鏡の向こうの私
麻奈は、東京とパリを行き来する日本・ポルトガルの両親を持つミックスのモデル。カメラに映る完璧な笑顔の裏で、心のどこかに“自分の居場所がない”という影を抱えていた。
日本でもフランスでも母国ポルトガルでも外国人として扱われる。私のアイデンティティは何なのだろうか。
撮影のため訪れた日比谷の古い洋館スタジオ。控室にある大きな鏡の前に立った瞬間、視界が歪み、麻奈は光の渦に吸い込まれた。
目を開けると、そこは1920年代の東京。着物を着た人々が忙しなく行き交う。肌を露出した服で、180㎝と長身、片言日本語を話す彼女に冷ややかな視線が注がれる。
混乱する麻奈は、洋装の女性記者・花代に助けられる。彼女は当時では珍しい自由奔放な女性で、麻奈に「自分の居場所は、自分で作り、自分の居場所だと意味づけるもの」と語る。
花代は私を題材に新聞記事を書き、それが私の写真と共に掲載された。
それから麻奈はモデルとしてでなく「一人の人間」として見られる喜びを知っていく。
着物を着て、日本語を頑張って使い、文化を尊重するその姿勢が人々を笑顔にし、私という存在を受け入れてくれる。
人というのは自分の文化を理解し、それを好きだと言ってくれる人を好くものだ。と花代は解く。
しかしある日、再びあの黒い鏡が現れた。花代は微笑み、「あなたはもう、自分を見つけたでしょう」と背中を押す。
まばゆい光の後、麻奈は日比谷のスタジオに戻っていた。撮影に呼ばれ、気合を入れなおす。
彼女は鏡の中の自分に小さく頷き、初めて心から微笑んだ――。




