なんとかなるだろう
とりあえず3話ほど投稿します。
ありさが意気揚々と彼女の席に戻ると、佑都は幸人に質問をする。
「で?本当のところはなんで? 」
「まず、実行委員になると競技の参加が免除になる」
「マジで!?それは本当?」
「マジマジ。部活の先輩に聞いたんだよ。うちの学校って運動系の部活多いじゃん。だから、運動が苦手な人の救済措置として意味もあるんだってさ。」
「なるほど。体育祭は運動部にとっては活躍する場だが、苦手な人にとっては苦痛でしかないからね。」
「そうゆうこと。だから今年は休まなくていいぜ、佑都。」
「まぁ休んでもいいんだけど、3年間のうち1回ぐらい出てもいいかな」
「そうだろそうだろ!俺に感謝だな!」
「ギブアンドテイクでしょ!さっきのマグロ分ということで。」
「俺の機転は竜田揚げ1個かよ。」
「侮るな。あれば北海道産の高いやつで、今話題の築地で買ってきたんだから」
たわいのない雑談をしている二人をありさは観察していた。
(幸人くんはなんでいつも宮沢くんの傍にいるんだろう。成績優秀でイケメンだし、優しいし、新入生のなかで人気があるのに。どうして性格の悪い宮沢くんが相方なんだろう。)
ありさが考えていることは高校から二人を知る人が思うことである。
佑都に話かけるのは幸人だけ。
他の男子が話かけても盛り上がっているのを見たことがない。
話かけてきた女子には敬語と"話かけるな"オーラ全開で拒絶していた。
佑都は入学したて当時、女子から人気があった。見た目はカッコ良すぎず、ダサすぎず、立ち振舞いかたがスマートだったのだ。
ようするに"ちょうどいい物件"だったのだ。
あわよくばイケメンの幸人とも仲良くなれるかもと、期待を胸に話かけていた女子クラスメイトは期待を裏切られ続けていた。
一部女子からは熱烈な視線を向けられる。どっちが"受け"で、どっちが"攻め"だと二人をのやりとりを見てトリップする腐女子は多かった。
獲物を見つけたハイエナのごとく、目をギラギラさせて佑都に話をかけるが、「悪・即・斬」ではないが、バッサリ斬られて幸せな顔をして帰っていく強者もいた。
それを見たクラスメイトは"佑都に関わってはいけない"と、本能的に理解してしまうのだ。
その結果、佑都に話かけるのは幸人だけと、自然となっていった。
ありさは考えるのを止めた。
(まぁどうでもいいか。とりあえず、みんなに負担なく実行委員決まって良かったわ。宮沢くんだけでは不安だったけど、幸人くんも一緒なら大丈夫よ!)
ありさは自覚していなかった。
自分の視線が自然と佑都を捉えていることが多いことを。