第八十六章 陽子、医大に入学する
遅くなり申し訳ござませんでした。
受験も終わり、陽子は母と同じ大日本医療大学医学部に合格した。陽子の同級生達は、進学したり、浪人したり、家業を手伝ったり、就職したりと進路が分かれた。
同級生達は当分会えなくなるので、卒業式が終わってから泊まりの卒業旅行を計画した。都合がつかない生徒もいて残念がっていた。参加人数は、担任の先生も含めて約二十名になった。
観光旅行ではなくハイキングの延長という感覚で、信州の田舎へ行く事にして、テントでキャンプする案もあったが、天気予報では当日の天候は良くなかった為に旅館を予約した。観光地ではないので部屋は空いていた。
現地へは寄り道してから行く人や車やバイクで行く人など夫々でしたので、現地集合にして、旅館で思い出話をしたりゲームをしたり散歩したりと楽しんでいた。
あるグループが散歩しながらふざけていると、近くにいた地元やくざにぶつかった。
やくざは、「このガキ!どこに目をつけているのだ?あっ痛たた・・・これは治療費を貰わないといけないな!」などと因縁をつけられた。
一人が逃げろ!と叫んで、皆バラバラになり逃げた。高校生は一番体力があるころで持久力もあり、何とか逃げ切ったと思ったが、足の遅い人が旅館まで後をつけられていて、やくざは他の組員と五人程で旅館まで押掛けて来た。
皆が怖がっている中、先生が、「警察に電話するぞ!」と生徒達を守ろうとしていた。
地元やくざは、「上等じゃねえか!警察を呼ぶなら呼べ!怪我をさせられたのはこっちだぞ!それに警察は民事不介入って知っているか?電話したら後でどうなるか解っているよな!」と脅しながら旅館の階段を上り始めた。
騒ぎを聞いて、二階から降りようとしていた陽子と途中で鉢合わせした。
二階で話を聞いていて事情を把握していた陽子は、「手前等、とっととうせろ!」と蹴飛ばすと、丸で将棋倒しのように、やくざは階段を転げ落ちた。
やくざは、「この野郎、何しやがる!」と起き上がり陽子に向かってきた。
陽子は、「あらあら大変、ちょっと高校生とぶつかったくらいで治療費が必要な怪我をする人が階段から落ちると重症になるわね。でも元気そうじゃない。治療費が必要な人も案外元気じゃない。もう治療費は要らないわよね。」と笑っていた。
やくざは頭に来て、「おい!こら!なめとんのか!」と陽子に襲い掛かったが歯が立ちませんでした。
地元やくざは、「手前等、きたねえぞ!用心棒を雇いやがって!」と陽子に敵わないと判断して、先生に向かってきた。
先生は、「あなた方のようなやくざとは違うので、用心棒は雇っていません。」とやくざが興奮しているので後ずさりしていた。
そこへやくざの兄貴分が様子を見に来て、「先生、笑わせてはいけないよ。やくざとは違う?用心棒は雇ってない?じゃ何故、丸東組次期組長がそこにいるのだ?」と聞いた。
先生や陽子の同級生達は、丸東組の事を怖がっていたので、「どこにいるの?」と、キョロキョロしながら、格闘技の達人である陽子に守って貰おうと、近寄ってきた。
そのあと、少し間をおいて、「どうなんや?丸東組五代目組長、東城陽子さんよ!」と陽子を指差した。
先生や陽子の同級生達は、「えっ!?嘘!陽子が組長?」と自分の耳を疑っていた。
陽子が、「誰がどこにいようが関係ないでしょう!皆の迷惑になるので、ここから立ち去りなさい。」とやくざに迫った。
地元やくざが、「五月蝿い、黙れ!若造のくせに生意気な!ぶった切ってやる!」と素手では敵わなかったので、日本刀を抜いて陽子に切り掛かると陽子も、いつも持っている日本刀を抜いて応戦して、地元やくざの日本刀は簡単に折れた。
地元やくざが、「えっ!?」と思った瞬間に兄貴分が、「馬鹿野郎!俺の言った事を聞いてなかったのか!手前等が束になっても敵う相手じゃない。」と止めたが、路地などに隠れていた身体中に刺青をした丸東組の組員が十数人出て来て、「うちの姉さんに手出しするとは良い度胸しているじゃないか!」と怒鳴った。
地元やくざの兄貴分は、「今日の所は手前の顔を立ててやる。」と丸東組と争う事を避けて、子分達と去った。
丸東組の組員が皆の方へ来たが、まだ陽子が次期組長だとは信じられなかった為に、皆は怖くて足がすくんで動けなかった。
そして、皆の前まで来て、陽子にお辞儀して、「姉さん、お怪我は御座いませんか?」と心配していた。
陽子は、「私は、あんな腰抜けに怪我をさせられるほどドジじゃないわよ。それより皆が怖がっているから消えろ!」と指示した。
組員は、「解りました、姉さん、失礼します。」とその場から去った。
