中身もぜーんぶ1番好きってこと知ってるもの」


 そう言ってふふふ、と笑う花音。すごい惚気を正面から食らってしまった。ご馳走様です!


「まあ、それは冗談なんだけどさ。気になるよ〜だってあの3人にも彼、会ってるわけでしょ?

 只者じゃ無いわね」


「只者じゃ無いってなにそれ〜

 悠真くんは確かに優しくて良い人だよ」



 でもこの前のアレは一体なんだったんだろう?あの時の悠真くんは本当に別人みたいだったもんね…

 あの後会った時は何も無かったかのように普通なんだよね。うーん。今思えば勘違いだったのかな?



「あ!そうだ!私今回割と長く日本に居られるんだけど、後から和馬も来るんだよね。

 だからさ、その時に悠真くんも誘って4人で食事しに行かない?」


 ほうほう。和馬くんも来るのか!


「悠真くんにも聞いてみなきゃいけないけど、もし良いよって言ってくれたら是非食事しよう」


「やった!じゃあまた日程調整とかやろうね。

 よし、それじゃあ今夜はとことん飲むぞー!」


 そう言ってまた新しい缶に手を伸ばす花音。明日は2日酔いを覚悟するしか無いね…



 私たちの夜はまだまだ続くのであった。

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