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第八十四章 陽子の家に泥棒入る

ある日、陽子の家に泥棒が入った。

その泥棒は、陽子の家が二重の鉄格子の門だった為に、大金持ちの家だと勘違いして、まさかライオンやトラの檻になっているとは夢にも思わず、門に赤で大きく目立つように貼っている、“猛獣注意”の貼紙は目立ち過ぎて態とらしく、大型犬かそれとも単なる脅しだと感じて、門を乗り越えて鍵のかかってない玄関から侵入した。

家の中を物色していると陽子の寝室を見付けて、目が暗闇に慣れている泥棒は、“可愛い女性が、トラのぬいぐるみと寝ている。”と電灯のスイッチを捜して点灯させて包丁で陽子を脅した。

「起きろ!金を出せ!」と怒鳴った瞬間、ぬいぐるみだとばかり思っていたトラが突然動き出した。

予想外の出来事に、泥棒は驚いて包丁を落として腰を抜かした所を、トラは吼えながら泥棒の腕に噛みつき血が噴出した。

泥棒は、「ギャー、助けて!」と叫んだ為に陽子が目を覚まして慌ててトラと泥棒を、「次郎!離して!」と引き離した。

興奮しているトラを、「次郎!落着いて!」と押さえながら、タオルで縛り止血するように泥棒に指示して、救急車を呼び、トラがいる陽子の部屋の鉄格子の扉を閉めて、泥棒を門の所まで連れて行った。

最寄りの消防署の救急車は出動中の為、少し離れた消防署から出動するので救急車が到着するまで時間が掛ると聞いた陽子は、救急車が到着するまでの間に母に電話して、応急手当ての方法を聞いた。

菊枝は陽子からの携帯メールで写真を見ながら状態を確認して、田舎の外科医に対応は無理だと判断した。

陽子は、「無理って救急車で病院に搬送したらどうなるの?」と死にそうな状態ではないので不思議そうでした。

菊枝は、「神経や血管だけではなく、骨も複雑骨折しているわ。恐らく切断されるでしょうね。」と田舎の外科医には、その程度しかできないだろうと判断した。

陽子は、「新聞やテレビで報道される可能性があり、重症だと今後猛獣を放し飼いにできなくなる可能性があるわ。母ちゃん何とかしてよ。」と母に頼んだ。

菊枝は取り敢えず応急手当ての方法を陽子に指示し、菊枝もそちらに向かうので、病院に到着すれば病院名と所在地を連絡するように陽子に指示し、夜中で電車もなく、菊枝の車は車検の為に茂に頼み、組事務所の車を組員に運転させて陽子の所へ向かった。

菊枝の指示で応急手当している陽子に泥棒は、「うう、な、何故、部屋までき、救急隊員が来てくれないのだ?も、門の所まで来るのに、じ、地獄の苦しみだったぞ。」と痛みに耐え苦しんでいた。

陽子は、「ライオンやトラを放し飼いにしている所へは怖くて来てくれないでしょう。トラは部屋にいましたが、ライオンを捜すより、あなたを門の所まで連れて来たほうが早いと思ったのでね。ほら、血の臭いを嗅ぎつけて、ライオンの太郎が来たわよ。」とその理由を説明した。

泥棒は、「ハア、ハア、じ、時間はかかって良いから、う、動きたくなかった。す、少しでも動けば、げ、激痛がする。い、一歩歩く毎に、そ、その振動で、じ、地獄の苦しみだったぞ。」と動きたくなかった理由を苦しみながら説明していた。

陽子は、「それは解るけれども、まだ出血が止まらないのよ。少しでも早く病院に行かないと、出血多量で今から死神とデートする事になるわよ。ここに、“猛獣注意”と貼っているでしょう!何故、猛獣の中に飛び込んで来たのよ!そもそもそれが原因でしょう!死にたくなかったら痛みは我慢しなさい!でも途中で太郎と鉢合わせしなくて良かったわね。もし鉢合わせしていれば、今頃あなたの所へ死神がデートの御誘いに来ていて、私は救急車ではなく霊柩車を呼ばなければならなくなっていたわよ。」と説明していた。

