ex.そして彼らは暗躍する 2
※竜也目線
あれからなんやかんや準備した俺は今、動物園にいる。しかも1人で、だ…泣きたい。割と泣きたい。22にもなった大人が1人で動物園…しかも見つめる先には楽しそうにイケメンと会話しながら動物たちを眺める姉。何が悲しくてこんなことをしているんだ…とか考え出したらきりが無いから考えることを放棄した。
はぁ〜
でも思わずため息が出てしまうのはしょうがないと思う。そのくらいは許されるよな。
『どうだ?動きはあるか?』
インカムから聞こえて来たのはあつ兄の声だ
「なーんにも無いよ。楽しそうにデートしてるよ」
『そっか〜それじゃ、そのまま続けてね』
「はいはい」
ちなみにあつ兄とあき兄は近くの駐車場に停めてある車で待機している。でもインカムなんてものがポンと出てくるあたりあの2人も相当だよな…流石というか、まじで姉ちゃんに彼氏ができたんだとしたらどうなるんだろうな。ま、俺は何があっても姉ちゃんの味方だけどね。
てか人使い荒すぎだろ。いつものことなんだけどさ…でもあの2人が来たら目立つからな〜なんて言うか、歩くパンダ?みたいな??こんなこと本人たちに行ったらどやされるんだろうけど、姉ちゃん達が並んでいたからついでに俺も見たパンダを見てそんなことを考えていた。秘密だけどな笑
でも新藤さんも歩くパンダだよな。俺、あつ兄とあき兄以外で初めてこんなかっこいい人見たんだけど…さっきからすれ違う人みんな振り返ってるぞ。わかる。俺もはじめ見た時三度見くらいしたから。そして隣を歩く姉ちゃんも動じないとかさすが!あつ兄たちと歩いてる時もいつもああなるから慣れてるんだろうな…
そして最初、新藤さんを見た時は「なんだこのイケメン!?姉ちゃんこれ絶対騙されてるよ!!」って思ったんだけど、どうやら彼いい人みたいなんだよな。まず姉ちゃんを見る目が優しいと言うか「好き!」って気持ちが前面に出てる感じが伝わってくる。それに姉ちゃんが見たそうにしてる動物の方に上手いこと誘導したり、喉乾いてそうだと察して飲み物買ってベンチで休憩したりとエスコートもバッチリだ。できる男感ハンパない。俺も見習おう…
それに姉ちゃんもすごく楽しそうにしてるんだ。男と一緒にいてあんなに楽しそうに笑ってる姉ちゃんなんて見たことない。あつ兄やあき兄といる時は困った顔してることの方が多いもんな〜
なんだか少し寂しいような嬉しいような複雑な親心(?)ってやつを噛みしめている。
その後、動物園をすっかり満喫したらしい2人は遊園地を後にしイタリアンレストランへ向かった。
ネットで検索したところお店もいい感じの雰囲気の店で、さらにリーズナブルなお値段らしい。奢られても姉ちゃんが萎縮しないくらいの塩梅がよくわかっていらっしゃる。
ちなみに俺はあつ兄達の車であき兄がつくったお弁当を食べている。料理までできるとかあき兄ほんとすごいよな。しかもめちゃくちゃ美味しい、はずだ…
なんたって車内の空気の重いこと重いこと。お通夜ですか?ってくらい重いから。せっかくの料理を味わうどころの騒ぎではない。
「いや〜あき兄のお弁当ほんっと美味しい!さすがあき兄!」
と褒めてみても
「うん。ありがとう」
と生返事が帰ってくるだけ。
「あつ兄のその服かっこいいね!」
と露骨に褒めてみても
「ああ。明の料理は美味いよな」
と全く関係ない返事が返ってくる。
2人ともぼーっと姉ちゃん達が楽しそうに食事をしているレストランを眺めているのだ。
いや、怖いから…!そこに幽霊でもいるのか!?ってくらい見つめちゃってるからね??これ以上ここにいたら息が詰まりそうだ…
車内の異様な雰囲気になんとか耐えて、ようやく食事が終わった。ほんと長かった。よく頑張ったぞ俺!ちなみに弁当は完食した。あの状況でも食べきる俺もなかなか図太い神経の持ち主なのでは??姉ちゃんの弟だからかな、なんてね。
この後どうするのかなと思っていたけど、新藤さんは姉ちゃんの家まで送ってくれた。そのまま家に入ったりしたら速攻で乗り込んでやろうと思ったけど(姉ちゃんの貞操は俺が守る)、エントランスでちょっと話した後すぐに別れて帰って行った。
いや、まじで紳士すぎないか?このご時世にこんな紳士がいるのか!最初怪しいんじゃないかとか詐欺師じゃないかとか疑ってしまってすみません!めっちゃ良い人…
あれだけ顔がいい人(誰のことかは察して欲しい)って中身どこか歪んでたり捻くれたりしてる人ばっかしか見てこなかったから心配だったんだけど、いや〜あんな素敵な人っているもんなんだな。やっぱ姉ちゃんが優しい人だからかな、類は友を呼ぶ?ってやつ??
まーでも直接話したわけじゃ無いから完全に心許すってところまではいかないけど、少なくとも姉ちゃんを悪いようにするような人じゃ無いと見た。俺、これでも人を見る目はある方だからね。
でも新藤さんって俺と同い年か少し下くらいじゃ無いか?姉ちゃんの初彼氏が俺と同年代くらいの年下だとは思ってなかったわ〜
というか姉ちゃんに彼氏が出来ると思ってなかった。いや、姉ちゃんは弟の贔屓目抜きで優良物件だと思うぞ。何はともあれ俺は2人を応援する。だから姉ちゃん、早く俺にも新藤さんのこと紹介してくれよな!
そして気になるのは2人の出会いだ。あき兄達3人がべったりガードしてるから姉ちゃんが他人と、それも男と知り合うことなんて出来ないと思ってたんだけどな。今までだって休みの日には何だかんだ用事押し付けたり無理やり遊びに連れてったり、姉ちゃんが合コンに参加しようものなら片っ端から潰しにかかったりしてたからな…あの3人の姉ちゃんに対する執着は正直異常の域に達している。まーそこんところは今度詳しくな。そんな3人の包囲網を新藤さんは一体どうやって搔い潜ったのか、その辺りも気になる。とても気になる。
さて、姉ちゃんと新藤さんのことは一旦置いておいて、この人達はどうするのかな…姉ちゃんの灯りがついた部屋の窓を見つめてそのまま微動だにしない2人の姿を眺めていると先が思いやられる。
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