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どうやら俺は育つ世界を間違えたらしい。あと性別も  作者: 山吹弓美
三:秋の新参者

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77.さてさて、予定決定

「タイガ様ー、セイレン様ー。もうすぐお昼ですよー」

「……ぁ?」

「ふぇ?」


 えーと、だな。

 結局、お昼にオリザさんに起こされるまで俺も、俺の膝の上でタイガさんも、爆睡してた。都合3時間くらい、かな。ははは。

 いやもう、言い訳も何もしねえよ。しょうがないだろ、人の寝顔って結構眠気誘うんだから。

 なお、起こしてくれたのがオリザさんなのは、彼女が一番空気読めないから、だそうだ。ああうん、他人ごととして見た場合、小娘がイケメン恋人に膝枕して2人ともぐっすりなんてところに入り込むの、空気読めたらやってられねえよな。……俺とタイガさんだけどな!


「あ、ありがとう、ございましたっ」


 でまあ、爆睡から跳ね起きたタイガさん、大慌てでソファからずり落ちるように土下座した。こっちでもあるんかい。

 ってか、婚約者の膝借りて寝て、何で土下座なんだ。おかしいだろうが。タイガさん、変なところで真面目すぎるからなあ……と思って、俺もソファから下りてぺたんと床に座った。行儀悪いけどさ、高さ合わせたかったし。


「謝らないでくださいよ。膝貸したの、こっちなんですから。さすがに爆睡されるとは思わなかったけど、俺も寝ちゃったんですから一緒です」

「は、はい。本当に申し訳ない……」


 うわー、マジ凹みしてる。でもまあ、お昼までよく眠れたんなら良かったんじゃないかな。だってお休みは今日だけで、明日なんか遠出しなくちゃいけないらしいし。


「タイガ様、蒸しタオルをお持ちしました」


 こっちが落ち着いたところを見計らったのか、アリカさんが桶持ってやってきた。中でタオルが、朝起きた時くらいのいい感じに蒸されてる。てか、何でだ?


「あの、気がついてないと思うのですが、顔に痕がついてるんです。男前が台無しですよ」

「え? す、すまない」

「あ、ほんとだ。俺の服ですね、すみません」


 あと、と言われてやっと気がついた。頬のところ、多分俺の服のタックか何かの型がついてる。あーあ、ほんとに男前が台無しだー。慌ててタオルもらって、頬に押し付けた。

 ま、そういう外したとこがいいんだけどな。いやだって、イケメンでやることなすこと完璧って腹立つ前に別世界の存在じゃねえ?

 しばらく押さえてると、ほとんど目立たなくなったのでタオルで軽く顔を拭いてやる。あ、何か子供の顔拭いてる感じ。施設でご飯食べてた時、弟分どもの顔ぐりぐり拭いてやったけど、あれよりはゆっくり優しくやってみた。


「申し訳ありません、セイレン様。色々世話になってしまって……」

「構いませんよ。いっそ、予行演習だったとでも思っておきます」

「え、あ、はい」


 いや、そこで何で顔赤くなるんだよ。プロポーズしてきたの、そっちのほうだろ。俺はある意味覚悟できてるんだから、頼むよ。

 で、お昼ご飯の時間なので、皆で揃って行くことにする。部屋を出る前にふっと、タイガさんは俺を振り返った。


「ああ、セイレン様。レオ様には、ちゃんとお伝えしておきますのでご安心ください」


 お。ちゃんと覚えててくれた。


「よかった。ちゃんと聞いててくれたんですね」

「セイレン様のお言葉ですから、当然忘れませんよ」


 よく言うよ。この人、何で今まで結婚してないんだろうな。一度惚れたら、結構尽くすタイプだし。……てか、よく俺に惚れたな。趣味悪いのかもしかして。

 ……それにしてもタイガさん、レオさんに様付けするんだ。ほんとに何者だ、あのオネエ。



 サリュウも合流してお昼を食べつつ、ふっとこの時間を終わらせる話題になった。いや、今日の話じゃなくてな。


「そういえば、ご帰宅はいつになさるんですか?」

「帰宅、か。うーん……」


 俺もサリュウも、割とアバウトににしか考えてないんだよな、予定。服なんかはある程度余裕があるし、屋敷に帰って何するかといえば、まあ勉強なわけで。優雅だよな、金持ちって。

 で、帰宅日の提案を出してきたのは我が義弟にしてタイガさんの実弟だった。


「僕たちが遊びに行けるのは最終日の前日ですから、最終日には帰っちゃったほうがいいんじゃないですか? 兄さまも、こちらの作業お忙しいでしょうし」

「ふーん……それもそうか」


 サリュウ、頭回るし予定の立て方もうまいし、ちゃんと育てばシーヤの跡取りとして何の問題もないんじゃねえか? 変な女に引っかからなければだけど、って一番変な俺が言うか。