丸東組組員と陽子との会話を聞いて、同級生達は、陽子が次期組長って本当だと思っていると陽子は皆に、「御免ね。怖がらせちゃって。もう大丈夫ですよ。」と安心させようと笑顔で落ち着かせようとしていた。
先生は震えながらも勇気を振り絞り、「あの~と、と、東城さん、ま、ま、丸東組五代目く、く、組長というのは、ほ、本当なのですか?」と震えながら確認した。
陽子は笑いながら、「ちょっと先生、怖がらなくても大丈夫ですよ。“当たらずとも遠からず。”ですね。私の父が現在の組長です。確かに以前から、丸東組を継げと言われていました。話合いの結果、私が母と同じ大日本医療大学医学部に合格した場合には、学生の間は継がなくても良いという事になったので、先生から滑り止めを受けるように勧められても受けずに、大日本医療大学医学部一本にしました。その後の事は、また話合いで決める事になります。兎に角、しばらくの間は、丸東組を継がなくても良くなりました。」と説明した。
先生はそれを聞いて、「そういう理由で一本にしたのでしたら、そう説明してくれれば先生も心配しなくても済んだものを。」と少し落ち着いた様子でした。
陽子は、「じゃ、何と説明すれば良かったのですか?親と話合い、大日本医療大学医学部に合格できなかった場合には家業を継ぐと説明しても、先生の事だから、“家業は何ですか?”と聞くでしょう。合格できなかったら、丸東組の組長になると説明すれば良かったのですか?」と聞いた。
先生は返す言葉がなく、「それは・・・」と困っていた。
先生は更に、「確か東城さんには弟さんがいましたけれども、女性よりも男性のほうをとは考えなかったのですか?何故長男を後継ぎにしないのですか?」と確認した。
陽子は、「あれは駄目ね。確かに長男ですけれども、喧嘩もできない腰抜けで、度胸もなく父はもう諦めています。例えば今の場合、刺青のやくざが五人来たってだけで、腰が抜けて失禁するんじゃないかしら。それに長男が後を継ぐというのは、徳川家康が天下を取り、戦国時代が終わり、戦国の世を見てきた徳川家康が、今後争い事をできる限り少なくしようとして、後目の事で、お家騒動が起こらないように決めた事ですので、今は長男でなくても関係ないでしょう?」と説明した。
同級生達は、「えっ?それ本当?徳川家康がそういう理由で決めたのか。でも未だに、その風習が残っているという事は、それだけ徳川家康の影響力は強かったのですね。」と感心していた。
陽子は、「そうね、その影響力の強さで、長男が病気や知恵遅れ等でも生きている限り殿様にしなければならないという問題が発生した事もあったようですね。弟がどんなに優秀でも、跡継ぎにはなれなかったようです。」と補足説明した。
同級生達は、「でも、水戸黄門は全国を歩いてお家騒動を治めたのではないの?でも水戸黄門ってそんなに偉かったのかな?」と疑問に感じていた。
陽子は、「あれはドラマでしょう。事実ではないわよ。SF映画で宇宙人が出てくるでしょう?本当に宇宙人がいると思うの?」と説明して、まさか自分が宇宙人の血を引いているとは夢にも思っていませんでした。
更に陽子は、「今言ったように、長男が生きている限り殿様にしなければならないので、本当にあったかどうかは知りませんが、お家騒動は暗殺に変わったかもしれませんね。でも水戸黄門の世直し旅というのは、所用があり、一度だけ水戸から江戸まで歩いた事があるらしいです。それをドラマで全国を歩いた事にしているようですね。水戸黄門は徳川光圀と言って、徳川家康の孫になるので、将軍も頭が上がらないほど偉かったのよ。」と説明した。
同級生達は、「それでは、遠山の金さんみたいに、刺青をしたお奉行様もいなかったの?」とドラマは事実ではないと聞いたので確認した。
陽子は、「いたらしいわよ。でも奉行というのは、現在の警察署長と裁判所長の仕事をしていたので忙しく、ドラマのように奉行所を抜け出したり、市民と楽しく会話したり、悪党のあじとに乗り込む事はしなかったようです。奉行の仕事が嫌で奉行になりたくなくて、やくざになり刺青をしたらしいですが、徳川家康の影響力の強さで、仕方なく奉行になったらしいです。やくざの世界をよく知っているので、捜査などに役立ったという事だけらしいです。だから、白州で刺青を見せる事はなかったと思います。ドラマは悪までもドラマで、事実とは違います。事実と同じですと、歴史の授業のようで、視聴率は期待できない為に、ドラマとして面白くなり、視聴率が期待できるように話を組み立てているのです。」と説明した。
次回投稿予定日は3月16日です。




