ex.そして彼らは暗躍する 1
※誰視点でもないです
土曜日の朝、舞が悠真との初デートに向けてあれやこれやと準備している頃
「なぁ、今日なんだよな?」
「うん。間違いないよ。今週末デートするって言ってたし、菫が買い物に誘ったら土曜は絶対無理って言ってたらしいし」
「そうだよな…」
2人の男が
「「はぁ〜」」
大きなため息を漏らしていた。ちなみに言うと篤と明である。
「本当、信じられんないんだけど…あの舞がデートだって」
「だよな。でも相手の新藤がどういうやつなのかまだ分からないからな」
「舞にいつから付き合ってるのか聞いてみたけど曖昧な答えしか返ってこなかったしね。それに今まで彼氏の影なんかどこにもなかったのに今週一週間毎日彼が迎えに来てたって言うのも怪しいと思う」
「この前会った時は前髪でよく見えなかったが菫が言うにはかっこいいんだろ?あの菫が言うんだ、かなりの顔だよな」
「ま、今調査してもらってるところだから結果が出るまで待ってみよう」
「だな…」
明の広いマンションに静寂が広がった。
ピンポーン
インターホンが鳴った。
「はいはーい入って入って〜」
明が連れて連れて来たのは
「あき兄あつ兄久しぶり〜!」
「おう、久しぶりだな竜也」
舞の弟、竜也だ。現在大学四年生、犬系か猫系で言えば犬系一択フェイスである。
「それで、姉ちゃんが大変って一体何事なの?まさかとは思うけど姉ちゃんに何かあったの?」
ニコニコと笑っているものの目の奥が笑っていない。
「落ち着いて。まったく相変わらず竜也はシスコンだよね」
「だな。小さい頃から姉ちゃん姉ちゃんって舞の後ろついて回ってたもんな」
そう篤と明が指摘すると
「な!それは昔の話だろ!それに姉ちゃんのこと放って置けないだろ。どっかの誰かさん達が姉ちゃんをいじめるから俺が守るしかないんだ」
顔を真っ赤にして睨み返して来た。事実、竜也はシスコンである。舞が3人にこき使われていると知ってからは特に拍車がかかった。
「虐めるなんて人聞き悪いな〜あき兄は悲しいよ」
態とらしく眉を寄せる明は本当に悲しそうに見える。まあ見えるだけだけど。
「なんとでも言えば?それで、要件は一体何?わざわざ呼び出したってことは何かあるんでしょ」
「ああ。実は、今日舞がデートするんだよ」
……。
………!
「デート!?え、何それ俺何も聞いてないんだけど…姉ちゃんがデート…」
竜也はかなりの衝撃を受けた様子だ。
「ああ。彼氏とデートするんだそうだ」
……!!
「彼氏…?彼氏ってなんだっけ…彼氏ってあの彼氏?カレカノの彼??」
続く篤からの一撃で竜也は完全に混乱しているようだ。
下を向いて肩をふるふると震わせたかと思った次の 瞬間
「俺、彼氏が出来たなんて聞いてない!」
ガバッと起き上がり大声で叫んだ。
しばらくして漸く竜也も落ち着いたので今までの経緯を2人が話して聞かせた。
「なるほど、姉ちゃんが彼氏(?)とデートするってことはわかった。そんで新藤さんもなんか胡散臭いってことだな」
「そうそう」
ご名答とばかりに明が頷く。
「それで?俺を呼び出したってことは何かやるの?」
この2人が呼び出したってことは経験上そう言うことなのだ。彼もなかなか苦労してきたことが伺える。
「その通りだ。竜也には舞のデートの尾行をしてもらいたい」
……
………。
「え!?嘘でしょ?やだよ。姉ちゃんがどこぞの男とイチャラブしてるところなんて見たくないんだけど!」
当然の反応である。姉のデート現場なんぞ見たくないだろう。
「でもな、俺らじゃバレるかもしれないだろ?」
「自分で言うのもなんなんだけど、僕らって注目されちゃうからさ…人が多いところだと舞にばれると思うんだ」
…。
「それは確かに(あつ兄あき兄と出かけると必ず逆ナンされるもんな…)」
イケメンを見つけた時の彼女たちの目はハンターのそれだ。あれはビビる。
「でしょ?それに竜也も新藤さんがどんな人か気になるんじゃない?」
「…(正直めっちゃ気になる、それに新藤さんが悪い奴だったら姉ちゃんが危ないし)」
「これは竜也にしか頼めないんだ。どうだ?やってくれないか?」
明からの篤の巧みな誘導により
「やる」
竜也は姉のデート尾行を引き受けてしまったのであった。
「ありがとう。竜也ならきっと引き受けてくれると思ってたよ」
中性的な美貌をもつ明がニヤリと微笑んだ。完全に悪代官のそれである。
「そうと決まればこっちきて、色々準備するから」
こうして3人は何やらごそごそと行動を開始したのであった。
今まで段落下げが反映されていなかった様なので修正しました。