陽子は応急手当が終わると警察に電話して、「泥棒がペットに噛まれました。救急車は呼びました。」と通報した。

警察は、「現場検証をしますので、全てそのままで触らないようにして下さい。」と指示した。

陽子は、その指示通りライオンは放し飼いの状態にしておいた。

警察が到着して現場検証を始めると、警察はペットと聞いていたので大型犬だと思っていたが、陽子の証言から泥棒が放し飼いのトラに襲われた事が判明した。

刑事が口に血が付着しているトラを捕まえている陽子に、「何故今も檻に入れずに放し飼いの状態にしているのですか?」と疑問に感じて確認した。

陽子は、「警察から、現場は何も触らずに、そのままにしておくようにと指示されましたので、ライオンもトラも放し飼い状態にしています。」と説明した。

刑事は一瞬自分の耳を疑い、「えっ!?今、何と言いましたか?ライオンもいるのですか?放し飼いって今、どこにいますか?」とキョロキョロと周りを見渡していた。

陽子は、「どこにいるのかと聞かれても放し飼いだから、どこにいるのかわからないわよ。どこかそのへんにいるでしょう。」と刑事が焦っている中、冷静に返答していた。

鑑識の一人が、「うわっ!ライオンだ!」と叫んだので大騒ぎになった。

陽子は、「そんな大声を出すとライオンが興奮するでしょう!噛みつかれても知らないわよ!泥棒も、“金を出せ!”と大声を出したので、トラが興奮して噛みついたのだから!」と捕まえていたトラを放して、急いでライオンを取り押さえに行った。

誰も捕まえてないトラが、部屋の中を歩き出した。

刑事達は焦って、「俺は美味しくないぞ、不味いぞ。」とゆっくりとトラを興奮させないように、静かにトラから逃げるように離れた。

刑事達はライオンを捕まえた陽子に、ライオンとトラを、大至急檻に入れるように慌てて指示した。

陽子が二匹とも檻に入れた事を確認すると刑事も一安心した。

その後刑事達は、もう他に猛獣がいない事を陽子に確認すると、「生きた心地しなかったよ。」と一安心して事情聴取を再開した。

事情聴取の結果、門の二重の鉄格子は猛獣の檻になっていて、陽子は檻の中でライオンやトラと暮らしている。門の外には目立つように、“猛獣注意”の貼紙があり、今回泥棒は猛獣注意の貼紙を無視して、猛獣の檻の中に入った事が事故原因だということで、陽子は、“過失なし”になった。

刑事が、「何故猛獣を放し飼いにしているのですか?」と質問した。

陽子は、「女子高生の一人暮しは無用心なので、用心棒として放し飼いにしています。泥棒には申し訳ないですが、今日は用心棒として役に立ちました。普段は、私の柔道や空手の練習相手になっています。」と返答した。

刑事は、「あなたが学校に行っている時や修学旅行など、学校行事で数日家を開けた時の猛獣の餌は、どうされているのですか?空腹の猛獣は危険です。」と普段の様子について質問した。

陽子は、「組員じゃなかった、父の部下が毎日生肉を塀の外から投げ込んでいます。私が不在の時に中に入るのは怖いようなので。」と返答した。

刑事は、「そりゃそうでしょう。猛獣は危険な動物です。現に今日、人が襲われて重傷を負いました。どのような安全対策を講じているのか説明して下さい。」と指示した。

陽子は、「安全性については、家全体が檻になっているので、檻の中に入っているといえば入っています。外の散歩はしません。庭が広いので、散歩は庭で充分です。この家から一歩も出しませんので大丈夫です。今日みたいに猛獣注意の貼紙を無視しなければね。」と陽子の説明に警察は納得して、まさか組員が投げ込んだ生肉は、組員が殺した敵対するやくざの体の一部だとは気付かずに帰った。

