第九十章 やくざの娘と刑事
このように博が何かと姉に頼っている間に、一番下の次男、修が警察学校を卒業して、見習刑事として先輩刑事の指導を受けていた。
しかし、姉の佳子共々、家族が関与する事件には感情的になり、誤った捜査をする可能性がある為に、丸東組の捜査からは外されていた。
佳子は、「空いている時間やプライベートの時間を見付け、丸東組を調べて、父の行方に繋がるかもしれないと判断して、数年前、丸東組の本田三郎、通称サブという組員をワンクリック詐欺の容疑で別件逮捕したのに、上司から、“梅沢が優秀な刑事だと認めるが、丸東組には関わるな!”と上司から指示されて、その捜査から外され、その後の捜査状況を聞いても、“梅沢には関係ない。”と教えて頂けなかったわ。」と不満そうでした。
修は、「それじゃ、お父さんの事は諦めるの?」と佳子がどうするのか確認した。
佳子は、「何を言っているのよ。私一人ででも、丸東組を調べて、父ちゃんを捜すわよ。警察では殉職扱いで死んだ事になっているけれども、死体は発見されてないのよ。生きている可能性もあるのよ。絶対に見付けるわよ。」と父の件から離れようとしませんでした。
博が、「しかし、今迄見付からないという事は、どこかに拉致されていても既に飢え死にしているだろう。」と冷えた様子でした。
佳子は、「博、拉致されている証拠はどこにもないわよ。記憶喪失になり、どこかで生きている可能性だってあるでしょう。恐らく最後に父を見たのは丸東組の組員だと思うから、父を捜す手掛かりを知っている可能性があるのよ。」と興奮していた。
修は、「一人じゃないよ。僕も手伝うよ。」と佳子に協力的でした。
佳子は、「見習刑事に何ができるのよ。」と修には、まだ無理だと判断して止めた。
修は、「僕が非番の日に何でもするよ。」と積極的に動こうとしていた。
佳子は、「私がいない間に、勝手な事をしないで。相手は刑事でも平気で殺す丸東組よ。危険だわ。」と修を心配して再度止めた。
修が、「姉ちゃん、今、父ちゃんは生きているっていったじゃないか。」と矛盾点を突いた。
佳子は、「何もそんな事は言っていないわよ。その可能性があると言っただけで、調べてみないと解らないわよ。兎に角、修一人で動くのは危険だから辞めてよ。先輩刑事に単独行動するなと教わらなかった?」と丸東組の怖さを知らない修を再三止めた。
修は、「姉ちゃんは、丸東組相手に単独行動しているじゃないか!」と自分を半人前にしか見てくれない姉に不満でした。
佳子は、「見習刑事が何を言っているのよ。ベテラン刑事でも、相手によっては単独行動は危険よ。」と修の事を心配していた。
博が、「僕は色んな企業に派遣されているので、そこで聞くよ。他の企業に派遣されている社員にも聞いて情報を集めるよ。」と二人が険悪な雰囲気になってきた為に間に入った。
佳子は、「素人が余計な事しないで!そんな昔の事を覚えている人は少ないだろうし、もし博が丸東組を調べている事が、丸東組の組員に知れたらどうなると思うのよ。殺されるわよ。二人共、お父さんの事は私に任せて!いいわね。」と二人を止めた。
博は、「御免、姉ちゃん、実はもう既に調べている。何か丸東組には、正体不明の人身売買の大物黒幕がいると聞いたよ。」と入手した情報を佳子に伝えた。
佳子は、「博、そんな事は私でも知っているから、今後は余計な事をしないで。危険よ。」と博を心配して止めた。
修が、「その噂なら、警察で聞いた事がある。何でも丸東組では、“姉さん“と呼ばれていて、女だてらに丸東組を取仕切っていて、次期女組長の噂がある人物だろう。」と佳子に確認した。
佳子は、「ええ、そうよ。その人物なら、父の事を何か知っている可能性があり、調べたけれども本名も何も解らないのよ。数年前、丸東組のサブを本署に連行する時に、少しだけ話を聞いたけれども、サブ達組員は、忠誠心があるのか怖がっているのか何も話そうとしなかったわ。結局解らないのよ。でも修、警察内部で話を聞くのは良いけれども、外部では気を付けてね。」と心配しながら忠告した。
修は、「解ったよ。それじゃ姉ちゃんのいない時は、丸東組とは関係のない、身元不明者や、記憶喪失患者の事を、病院関係から調べるよ。」と積極的に動こうとしていた。
佳子は、「修のプライベートな時間を使うのだから、それは止めないけれども、既に私が調べて何も解らなかったわ。」と返答した。
一方、陽子は医学部在学中に、人命の尊さについて改めて考えさせられて、何よりも人命を大切にするようになっていた。
