第六十三章 スケバンの菊枝現れる
菊子は出産した子供を親友の芹沢陽子の子供になる前に、陽子の親戚で芹沢小児科医院を開業している家の前に幸せになる事を祈りながら、“無責任なようですが、どうしても私はこの赤ちゃんを育てる事ができません。どうかこの子の事を宜しくお願いします。この子の名前を決め兼ねています。勝手な事を申しますが、可能であれば菊枝か陽子と命名して頂けないでしょうか。”と書いたメモと一緒に捨て子した。
菊子は捨て子する数日前から、芹沢小児科医院を観察し、昼間は人が多い為に深夜か早朝にしようと考えていた。
夜間は急患がなければ外に出ない為に、一晩中屋外に放置されて凍死するか、新聞配達員に発見されると判断して、早朝捨て子する事に決めた。
朝刊の配達時間や、芹沢小児科医院の家族が、朝刊を取りに来る時間を調べて、その間に、泣きながら捨て子した。
しばらく隠れて様子を見て、自分の子供に芹沢夫婦が気付いた事を確認の上、帰った。
芹沢夫人が朝刊を取りに行くと、赤ちゃんの泣き声に気付いた。
芹沢夫人は、“えっ?”と思いながら、泣き声のする方を確認すると、赤ちゃんが玄関の前に捨てられている事に気付いた。
驚いた芹沢夫人は、慌てて主人に知らせた。
主人も、赤ちゃんが玄関の前に捨てられていると聞いて、驚いてパジャマ姿で玄関へ赤ちゃんを確認に行った。
取り敢えず赤ちゃんを家の中に入れて、芹沢夫婦で相談した。
警察に届けようかとも思いましたが、その赤ちゃんが、あまりにも可愛く、手放したくありませんでした。
芹沢夫婦は、子宝に恵まれなかった為に、子供が欲しくて、芹沢夫婦で色々と相談して、“この子は、神様が私達に授けられたのだ。”とか、“これも何かの縁だから“とか、”家の前に捨て子されていたという事は、私達がこの赤ちゃんを育てる事を実の親は希望しているのだ。“とか相談しながら、まさか宇宙人の血筋だとは夢にも思わずに自分達がその子を引き取る事にした。
一緒に入っていたメモに、赤ちゃんの名前は、“菊枝か陽子“と記述されたいた為に、最初に書かれている菊枝の方が親の思いが強いのではないかと考えて、その赤ん坊は菊枝と命名され、菊枝が捨て子だった事は秘密にして、芹沢夫婦の子供として大事に育てられ元気に育っていた。
菊枝は幼い頃、透視能力など、テレジア星人特有の能力は誰でも持っているものだとばかり思っていた。
そんなある日、芹沢夫人が捜し物をしていると、菊枝が透視力で気付いた。
「タンスの後にあるじゃないの。」とタンスを指差した。
芹沢夫人は、「えっ?タンスの後?」とそこを確認すると、捜し物が見付かった。
しかし芹沢夫人は、菊枝に透視力があるとも考えずに、“菊枝がそこに置いたから知っているのだろう。”と思い、菊枝には何も言わなかった為に、菊枝も透視力について特に不審に思っていませんでした。
小学校に入学した頃から友達の話や芹沢夫婦の話など色々と聞いていると、透視力以外にも、充電や放電など、色々な能力は自分だけにある事が段々と解って来た。
小学校高学年になった頃から、その能力は超能力のようなものだと思いはじめて、スーパーマンになったつもりで、この能力を駆使して虐められている友達を助けるようになっていた。
中学生になると、虐められている友達を助けるだけではなく、町の不良少年達も懲らしめるようになっていた。
アヤメの血を引いている菊枝は頭も良く、友達が授業で解らない所などを教えていた為に、学校ではリーダー的存在になっていた。
このように、菊枝は成績も良く、更にテレジア星人の血を引いている為に喧嘩も強く、菊子の子供時代のように、不良を撃退したりしていたので不良グループから目を付けられたが、菊枝には全く敵わず、闇打ちもテレジア星人特有の透視力や後も良く見える事で、菊枝には敵いませんでした。