簡単に警察が納得したのは、菊枝が患者の政府高官に頼んだからだという事を陽子は知りませんでした。

マスコミ各社から、学校等に問合せが殺到して、朝刊の第一面にも載った。

陽子に撃退された不良グループは、一人暮らしの陽子の家に忍び込み、不意撃ちしようと計画していたが、このニュースを聞いて驚いた。

不良グループは、「おい、下手に忍び込めば猛獣の餌になるぞ。」と相談していた。

別の不良が、「下手じゃなく、上手く忍び込めば良いんだよ。例えば、お前が猛獣に襲われている間に俺が東城を襲うとかな。」と笑っていた。

その不良は、「何だと!何故俺が猛獣に襲われなくてはいけないのだ!俺は囮か!でも猛獣は二匹いるのだぞ。お前も猛獣に噛み殺されるぞ。」などと相談していたが、結局忍び込むのは危険だと判断して中止にした。

以前、陽子の家を訪ねた同級生達は、「あの時のトラに泥棒が襲われたの?」と通学の途中で買った週刊誌を見ていた。

陽子は、「ええ、そうよ。あの晩は、トラが私の蒲団に潜り込んでいたので、泥棒は、てっきり私がトラのぬいぐるみと寝ていると思い、包丁を持って襲い掛かって来た所をトラがガブリとやっちゃって、出血が止まらずにどうしようかと焦ったわ。でもそれが、私の目の前だったので、直ぐにトラを引き離して応急手当しました。私の目の前でなかったら、今頃泥棒は骸骨のようになって死んでいたかも知れないわね。私は法律の事は詳しくないけれども、そうなっていれば私は過失致死罪になっていたのかしら。その泥棒も腕は複雑骨折したものの、なんとか一命を取留めたらしいのでホッとしました。出血が多かったので心配していたのよ。」と説明した。

同級生の一人が、「警察が調べて、陽子には過失なしになったのでしょう?多分大丈夫じゃないですか?でも、そういう言い方をすれば、陽子は泥棒の命より自分が過失致死罪になるかどうかの方が気になるように聞こえるわよ。」と忠告した。

陽子は、「御免、マスコミも騒いでいるようなので気を付けるわね。先日あなたが危険なので、貼紙をするように助言しくれたので、警察もそれを見て過失なしになったのよ。あなたの一言で助かったわ。有難う。」と感謝していた。

その泥棒も、陽子の依頼で菊枝が手術して元に戻った。

しばらくの間、騒ぎは続き、トラやライオンと練習している様子を取材させないと収まらないと判断した陽子は、庭にトラやライオンの餌にした食べかすや人骨がないか組員に掃除させて、週末に自宅で猛獣との練習を公開した。

公開練習日は、取材人が家の庭に設置された檻の中から取材して、その様子は生放送で全国放送された。

朝はトラ、午後はライオンと格闘技の練習をした。

マスコミは、泥棒を応急手当した医師にもインタビューした。

その医師は、「泥棒の腕は、複雑骨折していて、神経もズタズタに切断されていた為、骨をワイヤーで繋いでも、二度と動く事は考えられず、感覚もなく壊死する可能性が高く、修復は不可能だと判断して切断しようとしました。猛獣の買主が、世界的名医の東城菊枝先生の娘さんでして、娘さんから依頼を受けた東城先生から、“今そちらに向かっています。私が執刀しますので切断しないで下さい。“と連絡がありました。切断せずに、夜中に移動してきた東城先生の助手に付きました。信じられないようなメスさばきで、まさかあの状態で障害も残らず元通りに戻るとは未だに信じられません。夢を見ているようです。先日病院内でリハビリ中、キャッチボールをしている様子を見て驚きました。噂通り、神の手としか言いようがありません。」とマスコミに答えていた。

この放送以後は、マスコミからの問合せも徐々に減って来て、騒ぎも一段落した。

山岡は組員から聞いていましたが、不良グループがこの放送を見て、何故陽子が異様に強いのか納得したが、山岡も何故陽子が猛獣と素手で戦えるのか?何故無抵抗で寝ている陽子を猛獣は襲わないのか?までは解りませんでした。

まさか、陽子には肉食のテレジア星人の血が流れている為に素手で戦えて、猛獣は肉食なので、半分植物の陽子を襲わないとは夢にも思っていませんでした。


次回投稿予定日は3月6日です。

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