海外では、飢え死にする人々がいると聞き、国際協力隊に参加したり、寄付などを行ったりしていたが、人身売買を行っている丸東組の組員に確認すると、「本当に貧しい地域は治安が悪く、武装していない国際協力隊も来ませんし、寄付金も、役人が横取りして届きません。そこでは、そのような人を食い物にする拷問組織があり、殺人ショーや人体切断ショー、解剖ショーなどが堂々と昼間に、観客の前で行われています。殺人ショーでなくても、そんな所に医者はいないので、見世物にされた人々は、苦しみながら死んでいきます。全世界から来た大富豪が競り落として好きなようにしています。」と説明した。
このショーは、最初、テレジア星人のモミジが呪縛の時に始めたショーでした。
陽子は、「警察はいないの?」と昼間にショーが行われていると聞いて疑問に感じていた。
組員は、「治安の悪い地域では、裁判所が機能していなくて、警察が凶悪犯を逮捕しても直ぐに釈放されます。警察は犯罪者を下手に逮捕すれば、逆に仕返しされるので見て見ぬ振りをしています。」と説明した。
それを聞いた陽子は、いても立ってもいられず、国際協力隊に参加する為にパスポートを持っている陽子は、危険だと止める組員の制止を振り切りそこへ行った。
茂は、人身売買の為にパスポートを持っている組員十数人に指示して、直ぐにボディーガードとして後を追わせて現地で合流した。
陽子は現地で、あまりに酷い現状に驚いて、陽子一人ではどうする事もできず途方に暮れていると、ショーに出演させる若い女性を素っ裸にさせて競りに掛けていた。
組員の説明で、「青い服を着ている男が競り落とせば、下腹部や胸、特に乳房、性器、排泄器官を解剖され、黄色い服を着ている男が競り落とせば、歯は電気ドリルなどの工具を使用して全て抜歯され、目玉をくりぬかれ両手両足の関節を外された上、電気のこぎりで切断され、赤い服を着ている男が競り落とせば、工業用の強力な掃除機を、肛門や膣に挿入されて、腸や子宮を体外に引っ張り出され、・・・」と説明していた。
陽子は聞いていられなくなり、「もう良い!」と説明を辞めさせて、陽子も競りに参加して、組員の協力で、陽子が競り落とし、組員が用意した偽造パスポートで日本へ連れて来た。
帰国後、風俗が得意な丸東組の組員に任せた。
この事が切っ掛けになり、陽子は、あれだけ嫌っていた丸東組で人身売買の黒幕になって行った。
特に医師になってからは、このような場所への日帰りは無理なので、盆休みや正月休みなど、長期休暇が取れる時のみ現地へ赴き、それ以外は組員に任せたので、正体不明の大物黒幕となっていった。
茂はその様子を見て、“陽子も、やっと俺の商売を理解して、跡を継ぐ気になったのかな?”と喜んでいた。
一人の組員が、「姉さん、気を付けて下さい。数年前、サブを逮捕した梅沢という女刑事が姉さんの事を嗅ぎ回っています。」と入手した情報を陽子に伝えた。
陽子は、「解ったわ。組員と外出する時は変装するなど精々気を付けるわ。有難う。」と組員に感謝した。
陽子は、組員の話を聞いてから、丸東組の幹部として外出する時には、厚化粧にサングラスをして、いつもは束ねている髪を胸まで下ろしていた。
冬は、その上からコートを着て、長い髪はコートの中に入れて、コートの襟は立てていた。
陽子は医学部卒業後、父との約束通り、母と同じ外科医として、大学の研究室に残り、研究を続けていた。
女性なので指先が器用で、手術の腕は超一流でした。しかし、手術の腕が超一流なのはそれだけではなく、菊枝と同じようにテレジア星人の血筋によるものでした。
休みの日や夜間など空いている時間は、母が開業している芹沢外科医院を手伝っていた。(実は医学生の頃から手伝っていた為に、手術経験が他の医学生より多かったのも、超一流外科医になれた要因の一つでした。)
菊枝は、丸東組から連絡があった時は、その状態を確認して、陽子に対応可能な場合は修行だと言って、陽子に往診させると組員は、「俺達は練習台か!」と怒っていた。
ある日、佳子がやくざ姿の陽子を見付けて話を聞こうとしたが断られた。
佳子が陽子を連行しようとしたが、テレジア星人の血を引く陽子には全く歯が立ちませんでした。
佳子は、「あなた、サイボーグなの?」と陽子のあまりの強さに驚いていた。
陽子は、「日本の警察は、毎日SF映画の鑑賞会でもやっているの?人間をサイボーグにするのは、素人には無理なので、あなたも刑事だったら、そんな専門家がいるかどうか調べればどうなの?」と単独で私に挑戦してきた刑事は彼女が始めてだわと感心していた。
その夜、怪我をしている佳子を見て、修がどうしたのか確認した。
佳子は、「丸東組で姉さんと呼ばれている大物を見掛けたので、話を聞こうとしたら、人間とは思えない凄い馬鹿力でやられてこのザマよ。でも声も体も確かに女性だったわ。」と怪我した理由を説明した。
次回投稿予定日は、3月30日です。




