私の手に取った楽器達。
私が手に取った楽器達は、私の心情を音にして魅せる。
悲しい音を奏でた綺麗なクラリネットを、軋むくらい握り締た。
それから、泣き叫ぶ。
どうすればいいですか?
誰かそばにいてくれますか?
私は一人が怖いです。
どうすればいいですか?
誰か温めてくれますか?
その日は声が出なくなるくらい叫んだ。
冷たい音を奏でた黒くなったクラリネットを投げ捨てて叫んだ。
冷たい音って、こんなに悲しいっけ?
そう、思い、心情を叫んだ。
私は一人で寒いです。
こんな家に。こんな家の子に。
なってしまった。なっちゃった。
あの日、から寂しいなんて感情を隠し続けた。
ある日、苦しそうな音を奏でた薄汚れたクラリネットを
家で隠して声にならない様に無音で言った。
一体、私の遠い記憶にあるのはどんな傷?
残酷でドス黒い世界のせいで私の傷は
ずっとずっと隠されてたんだ。
それから、クラリネットは音を出すのやめた
この日、銀の綺麗なフルートは。ドス黒い音を奏でた。
それから、つぶやいた。
慣れちゃった。こんな痛み。
慣れちゃった。こんな寒さ。
誰が私の傷を癒してくれる…?
誰が私の心を温めてくれる…?
お願い。辛い記憶でもいい。
悲しい記憶でもいい。
お願い。私に、真実を教えて。
あの傷はなんなのか。
それが無理なら、
私に、居場所をください…。
私の傷を癒してくれる友人をください…。
一人にしないでください。誰か手を握ってください。
なんて我が儘な私でしょう。
本当の私はそう。我が儘だ。
本当の私を人前に出したらきっとまた嫌われる。
違う日、少し薄汚れたフルートは、
迷いのあるドス黒い音を奏でて。
………………消えた。
あの日から吹いていたクラリネットやフルートは、
ドス黒さだけでなく迷いも奏でた。
今、奏でたらどんな音楽になるんだろう。
暗闇の中に奏でられる音楽の伴奏は
いつしか、暗いくらい森の暗い暗い夢になった。
昔からピアノでもクラリネットでも琴でも声楽でも、「楽器から流れる音はその演奏者そのものをあらわす」と言います。
苦しい時には苦しい音が。
明るい時には明るい音が。
ただし、暗い音になるにも明るい音になるにも、無理やり自分を偽ってはその音に決してなりません。それこそが音を操ろうとする我儘なのだから。
本当に今自分が不安定な時は、他人からはわからなくとも暗い不安定な音になるものですよ。