すれ違いのさきに
「美風、あなたが入れる紅茶は美味しいわね。ゆったりとできるわ。」
「ありがとうございます。」
あの影軍団と人間たちとの戦いでみんながバテてしまったので館で休憩中である。私のとなりでは麗花と鈴花が座っているが、いましがた私と同じものが飲みたいと駄々をこね、飲ませたところ熱すぎて吹き出したのである。今の会話は美風とテーブルを拭きながらの会話だ。
「アイスティーをお出ししましょうか?」
「…お願い。」
美風がアイスティーを入れにいった。とてものんびりした感じ。一つだけ休憩していないことがある。ほら、いまも耳をすませば聞こえてくる。
「あなたふざけなさんなよ?調子に乗るのもいい加減になさい!だいたいあなたはのんびりしすぎなのよ!」
「辛口よりはみんなうんざりしてないと思うけどね!」
みんな十分うんざりしている。この二人のケンカは毎度お馴染みだ。今回は影軍団との戦いでのことを引きずっているようだ。ああ足音がこっちに来る……。
「ちょっと聞いてよ!」
やっぱり。私はパエルの愚痴を聞かないといろいろややこしいことになるので聞いてやっていると、
「どうしても、合わないのよね。私いつもあんなこと言っちゃって。」
そう。パエルは光牙のことが好きらしい。会うたびについこのようなケンカになってしまうのだとか。
「ねぇパエル。もうちょっと相手の言葉も聞いてみたらどうかしら。相手が自分の何に反対しているのかよくかんがえたほうがいいと思うわ。で、それをわきまえた上で、発言をする。そしたらケンカにならないと思うのよね。」
こんな感じかなと思ったことを言ってみると、パエルは出ていった。それと入れ替わりに大牙が入ってきた
。そのあとから美風がアイスティーを置いていった。麗花と鈴花は飲んで、
「おいし~。」
と幸せそうな表情を浮かべている。大牙のほうをみると、なにやら悩み事って感じ。
「何かご用?」
「あの二人の仲の悪さなんだけどよ。光牙のほうはパエルのほう好きらしいけど会うたびに喧嘩になっちまうんだとさ。なんとかなんねーかなと思って来てみたんだけど?」
「あーなるほどね。でも、パエルのほうも好きみたいよ?こればっかりはあの二人に任せるしかない気がする。」
二人でどうしたものかなぁと考えていると、美風がバタン!とドアを開けた。
「大変です!光牙さんがお熱で倒れられました!」
さっきまでケンカしてたのにどうやったら倒れるのだろうか。とりあえず光牙にあてがわれた部屋に行ってみることにした。
部屋につくと、パエルが先に来ていて、治癒魔法をかけていた。完全に部屋にはいりきるまえだったので、こっそりと部屋を出た。あのまま仲直りできたらいいなぁ。なんて思って。
今はテラスで大牙と一緒にいる。隣には、麗花と鈴花。
「そういえば気になっていたんだけど…」
麗花が口を開き、その言葉を鈴花が繋ぐ。
「大牙お兄ちゃんって私たちのお父様になるの?」
「「ゴホッ!」」
二人揃ってむせてしまった。
「ちょ…し、心臓に悪いからやめてそういうの。」
顔赤くなってないといいなー。なんやかんやでその日は終わった。
二日後。光牙もよくなったようで、いつも通りののんびりした日々に戻った。ひとつ変わったことは、二人のケンカがなくなった。どうしたのかな?仲直りしたのならいいけど、逆に気になる。その時、ドアが開いて、パエルが入ってくる。
「最近ケンカしなくなったわね。仲直りできたの?」
「ええっと、そのことなんだけど…」
あ、これもしかして…。
「つ、付き合うことになったんだけど…」
やっぱり!よかったよかった。
「よかったじゃない。実ったわねぇ。お祝いの紅茶でもどう?」
「ありがと。」
珍しく照れているパエルとゆっくり紅茶を飲んだ。パエルが幸せそうなのは気のせいではないだろう。