王子君と幼稚園
今日は、日曜日。あれから、王子君にこれといって危機もなく…平和な日々が過ぎていった。そして昨日、加藤さんが紹介してくれた『うさぎ幼稚園』に王子君と一緒に入園の手続きをしに行って、明日から通えることになったのだ!
俺は、王子君の園児服や上履きやら、通園カバンにサインペンで王子君の名前を書いていた。ほしのおうじ…。星の王子…。狙い過ぎだよね…。どうしよう…名前のせいで、いじめられたら!?…まあ、でも王子君は可愛いから、大丈夫だよね。名前負けしてないもんね!てか、本当に王子様だったし…!
「洸…。本当に僕、幼稚園に通うの?」
「そうだよ。」
「だって、僕14歳だよ!!最近じゃ、髪が黒髪でも知能が14歳の時と変わらないし…!」
「でも…見た目は、幼稚園児だよ。それに、加藤さんの妹の姫ちゃんと同じ、星1組だよ!」
うさぎ幼稚園は、年少が花組で、年中が星組で、年長が空組で各二クラスずつあるんだ。
「14歳にもなって…幼稚園に行くとか…屈辱的だよ…。」
「気持ちは、分かるけど…。王子君を1人で家においとけないよ!」
「そうだけど…。」
「それに、王子君はこの『セカイ』のことをもっと知りたいんでしょ?だったら、幼稚園のことだって知りたいでしょ!」
「うん…。僕は、お城に専属の教育係がいたから…幼稚園も学校も行ったことないんだ…。」
「だったら、良かったじゃん。これから、幼稚園だけじゃなくて、小学校も中学校も高校も行けるんだよ!友達もたくさんできるんだよ!!」
「友達…!」
王子君は、小さい頃にお城を抜け出して、そこで出会った孤児院の子どもたちと初めて友達になったんだよね…。でも、いろいろあって、その子達と会えなくなっちゃって…。王子君て、ずっと一人でさびしかったんだろうな…。
「王子君。幼稚園に行きたくなったでしょ?」
「うん…!僕、友達たくさん作りたい!」
「王子君なら、友達たくさんできるよ。友達100人で山の上でおにぎり食べられるくらい!!」
そうだよ…。王子君は、もう王子様じゃなくて…うちの王子君だから!…ヤマネコさんに教えてもらった王子君の本当の名前も…とっても良い名前だけど…。王子君は、星野王子君だから!!
そして次の日。
「洸…。変じゃない…?」
水色の園児服に半ズボン、白い靴下に小さい靴、黄色い帽子をかぶった王子君は、犯罪的な可愛さに…!!
「王子君…どうしよう…可愛すぎる!!外にでたら、絶対に俺から離れちゃだめだよ…誘拐されるから!!知らない人にもついてっちゃだめだよ!!」
「おはようございます。星野先生、王子君…可愛すぎ…!!あとで写メ撮らせて!!」
天之川中学の青襟の紺のセーラー服姿の加藤さんと、その妹の姫ちゃんが俺と王子君を迎えに来てくれた。一緒に幼稚園まで行く約束をしてたんだ。
「おはよう。加藤さん。その子が妹さんの姫ちゃんだね!はじめまして、姫ちゃん!」
姫ちゃんは、金髪の二つ結びにピンク色のリボンを付けた髪型で、加藤さんと同じ紫の瞳をした…超絶可愛い女の子!!すごい、この子も名前負けしてない…本当にお姫様みたいに可愛い!!
「はじめまして。加藤姫です。お姉ちゃんがいつもお世話になってます。」
姫ちゃんがぺこりとお辞儀をする。すごい…まだ5歳児なのに加藤さんみたいにしっかりしてるね…!
「よろしくね、姫ちゃん。ああ、この子が今日から君と同じ星1組に入る星野王子君だよ!」
「はじめまして。星野王子です。よろしくね、姫ちゃん。」
「うん。よろしくね!」
わあ…二人とも可愛くて…本当の王子様とお姫様みたいだね…!!
「良かったね、王子君。こんな可愛い子と同じ組に入れて!」
「ちょっと洸、茶化さないでよ…!だいたい、僕は14歳なんだよ!」
「王子君…14歳なの…?私と同じで5歳じゃないのー?」
姫ちゃんが困惑している…!
「ああ、王子君の冗談だよ!もう王子君、姫ちゃんを困らせちゃだめじゃないか。」
「洸…。」
「先生、何で王子君は14歳にこだわるんですか?」
「さあ…。」
本当は、14歳なんです!
「ところで…姫ちゃんは、プ●キュア見てる?」
「うん。でも、ア●カツ!の方が好き。」
「ええー!!俺、プ●キュアの方が好き!」
「先生…。プ●キュア本当に好きなんですね…いい年して…。姫は、アイドルになりたいんだよね?」
「うん!」
「姫ちゃんなら、絶対なれるよ!ねえ、王子君。」
「うん。姫ちゃん、すごく可愛いもんね!」
姫ちゃんの可愛い顔が真っ赤になる…!王子君、5歳の子をたらし込むなんて…末恐ろしい子だね!
「ありがとう…王子君。幼稚園についたら一緒に遊ぼうね!」
「うん!」
なんだかんだで…王子君、嬉しそうだね。幼稚園で友達たくさんできるといいね!