第九十三章 マリ、日本に永住する
空軍を退役して日本に永住する事なったマリに次郎は、「マリちゃん、どう?少しは落ち着いた?そろそろ仕事してみるか?念の為に、マリちゃんの上官にアクロバット飛行チームの指導教官だったと口添えして頂ければ、航空自衛隊のパイロットだったら間違いなく合格するよ。」と助言した。
マリは、「父の看病をしながらパイロットの仕事をするのは無理です。どこかの企業の事務員にでもなろうかと考えています。」と返答した。
次郎は、「兄から聞いたけれども、マリちゃんは世界一の操縦技術を持っているのだろう?勿体ないね。OLでも日本とアメリカとでは違うだろう。急に日本の企業で働くのは無理があると思うので、どうだろうか、私が社長を勤めるソフト会社で事務員のアルバイトをしないか?そこで日本の企業に慣れながら、ゆっくりと就職先を捜すというのは。マリちゃんは飛行機の事に詳しいから、航空機を販売しているような会社などはどうですか?」と提案した。
マリはソフト会社と言われても何の事だか解らずに、「ソフト会社?ソフトクリームでもを作っているの?」と何の企業だか解りませんでした。
次郎は笑いながら、「違うよマリちゃん、遅れているね。今はコンピューターの時代だよ。コンピューターのソフトウエアと言って、システム開発を・・・と説明しても解らないかな。要するに、所謂プログラムを作成している会社です。ほら、ジェット戦闘機や航空機も最近ではコンピューター制御しているでしょう?勿論コンピューターの事は解らなくても良いよ。事務員として伝票処理や雑用などの仕事してくれれば良いから。」と説明した。
マリは、「ソフトっていうから解らなかったのよ。それは日本でしか通じない和製英語と言うのよ。例えば、べースアップなんてアメリカで言っても通じないわよ。要するに、コンピューターのソフトウエアのことね。何とかグラマーって聞いた事がある。」と次郎の会社が何をしている企業なのか納得した。
次郎は、「プログラマーだよ。グラマーなんていうと誤解の元だよ。マリちゃんは胸が小さくてグラマーに憧れるのは解るけれどもね。」と笑っていた。
そこへ次郎の女房がお茶を持って来て、「あなた、気にしている事を言うからうつむいちゃって。御免なさいね、この人鈍感で。それと、マリさんが空軍を退役した理由はもう一つあるでしょう?そちらが本当の理由なのですか?日本に住みたいだなんて只の口実ではないの?」と聞いた。
次郎は驚いて、「おい、お前は突然何を言い出すのだ?マリちゃんほど腕の良いパイロットが空軍を退役する理由が他にあるとでも言うのか?」と余計なせん索をして、と不機嫌そうでした。
マリは手で口を覆い少し気分が悪そうにしたので次郎は、「どうした?マリちゃん、どこか具合でも悪いのか?」と心配していた。
次郎は女房に、「おい、今から病院に連れて行くぞ。」と外出の準備を始めた。
次郎の女房は、「大丈夫ですよ。病院はゆっくりと捜して、後日行けば良いですから、今日は風呂に入って、もう寝なさい。」と助言した。
次郎は、「お前は何を言っているのだ!もし悪い病気で、夜中に具合が悪くなればどうするのだ。」とマリの事を真剣に考えてないようでしたので怒った。
次郎の女房は落ち着いて、「こればっかりは慌てて病院に行っても仕方ないわよ。少しむかつくのは我慢するしかないのよ。」とマリを病院に連れて行く気配がありませんでした。
次郎は慌てて、「お前は何をそんなに落ち着いているのだ?何でそんなに我慢させる!少しは、マリちゃんの事も考えろ!病院に連れて行くぞ!」とマリを連れて行こうとしてた。
次郎の女房は、「どこへ連れて行くの?マリさん病気じゃないわよね?」と確認した。
次郎は、「病気じゃない?じゃマリは何故こんなに・・・」と不思議そうに確認しようとしていた。
女房は、「あなた、病気じゃないと言われてもまだ解らないの?本当に鈍感ね。マリさん、これって悪阻ですよね?」と確認した。
次郎はハトが豆鉄砲をくらったような顔をして、「え!?」と動きが止った。
マリは、「御免なさい。生理が遅れているので多分そうだと思います。二人で言い争いをされていたので間に入れなくて言いそびれました。」と先日部下と思わずやっちゃったけれども、あの日は危険日だったのよね。と今後どうするか考えていた。
それを聞いた次郎は驚いて、「マリ!という事は覚えがあるのか!相手は誰だ!」と怒りながら問い詰めた。
女房が間に入り、「悪阻は、お腹の赤ちゃんがお母さんに、“無理しないで!”と信号を送り、お母さんの動きを止めようとしているのよ。今日は風呂に入って、もう寝なさい。」と助言した。
