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アンデッド・リプレイ  作者: tukimi
第一章 転生
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第一話 転生

まだまだ拙い文章ですが応援お願いします。

『転生』してしまいたい。

本気でそんなことを考えていたのは確か、中学と高校の境目ぐらいだった。

転生したい。 と、思うからには、

死んでしまいたい。 というほど、人生に不満があったわけではないけど。

一からやり直したい。 というぐらいには、人生に満足していなかった。

丁度、そういう時期というのもあった。

中学二年生ぐらいにかかる心の病だ。

そんな痛々しい病に煩わされていた僕は、常に社会に対して不平不満があったものだ。

勉強の必然性だとか、

スポーツの必要性だとか、

友情の価値だとか、

まるで全て知っているかのように、下らないと言って吐き捨て、

本当に下らない黒いノートをひたすら量産していた、

あの痛々しい日常。

正直な話、あまり思い出したくない日々だ。


どうして、そんな思い出したくもない。

出来ることなら、なかったことにしたいぐらいの過去を思い出しているのかというと。

そういう出来事が起こってしまったからである。


どうも、僕は『転生』してしまったらしいのだ。


心の病末期の僕なら、大喜びしたことだろう。

不気味な三段笑いあげながら「やはり、俺が選ばれた人間だったのか」 なんて恥ずかしいセリフを吐いていたことだろう。

けれども、僕はもう立派な大人だ。

まだ、成人もしていないし、大人の階段も登っていないけれど。

もう、そこそこの大人だ。

だからこそ、こんな事態は迷惑でしかない。

まぁ、しかしだ。

せっかく、転生という世にも奇妙な現象に巻き込まれたというのに、楽しまないというのも損だろう。

何事もポジティブに考えねばならない。 と僕は思う。

大人だけれども、いやむしろ大人だからこそ、大人の余裕という奴を見せなければならないと思う。


「ククク……フハハ、アッハッハッハ!! やはり僕が選ばれた人間だったのか!」


恥ずかしいセリフを吐いて、ようやく我に返った。

と、同時に、馬鹿なことをやっている場合でないことに気がついた。

いや、気がついてはいた。

けれども、現実を受け入れたくなかった。


なぜならーーここが僕以外誰もいない雪で覆い尽くされた銀世界だったからだ。



✳︎



雪山などで遭難した時に、一番危険な行動はむやみに動くことである。

何の根拠も目印もないまま、勘だけを頼りに移動を繰り返せば、体力だけが消耗し、そのまま助かることもなく、命が朽ち果ててしまうのだ。

ゆえに、遭難した場合はむやみやたらに移動せず、安全な場所で体力を維持に努めながら、救助を待つのが正解なのだ。

というのを、グーグル先生で見たような記憶がある。


まぁ、それも、助けが来る見込みがある場合での話。

果たしてここに助けなど来るだろうか、見ず知らずの人間を。

そして、助けが来るまでに僕の体力が持つだろうか。

答えは否だ。


転生。

憑依。

タイムリープ。


僕の身に何が起こった正確にはまだ理解していないが、

前世の記憶を引き継いで、生まれ変わりを果たしたらしい。

ただ、残念なことに引き継ぎ先は、まだ小学生に入ったか入っていないかぐらいの幼い子供だった。

しかも、場所は極寒の雪山である。

装備として、そこそこの厚着をしてはいるものの、温度を維持は期待できない。

その他には石やら木の枝ぐらいしかなく、役に立ちそうな物はなかった。


どうも、現状から察するに、転生というより憑依に近いらしい。

それとも、物心が付いたと同時に前世の記憶が蘇り、今世の記憶を失ったということも考えられるが、憑依と差して変わらないだろう。

そう、忘れたのだ。

今世の記憶を、

ここで過ごした、僕であり僕でない一人の人間の記憶を。

だから、ここがどこで、一体自分がこの世界でどのような立ち位置なのか、さっぱりわからないのだ。


と、そんな考察はここを出てからでもいいだろう。

いや、ここ出てからでは始まらない。

ここを出なければ、ここで終わってしまう。

まだ始まったばかりの物語が、

プロローグで終わってしまう。

それだけは阻止しなければならない。


まず、木陰に隠れる。

効果は薄い。

風や散らつく雪を多少防ぐ程度であまり意味はない。

けれど、やらないよりはマシだろう。

次に水分だ。

これは目の前にある。

それこそ、山のように。

そう、雪だ。

手で雪を溶かし、液状にして飲み込む。

すでに、霜焼けしてしまった手を雪に晒すのは苦行だったが、背に腹は変えられない。

水分を失ったらそれこそお終いだろう。

あとは、じっと待つしかない。

情けない話これ以上手の内ようがないのだ。


運良く助けが来るまでまつ。

助けではなくとも、人が来れば頼みこんでせめて帰り道だけでも教えて貰う。

言語が通じない場合は……。

その時はその時だ!


それすら叶いそうにないなら、

しょうがない、この風と雪が止み、日がもう少し出てからから行動するべきだろう。

たかが風とはいえ、確実に体温を奪う天敵である。

油断はできない。

とにかく、今は待つしかない。



✳︎



あれから、一体何時間、経っただろうか。

たったの、数分だったかもしれない。

けれど、何十時間にも感じられた。

手は赤く染め上がり、痛みを通り越して感覚を失った。

風が吹くたびに肌に激しい痛みが襲った。

寒さのあまり痙攣しているかのように体が震えだしたときはもう駄目かと思った。

そんな折に音が聞こえた、

僕はその音を決して逃さなかった。

ザクザクと、雪を踏みしめるあの音を。


「ん、ぎゃあ!?」と、我ながら気持ち悪い叫声を上げながら、驚きと喜びに悶えた。

助けではないかもしれない。

言語が通じない相手かもしれない。

そもそも意思疎通のできる相手ではないかもしれない。


それでも、ここで見つけて貰わなければ何の意味もない。


長時間、冷凍庫にも匹敵するであろう、温度の中にいたせいか、体が思うように動かない。

体の動きが鈍いというか、全身から力が抜けてしまったかのように感じる。

情けないことに、声を発することすらままならない。

このままでは、僕に築かず通り過ぎてしまうのではないか。


そんな不安は杞憂に終わった。


ザクザクと雪を踏む音がこちらに近づいてくるからだ。

僕がいることに気づいてくれたらしい。

運がいいと思うべきか。

出来すぎていると思うべきか。


本来なら警戒するべきだろう。

未開の地に未知の人物。

警戒するのは当然のことだろう。

一旦、身を潜め、人畜無害そうな人物だったら助けを懇願し、

まるで聖飢魔にでも出てきそうな筋肉隆々の男どもだったら、

逃げれるほど余裕はないから、会うことは避けて、ひっそりと跡を付けるべきだろう。

しかし、残念なことに、僕は逃げれる余裕、以前に避ける余裕も思考を巡らせることすらできなくなっていた。

出たところ勝負というわけである。


固唾を飲んで、鬼が出るか蛇が出るか待っていると、

なんとも拍子抜けするようなーーけれども同時に安堵するーー人物だった。


現れたのは少女だった。

まだ、年端もいかないであろう少女。

か弱そうで、華奢な体の少女。

一つに束ねた髪をなびかせながら、愛らしい瞳を輝かせた少女。


僕の救世主は、そんな幼気な女の子だった。










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