Clock Rabbit ★Maze
ティーパーティの余韻がまだ消えない夜。
アレンはホワイトに導かれ、庭の奥に続く小道を歩いていた。
道は曲がりくねり、時折宙に浮いた階段や逆さまの橋が現れる。
まるで、世界そのものが迷路のように生きているみたいだ。
「……ここも、ワンダーランドなのか?」
「そうだよ。この迷路は、君の心次第で形を変える」
ホワイトの言葉に、アレンはハッとした。
迷路はただの道ではなく、自分の心の映し鏡なのだ。
「……俺の心……?」
「うん。君が怖がれば道は曲がり、信じれば真っ直ぐに伸びる」
アレンは小さく息を吸った。
怖いけれど、ホワイトと一緒なら進める気がした。
その手の温もりを頼りに、ひと歩きひと歩き慎重に進む。
すると、道の先でチェシャが待ち構えていた。
「お、迷路に挑戦か。面白そうだな」
「チェシャ……!」
アレンは思わず立ち止まる。
チェシャは手に小さな懐中時計を持ち、にやりと笑った。
「君、どっちを選ぶか迷ってるんだろ?」
「そ、そんなこと……」
「ばればれだぜ。ホワイトの方に行きたいんだろ?」
アレンの胸がドキンと跳ねた。
チェシャの瞳は鋭く、でもどこかいたずらっぽい。
心の中の迷いが、その目に映ってしまったのだ。
「……っ」
アレンは視線を逸らす。
そのとき、ホワイトがそっと彼の手を握った。
「大丈夫。君のペースでいい」
その温もりに、アレンは心の奥の不安が少し和らぐのを感じた。
チェシャは笑いながらも、道の奥に軽やかに飛び跳ねる。
「さあ、選べよ、鍵くん。僕とホワイト、どっちに手を取る?」
アレンは考えた。
迷路も、契約も、そしてこの二人も。
全部、初めて出会う感情でいっぱいだ。
恐怖も期待も、全部一緒に胸に詰まっている。
「……ホワイト……」
アレンがそっと囁く。
その瞬間、ホワイトの手がぎゅっと強くなる。
「ありがとう、アレン。君と一緒なら、どんな迷路でも進める」
胸の奥が熱くなる。
その温もりに、アレンは頷くしかなかった。
迷路はまだ続くけれど、もう一人じゃない――
ホワイトと一緒なら、どんな不思議も乗り越えられる気がした。
でも、チェシャの笑い声が背後で響く。
「ふふ、まだまだこれからが面白いぜ、鍵くん」
アレンの心臓は、夜空よりも早く跳ねていた。
甘くて、じれったくて、少し危うい夜。
ワンダーランドの迷路は、まだ始まったばかりだった――。




