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 あれから、ヒールの高い靴は極力履くのをやめる事にした。

 やっぱり訓練が必要なんだわ。そうため息をつきながらあの日のことを回想してみる。

 結局、アダムとデートという名のお礼の約束をしてしまい、アドレスまで交換して、たまに他愛のない内容のメールが来る。

 お礼については彼の部活と私のバイトが忙しいため、お互いに予定を調節してる段階だ。


 「あ!尾倉さん、おはようっす」


 不意に後ろから挨拶され、振り返るとそこには高山 実がいた。

 スパイラルパーマをかけたような強い癖っ毛が顎の少ししたまで伸びており、男の割には細い線の長身と相まってなんだかハイファッションのモデルさんみたいだ。

 the醤油顔と本人がいうほどの薄い目鼻立ちだが、整った鼻筋は上品だ。ちなみに27歳だ。

 彼はこのバイト先の先輩だ。いつも従業員が少なめで構成される職場なため、なんでも彼に頼ってきた。人あたりもよく、親切でいいお兄さん的な存在である。

 「おはようございます。今日は結構お客さん入りそうですねー。予約がいっぱいです。これは残業コースかも」

 デスクのPCにはびっしりとスタジオのスケジュールが埋まっている。それを覗き込んだ高山はげっそりした表情をつくった。

 「まじかよー。今日こそはと思ったのになぁ。」

 「なにか予定があるんですか?」

 切れ長の瞳を瞬きながら何か決意したようにようにため息を着くと、こう言った。 

 「うん、あのさ、食事でもどうですか?もしよかったらでいいんだけど。」

 え?と私は首をかしげた。改まってそう言われるのもなんだか変な感じだ。食事なら今まで何度も一緒したし、いつもバイト終わりに飲みに行く程度だが気楽な関係だった。

 「・・・はい。いいですけど、どうしたんですか、改まって。」

 彼のいつもと違う雰囲気に、なぜかドキドキする。

 「うん。仕事帰りの一杯じゃなくて、尾倉さんとデートに行きたいわけ。」

 ・・・・・・・・・・・。

 「はあ。デート、、、、ですか。私と?」

 「そう。とりあえず、仕事終わったら誰の誘いにも乗らずに俺と駅で落ち合いましょう。こっちも仕事落ち着いたらメールするから。んじゃ、そういうことで!」

 早口に言うだけ言って高山はレコーディング用のスタジオ部屋に行ってしまった。彼は受付兼レコーディングエンジニアでもある。今日は昨日からの引き続きでレコーディングの編集作業もあるみたいだ。うーむ、さっき見たシフト表によると高山は徹夜らしい。後でコーヒーとエナジードリンクの買い出し頼まれそうだ。


 きっと、徹夜で頭がおかしくなったんだろう。ナチュラルハイとかってやつ?うん、こんなにラブなイベントが舞い込む訳ない。

 そんな風に自分を落ち着かせてみるが、やっぱり胃のあたりがくすぐったい。慣れてないのだ。 

 中学時代から高校時代まで恋愛なんてものとは縁がなく、周りの友人がこぞって披露する「恋バナ」とやらについていけるわけもなく、いつの間にか「淡白な尾倉さん」の烙印が押されていた。

 自分では冷静沈着をモットーにしていたつもりで、別に興味がないわけじゃなかった。というより興味は大アリだった。少女漫画は大好きだし、ハーレクインなんか大好物。おしゃれだって積極的に、、、、やってはいる。(この前大失敗したが)

 だから、今しがた体験したデートの申し込みは、とても胸をくすぐりすぎて死にそうなのだ。

 顔には出てないかもしれないけど。

 そして、私はあることに気づいてしまった。

 デートを申し込んだということは、高山は私を、、、、、好意的な目で見てるってことであって、私はそれになんかしら答えなくちゃいけないわけだ。でも私は高山をそんな目で見たことはなくって、だけど高山は見ていたわけで、だからわたしはetc....


 ぐるぐると冷静に思考を回していると、携帯がメールの到着を知らせていた。思考はそのままで条件反射でメールを開く。

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 オルセン アダム 誠太郎>

宛先:△□△□@i.saftbenk.jp

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Re:

2012年7月12日 10:40

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今日、夜暇ですか?

部活が今日中止になったんで、よかったら。


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げ。どうしよう。今高山さんと約束しちゃったよ。っても結構強引だったけど!





 



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