女房は更に、「明日病院に行きましょう。今晩の間に、未婚の母になるのか中絶するのか考えておいて下さい。お腹の大きさからして、まだ時間はあると思いますので。考えがまとまらなかったら、産婦人科の先生と相談して、次回返答しても大丈夫だと思いますよ。」と助言した。
次郎は、「何?マリ、まさか産むつもりじゃないだろうな?それに時間があるとかないとかどういう事だ?」と意味不明でした。
女房が、「赤ちゃんが、ある程度大きくなると中絶できなくなるのよ。出産するかどうかはマリさんが決める事よ。アメリカ育ちのマリさんは私達とは考え方が違うから、マリさんに任せましょう。でも相談には乗るわよ。」と説明した。
次郎は、「子供を育てるのは大変だぞ。昼も夜中も三時間おきに母乳が必要だから寝られないし、赤ちゃんは喋れないから、お腹が減ったとかオムツを変えて欲しいという要求は泣くだけだぞ。赤ちゃんが泣き出せば何をして欲しいのか考える必要があるが、寝不足だから頭も回らずにいると、いつまでも泣き止まないぞ。その他、風呂に入れるのも一苦労だぞ。なにしろ赤ちゃんは何もできないからな。マリちゃんにできるのか?」と責め立てた。
女房は、「母親は誰でもしている事よ。私が母乳をやっている時に隣でスヤスヤ寝ていた人がよく言うわね。マリさん、子育ての事で心配な事があれば何でも相談してね。この人も子育ては大変だと解っているようなので手伝ってくれると思いますしね。そうよね。あなた。」と次郎を睨んだ。
次郎は、「えっ!?・・・、まあ、その時に時間があればな・・・」と薮蛇だったと後悔していた。
しかし次郎は、相手の男性の事も気になりましたが、まだマリは空軍には何も伝えてないようでしたので、“空軍から出撃依頼があればどうするつもりだ。”とマリが風呂に入っている間に、マリの携帯でマリの上官の連絡先を調べて、翌日マリが女房と産婦人科の病院に行っている間に、英語が堪能な次郎は、マリの上官に電話して事情を説明し、今は操縦桿を握るのは無理な事を伝えた。
マリの上官は、「マリが妊娠しているのは間違いないのですか?」と航空機の事しか頭にないマリが、いつの間に?と不思議そうでした。
次郎は、「私は女性の体の事は良く解りませんが、女房が見抜き、本人も覚えがあり生理も遅れているらしく、多分そうだと思うと言っていたので恐らく間違いないと思います。今、産婦人科の病院に行っていますので、それではっきりすると思います。もし妊娠していれば出産するつもりらしいです。マリに内緒で電話しました。私が伝えた事は内緒にして下さい。でないと私がマリの携帯を内緒で確認した事がばれますので。」とマリの上官が信じられないようでしたので、マリに確認されないように補足説明した。
マリの上官は、「連絡して頂き感謝します。有難う御座いました。そういう事情でしたら、マリの妊娠の件は、私の胸に締まっておきます。」とお礼した。
産婦人科の診察結果を聞いた次郎は、電話を聞かれないように、翌日、会社の社長室からマリの上官に電話して、「マリは矢張り妊娠していました。出産すると言っています。日本に来てから誰かとそうなったみたいですね。相手の男性については喋ってくれないので不明です。」と伝えた。
上官は、「解りました。マリに対する出撃依頼などは、一年間、私の力で止めます。一年間が、私の力の限界です。」とマリを守ろうとしていた。
次郎は、「有難う御座います。それを聞いて安心しました。」とお礼して電話を切った。
マリの上官は、“先日といい、今回といい、何も真夜中に電話してくる事はないだろう。緊急事態かと慌てるよ。時差の感覚がない人と電話するのは大変だな。時差の感覚があれば、調べるのは電話番号ではなく携帯メールアドレスなのにな。”と次郎の非常識さに呆れていた。
その後、マリの上官が上手く裏から手を回して空軍から、「航空機を準備するのに約一年掛かるので、その後で色々と協力して頂きたい。」とマリに連絡があった。
マリは都合よく話が進んだので、ホッとして、妊娠の事は上官に内緒にしたが、まさか次郎と上官が裏で連絡を取り合ったからだとは全く気付いていませんでした。
マリは、その事を次郎達に告げて、当分、空軍から依頼が来ないと説明すると次郎は、「マリちゃん、良かったね。きっとお母さんが天国から助けてくれたんだよ。」と惚けていた。
マリはそのまま約一年間、次郎の所で入院中の父親の看病と出産準備をする事になった。
次回投稿予定日は、4月13日です。




