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思いがけず弱味を知ってしまった

ブックマークありがとうございます!

なんか、予約して投稿も出来る機能もあるみたいで。試したいけど、失敗したら嫌だなと、小心者感が半端ないです。

あの話とは、本気で料理人を目指さないかというお誘いだ。


料理人を目指すのであれば、ずっと厨房を貸すし、専門学校の学費だって出しても構わないと、秋野家は佑都に話していた。

 

第1回目の話し合いは、佑都が中学校3年生で、進路に迷っていた時だ。

佑都の料理センスに惚れ込んだ雄三氏は、宮沢夫婦に相談を持ちかけた。


結果は、本人の意志が固まっていないので保留という形で収まった。


期限は高校3年生になる春休みまでだ。

 

「ん~。前も話したけど、僕は料理を仕事にする気はないんだよ。たまたま、こんな身体に生まれて、料理に気をつけないといけないからやっているだけだからさ。」


「それでもぉ~。ゆーとの料理は美味しいし、ゆーとならではのメニューがうちで人気なんだよぉ~。」


雄三氏は、佑都の料理を試食して、『これはイケる!』と判断した料理はメニューにのせている。

 

雄三氏のニヤリとした商売人の顔を、佑都は忘れない。

 

実際、『蒸し野菜』は意外にヒットだった。

野菜を蒸しただけだが、その素材が優秀だった。市販されていない無農薬野菜で、何件も農家をはしごして見つけた野菜だ。

試食した雄三氏は、すぐさま農家の主に掛け合い、仕入れ先にしてしまった。

今では、売上トップ3に入っている人気メニューに名乗りをあげている。

 

「それもたまたまだよ。農薬を使っていない野菜を探していただけだし。」

 

それを自分の力だけで探し当てる中学生は全国で何人いるのだろうか。

 

佑都は自分がやった行為のスゴさを理解していなかった。

 

(ゆーとの料理に、看板娘のわたしぃ。

お父さんのノウハウがあればやっていけるのにぃぃ……。)

 

明日は早くきてみりん干しの続きをしないといけない。

絢香とのやりとりを切り上げ、佑都が家に帰るのだった。

 

翌日


みりん干しの続きをやりに佑都は絢香の家にきた。


「おう!佑都きたか!」


いかつい雄三氏が佑都を待っていた。絢香から聞いた"サバのみりん干し"に興味を引かれたらしい。


「…店長。みりん干しはお昼にするんじゃなかったんですか?」

 

「絢香が言ってるだけで、俺は言っていないぞ!」


佑都からしたら、自信を持って提供できる料理だけを試食して欲しかった。

 

「美味しいかどうかは分からないですよ?僕も初めての料理なので。」

 

「かまわん、とりあえず作ってくれ」

 

「はい!」

(いやいやいや、店長も作れるんだから、自分で作りなさい!って言えたら楽なんだけどな。)

 

上司の命令には、『できない』と思っていても『はい!』と、元気よく返事をするしかない。思わぬところで社会の上下関係を学ぶ佑都。

 

 

 

お店はお昼時から開店する。佑都と雄三氏はその前に仕込みを始めていた。

朝食を終えた絢香が佑都に感想を言う。


「みりん干し美味しかったよぉ~優しい味だったぁ~!」


「僕には、まだ少し甘すぎ。みりんの量は半分のそのままで、砂糖だけを今度減らしてみるつもり。」

 

「シンプルに美味かった!ヘルシーなみりん干しには間違いないからな!女性客や子供をターゲットにしたら……『イケる!』」


また商売人の顔になっている雄三氏を無視する2人。


(はぁ……。仕込みに集中しよう。)

 

またメニューが増えそうな雰囲気である。

 

午後1時が過ぎ、古びた店舗と歴史を感じさせる暖簾の前に美少女達が立っていた。

土曜日ということもあり、店に入れない人が列を作っていた。 


(有名なのかなぁ?行列がすごい。はぁ……早く中に入りたいなぁ。)


「あーちゃん大丈夫?」

 

「結構混んでるね。優香ごめんね、付き合わせて。」 

 

「大丈夫だよー。うちも暇してたから。それよりもなに食べるか決めた?」

 

2人はネットからメニューを出して、店にはいったらすぐ注文できるように準備していた。

 

「ん?なんか中が騒がしくない?。」

 

引き戸の前で待っていたが、図太い声が次第に大きくなって迫ってきた。

 

ガラガラガラ!!

 

急に引き戸が開き、定食屋のエプロンをした宮沢佑都が20代の目付きな悪い男を羽交い締めにしてつまみ出していた。

 

「タコ頭もう来るな。入店禁止だ。」

 

「絢香ちゃんに用があるんだ!てめえはどけ!!タコ頭ってなんだ!?」

 

店から出されても興奮がおさまらないタコ頭。佑都を睨み付け、また店に入ろうとする。

 

すかさず首根っこをつかみ、道に放り投げる。学校の女子と話す時以上に、冷たい目と脅すような声でタコ頭へ告げる。


「動くな。次やったら腕へし折るぞ。」

 

年下の男に屈するのが悔しいのか、タコ頭は握りこぶしにして、爪が手のひらに食い込み、血が少しだけ滲んでいた。

 

一連のやりとりを見ていたありさと優香。


ふと、ありさは気づいてしまった。

 

(あれ?うちの高校…アルバイト禁止だよね。)

 

目の前にはまだ冷たい目でタコ頭を詰めている佑都がいた。


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