菊枝は成績も良くスポーツ万能で虐めからは助けてくれるので、菊枝の人気は高くなっていた。
そんな菊枝を不良グループが見て、ねたましく思い、“でしゃばりやがって、思い知らせてやる。”と思いながら、数人で闇討ちしても、全く菊枝には敵いませんでした。
菊枝は、てっきり芹沢夫婦の実の娘だと信じていた。
そんなある日、芹沢婦人が、いつもは芹沢夫婦の部屋に置いている菊枝の高校入学の資料を、うっかりとダイニングのテーブルに置いていた。
その資料を偶然見た菊枝は、自分が芹沢夫婦の養子になっていたので驚いて両親を問い詰めた。
芹沢夫婦は、孤児になった親戚の子だと説明して誤魔化そうとしていた。
菊枝は具体的に実の両親の名前を聞き、血液型や体型等を色々と調べた上で、芹沢夫婦を更に問い詰めた。
菊枝は、「先日聞いた私の実の両親の血液型を考えると、私は生まれないわ。隠さないで本当の私の両親を教えてよ!」等と更に問い詰めた。
芹沢夫婦が、勘違いだったと説明して、別の親戚の名前を菊枝に教えた。
菊枝は、「多分そう言うだろうと思い、その親戚の事も調べていた。その両親からも私は生まれないわ。他の親戚の事も全て調べたわ。どの親戚からも、私は生まれないわ。一体何を隠しているの!」と更に問い詰めた。
菊枝が生まれても不思議ではない親戚が一組いたので、芹沢夫婦がその親戚を指名する事を菊枝は期待していたが、その期待は裏切られた。
芹沢夫婦も誤魔化しきれないと判断して、捨て子されていた時に一緒に入っていた菊子の書いたメモを菊枝に見せて、遂に菊枝は自分が捨て子である事を知った。
お嬢さま育ちの菊枝には精神的ショックが大き過ぎて、高校入学後、無断外泊が多くなり、学校も無断欠席するなどしていた。
成績が下がってきた為に、そのような菊枝を見て将来どうするのか等、芹沢夫婦が心配して色々と問い質した。
菊枝は、「私が何をしようが将来どうなろうが他人には関係ないだろう、黙っていろ!」と反抗的な態度で無視するなどしてしばらくぐれていた。
芹沢夫婦は、“他人だったら何故同居しているのだ?”と聞こうと思いましたが、今の菊枝の状態からして、今それを口に出すと家出する可能性があると判断して、そこまでは言いませんでした。
丁度その頃に、菊子の親友の芹沢陽子を襲った暴走族が、一人で人気のない夜道を歩いている菊枝に気付いて、陽子のようにレイプして、その後菊枝の体を玩具にして遊ぼうと思い、携帯で仲間に連絡した。
暴走族達は菊枝を大型バイクで取り囲み、ジャックナイフや鎖などをちらつかせてしばらく恐がらせた上で、ニヤニヤしながら、「怪我したくなかったら、大人しく着ている服や下着を全て脱いで素っ裸になれ!」と脅迫した。
菊枝は笑いながら、「涎を垂らしながら、何言っているのよ。見本がないとできないわ。あなた方が裸になり、見本を見せてくれないかしら?」と暴走族達を馬鹿にした。
暴走族達は、「見本という事は、俺達が裸になれば、お前も裸になるのか?それは俺達と一発やりたいという事か?」と菊枝に迫った。
菊枝は、「あなた方は、自分の都合の良いようにしか考えないのね。あなた方が裸になれば私も考えるわ。」と身構えた。
暴走族達は、「考えるだと!それは裸にならないという事か!」とか、「俺達をなめてんのか?」とか、「お前、自分の立場が全然解っていないな。」とか、「服を脱がないのなら、俺達が服を脱がせるまでだ。」などと口々に怒りながら、菊枝に襲い掛かった。
テレジア星人の血を引く菊枝には全く敵わず全員菊枝にやられて、「私を裸にできなくて残念だったわね。私の代わりにあなた方を裸にさせてあげるわね。」と暴走族達を裸にさせた。