「タイガさん、それでいいですか」

「そうですね。最終日の朝であれば、私もお見送りができますし」


 つまり、その前後とかだと予定詰まってるんだな、この人。それなら、ちゃんと会ってお別れ言いたいよなあ。この家離れたら、次いつ会えるか分からないんだもんよ。


「あーもう、兄さまも姉さまも。馬車で半日も走れば会える距離なんですから、そんなに寂しそうな顔しないでください!」

「そ、そんな顔しとらんぞ?」

「しっ、してないよ!」


 いきなりサリュウにそんなこと言われて、慌てて答えたら声がひっくり返った。俺だけじゃなくてタイガさんもだったから、お互い図星だったらしい。……そうだよ図星だよこんちくしょう。


「2人とも、声上ずってるじゃないですか。まったくもう、毎度毎度見せつけられる僕の身にもなってください」

「……すまん」

「ごめん……」


 さすがにこればっかりは、2人揃って頭を下げるしかなかった。父さん母さんを見てる俺みたいな気分だったんだろうな、いやほんとごめん。時と場所考えないとな。いやいやいや。



 で、あっという間に日は過ぎて、遊びに行ける当日になった。

 タイガさんちにいる間に、持ってきた服をひっくり返してどれがいいか、メイドさんたちの協力のもとで頑張って選んだ。いや、俺やっぱり服のセンスいまいちっぽくてな。こればっかりは、ほいほい身につくものじゃないっぽい。たまにマキさんが顔出すので、一緒に選んでもらったりしたけど。


「派手じゃないよね? お祭り行っても、浮かないよね?」

「大丈夫です。浮きやしませんから」

「可愛いですよー、セイレン様」

「よくお似合いです」


 んで、選んでもらったのはベリーの色によく似たくすんだ紫色のワンピース。襟とか手首のあたりとかは、白っぽい色でまとめてる。くすんでるからあんまり派手じゃなくて、茶色が多くなってきた景色にはあんまり浮かない、らしい。そうなのかな。

 髪飾りはやっぱり、タイガさんがくれたあの髪飾りを着ける。春の祭りじゃないけど、虫には寄ってきてほしくないしなあ。

 メイドさんたちは私服持ってきてない、とのことなので、頭飾りとエプロン外してスカーフやリボンつけて、っていう収穫祭初日と同じパターン。でも、あの日とは着けてるものが違ったりする。

 で、玄関ホールまで行くとそこには、うちのメイドさんたちと同じように衣装アレンジしたメイドさんを従えて、サリュウが待っていた。こっちはオリーブグリーンのアクセントの入った上下で、ちょっと見には商人のお坊ちゃんに見えるかもしれないな。服のアクセントと同じ色のベレー帽、可愛いぞ。


「わあ。姉さま、ほんと可愛らしいですね」

「あ、ああ、ありがとな、サリュウ。お前もかっこいいぞ」

「そりゃもう、姉さまと一緒に遊びに行くのに、変な格好なんてしてられませんから」


 えっへん、と胸を張るサリュウは、済まんが俺から見るとまだまだ子供だ。いや、男はここからがぐんと成長するはずだから、その先に期待だけどな。タイガさんの弟なんだから、素質はいいんだよ。

 で、サリュウの後ろからカンナさんが、楽しそうに笑いつつ教えてくれた。


「サリュウ様、今日遊びに行くこと決まってからずーっと、服装選びしてたんですよ」

「それでか、マキさんが時々こっちの服聞きに来てたのは」

「セイレン様と、合わせたかったんですね」


 俺が目を見張ると、ミノウさんがなるほどと頷いた。あー、まああんまり違和感ないか、この色味なら。


「セイレン様もお洋服、熱心に選んでましたもんねー」

「姉さまは、どんな服でもお似合いだと思うんですが」

「はは、ありがとな」


 オリザさんの言葉に、サリュウは真面目な顔して答えた。お前、タイガさんと言動似てるな。あんな感じに嫁来るの遅くなりそうで、ちょっと姉ちゃん心配だぞ。

 で、ひと通りくるりと見渡すと、1人だけめっちゃ村娘な人がいた。もちろんというか、フブキさんである。まあ、俺のお守り担当だしな。


「そういえば、フブキさんは一緒に来るんですか?」

「少し離れて護衛いたします。万が一また何かあった場合、離れたところにいたほうが反応しやすい場合もありますから」

「それもそっか。じゃあ、よろしくおねがいしますね」

「は、お任せください」


 深く頭を下げて、フブキさんは先に出て行った。ほんと忍者みたいに、するすると足音がしない歩き方だ。

 さ、俺たちも行こうか。

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