3話 一体ここは
5/16 サブタイ改稿
モチベーションの問題で、執筆が夕方~夜中になりそうです。
しばらくは毎日数話更新できるように努力していきたい次第であります。
「はぁ、死神……」
気の抜けた返事が漏れる。急に死神を召喚するなどと言われれば誰でもこうなるだろう。
死神、と聞いて思い出されるのは黒いローブのようなものを纏っている鎌を持った骸骨だろうか。少なくとも好き好んで召喚したいとは思わないし、そもそも存在するとも思えない。
「そう、死神だ。」
女性はずた袋を覗きこみつつはっきりと答える。何か宗教でも信仰しているのだろうか。やはり早まったか、という考えが頭をよぎるが、決めてしまったことは仕方がない。もしもの時のために逃げられるかどうか検討してみるが、山道を裸足はさすがにきついか……。
「宗教か何かですか?俺、あまりそういうのは信仰してないんですけど」
宗教自体には関わりたくないという意思をちらつかせつつ、どういうことなのかを尋ねる。
「……私は死霊術師でね」
……ネクロマンサーだそうだ。続けて女性が言う。
「死霊術のオルタと言えば知らぬ人はそういないと思うのだが、どうだろう?」
オルタという名前らしい。外見から日本人ではないと思ってはいたが、その予想は間違っていなかったようだ。しかもそこそこ有名人らしい。俺は全く知らないが。
「すまないが、知らないな。と言うより、死神やら死霊術師やら、……正気か?」
俺の返答に対して女性はやや目を丸くして、驚いたような素振りを見せる。何か驚かせるようなことを言っただろうか。宗教を否定されたように感じたか?
女性は一瞬考えこんで、今度は俺の名前を聞いてきた。
「……ふむ。あんた、名前は?」
相手の名前だけ聞いて名乗らないというのも失礼だろう。正直に答える。
「相馬八千代だ」
「ソーマ・ヤチヨ……か。この辺りでは聞き慣れない名前だ」
日本なら相馬は多くはないが多少いるだろう。八千代は男の名前としては珍しいかもしれないが、むしろ日本人なのは一発でわかるだろう。千代に八千代にって国歌にもあるフレーズだし。
とすると、ここは日本ではない可能性が浮上する。……あまり考えたくはないが。
「そうか。ところで今更だが、ここはどこなんだ?何県なのか……そもそも日本だよな?」
いろいろとあって聞くのが遅くなったが、真っ先に聞くべきことだったような気がしなくもない。俺が住んでいたところには、少なくとも周囲に山はなかったと記憶している。とするとどこか他の県という可能性があるのだ。やや期待するように、むしろ縋るように尋ねる。
「ニホン……という地名に聞き覚えはある。」
一応知られてはいるらしい。外国人のようだし、ジャパンと言ったほうが通じただろうか。いや、日本も最近では通じることも少なくないだろうし……。
そんな俺の考えなど知る由もなく、女性――オルタは続けて衝撃の言葉を放つ。
「しかし、この世界にニホンという国はないぞ」