暴走族達は必死に抵抗したが、服も破られて、やがて全員裸にさせられた。
暴走族達は、「お前、何でそんな馬鹿力なのだ!裸になったから、もう良いだろう。服を返してくれ!」と頼んだ。
菊枝は、「駄目です。服や汚いパンツは私が没収します。あなた方が抵抗するから服も破れて役に立たないのでね。素っ裸でここから帰りなさい。誰かを襲って服を奪えないように後手に縛るわよ。ちょうどあなた方の車の中にロープもあるしね。警察に捕まるかどうかは、あなた方の運しだいです。襲った相手が悪かったと諦める事ね。それと、お互いに解けないように、きつく縛りました。早く帰って包丁かナイフで切らないと壊死して手首を切断しなければならなくなるわよ。無駄話をしている時間はないわよ。」と笑いながらその場を去った。
暴走族達は、立ち去る菊枝の背後から、「こら!待て!こんな姿で放置するな、馬鹿野郎!」と叫びましたが、菊枝は無視して立ち去った。
暴走族のリーダーが、「こんな姿で帰れる訳ないだろう。みっともないが、暴走族仲間に携帯で連絡して助けを呼ぼう。車の中に俺の携帯がある。俺は足が痛くて動けないから、お前が俺の携帯で仲間を呼べ!」と指示した。
動ける暴走族が車から携帯を取り出し、仲間に事情を説明して助けを求めた。
助けに来た暴走族達は、「女一人にやられたのか?」と笑いながらロープを切った。
全員骨折していた為に、車に乗せようとしても、激痛でどうにもならず、仕方なく救急車を呼んだ。
到着した救急隊員が現状を確認し異常だと判断してその場で警察へ通報した。
その後病院で応急手当てして医師から、「手術が必要です。しばらく入院して下さい。但し後遺症が残る可能性があります。」と説明を受けた。
入院中に警察が事情聴取したが、女一人にやられたと証言しても信じて貰えず、暴走族同士の勢力争いだと処理されて、菊枝には捜査の手が及びませんでした。
暴走族達は、後遺症が残る可能性があると聞き、翌日から暴走族仲間や両親と相談して、病院を捜し転院した。
転院した病院でも、後遺症の可能性があると説明されて、その後数回転院しましたが、結果は同じで病院捜しは諦めて、最後に転院した病院で手術を受ける事にした。
下半身を受傷した暴走族はベッドから動けなかった為に、排泄を若い看護師に依頼するしかなく、更に動かない為に、消化器の動きも悪くなり、下剤以外に浣腸までされた。
隣のベッドで寝ている別の暴走族が、「お前は足だからいいが、俺なんか骨盤だぜ。オムツにさせられて診察の度に、数人の若い看護師の前で下半身を色々と調べられるんだぜ。」と恥ずかしそうでした。
「それも恥ずかしいかもしれないが、毎日若い看護師に浣腸されるのも恥ずかしいぜ。」などと雑談していた。
手術終了後、目が覚めると導尿管で垂れ流し状態にされていた。
そのような暴走族は、“覚えていろよ。怪我が治ればリベンジしてやる。”と毎晩泣いていた。
この事件を切欠にして、菊枝は善良な市民から金銭を強奪した不良ややくざ者と良く争うようになったが、テレジア星人の血を引く菊枝には誰一人敵わず、やくざと争った時や、その後の闇打ちなども透視力により、拳銃や刃物はお見通しでしたので、役に立たず、不良は元よりやくざからも、“スケバンの菊枝”と呼ばれて恐れられていた。
菊枝はアヤメの血を引いている為に、優しい性格でしたので、不良ややくざと争うといっても、誰かがやくざや不良に因縁をつけられていたり、襲われていたりした時に、助けている事が多かったようでした。
菊枝に助けられた人達は、その事を警察に説明していた為に、警察も菊枝の事は大目に見ていた。
次回投稿予定日は12月7日です。