78.忘却の姫40
吉井
「昨日はおつかれ」
「おう」
吉井
「あの後いろいろ調べたが検討はつかなかった、あのふざけた野郎一体誰なんだ」
「こっちもネットでいろいろ調べたがそんなNPCもプレイヤーの噂も何も無かった」
吉井
「とりあえず、今日は村の跡地を探ってみよう」
「ああ」
あの後一旦落ち着こうと言う話になり、その日はログアウトしたがあの嫌な男の事が気になって寝つけなかった。あの薄笑いした表情とモノの言い方なんかムシャクシャする!
その日の夜 ステインさんは自分たちでいろいろ調べるとのことで別行動になり俺達だけで魔界の村跡に集合した、そこには簡易的なテント、なんとか形を保った家などに生き残った人たちが体を休めていた。
体自体は回復呪文で治っているが心までは癒せない状態で何とも言えない空気が村に漂っている、中でもポコさんは怒りと悲しみで引き籠ってしまったと聞いて居たが、
ヨッジー
「おう、来たか一応村を回って状況を確認したが怪我人とかはステインさん達が回復を終えてくれたらしい」
ゲンゾウ
「ふむ、しかし……」
アネゴ
「ええ、心の傷まではどうしようもないわ」
アクア
「……」
ウィズ
「ポコさんは大丈夫でしょうか?」
「どうだろ」
その時、後方から声が聞こえた。
ポコ
「私はココだ」
そこには落ち込んでる感じでは無く、どちらかと言えば怒りに身を包んだ狂戦士と行ったら良いのだろうか、目には今までにない殺気が漲っている。
言葉づかいも今までとは違う感じだ。
「ポコさん大丈夫ですか?」
ポコ
「ああ、私は復讐の為に立ち上がり私がここの長となることにした」
「そうなんですか」
ポコ
「貴方達には世話になった、礼もせねばならないがその前に少し立ち会ってほしい」
「構いませんが」
ポコ
「すまない」
なんでも村の奥の森に祠がありそこで村長になる儀式があるとのことだ、それに参列して欲しいといことらしい、道中ポコさんが村人から聞いたという話によると突如 村に見たことも無い魔物が集団で現れ一瞬で村を破壊し、そして村人たちも襲われ連れ去られたりしたと、そう話す目には怒りの炎が滾っていた。
ポコ
「アレだ」
そこには小さな石で作られた小さな三角形の塔の様なモノが左右に配置された洞窟があった。松明を片手にはいると中はそんなには深く続いてなく奥に一体の像があった。
それは顔は無く、体は細いがその手には巨大な剣と槍を持っている。
ポコ
「ここで祈りと捧げものを」
「捧げもの?」
ポコ
「何時もは果物などを捧げるが今日はコレを」
そういうと紫の渦巻く玉の様なモノを取り出した。
「それは?」
ポコ
「村で昨日亡くなった人達を封印したモノ」
「え?」
ポコ
「今、村にはこれしかない…それに神と一体となれるなら彼らも浮かばれる」
そういうと祭壇に置き跪いた。
やがて静かに呪文のようなものを唱え出した。
それは静かな子守唄様なモノであった。
そして、呪文が一通り終わったのか暫く沈黙が続き……
ポコ
「我望は!敵を裁く力なり!」
すると供えた球が光だしそこから怨霊の様な紫の影がポコさんを包み出す。
ポコ
「この様なことが、神よ感謝します」
やがて光は治まりそこから現れたのは若返ったポコさんと言えば良いのか本来の力を取り戻したのか髪の毛の艶が戻り肌も若く生気に満ち溢れている、ボロボロだった衣装は漆黒の民族衣装の様なモノを羽織っている。
これは進化なのかどうかは定かではないが明らかに変わっていた。
トゥシエ
「おめでとう、これであなたも一人前ね」
今まで盾の中にいたトゥシエが出てきてお祝いを言った。
ポコ
「まだよ、私があいつ等を倒すまでは」
トゥシエ
「そう……」
今まで以上に憎しみの炎が眼差しに宿っているような感じであった。
ポコ
「私はこれから魔界の首都へ行き応援を要請する、君たちはどうする」
「どうしたのか……」
すると
アクア
「ウォータリの城に行ってみようと思います」
「え?!」
アクアさん何を急に!
ポコ
「そうか……危険な旅になると思うが私もやることがある、せめてコレを」
すると不思議な黒いお守りの様なモノを渡してきた。
「これは?」
ポコ
「先代がくれたお守りだ、せめてもの礼だ」
「いや、さすがにそれは」
ポコ
「いや、受け取ってくれ」
断ろうとしたが受け取ってもらわないと困ると言われたので、
受け取ることにした。
闇のタリスマン
効果:闇属性の者の力を強め、力を授ける
ポコ
「それでは、時間が惜しいのでそろそろ出立する みんな元気でトゥシエ死ぬなよ」
トゥシエ
「あんたこそ」
アクア
「御武運を」
そういうと黒い風の様なモノを纏って消えてしまった。
ゲンゾウ
「ふむ、次の目的はウォータリア城か」
ウィズ
「行けるんですかね」
ヨッジー
「ふむ~近々アップデートだからそれでいけるかもしれんな」
「それよりコレどうしよう」
アネゴ
「大事なモノだし、いつか返すのも有りだろうし預かって置いたら…!」
アネゴが触った瞬間ソレは黒い光を放ちアネゴを包み出した……
繭上になりそこから薄らと見えた軍服を着た女性の姿が。




