clock☆sound
樹洞を落ちていく間、
アレンの耳にはずっと――
カチ、カチ、カチ……
懐中時計の音が響いていた。
暗いのに、不思議と怖くない。
むしろ胸の奥が、ふわっと熱くなる。
ふと、足元の感覚がなくなった。
重力が途切れ、時間も止まったような――
そんな瞬間。
「……っ!」
次の瞬間、アレンの体はふわりと柔らかい地面に落ちた。
周囲には淡く光る草花。
頭上には、逆さまに流れる空。
風は甘い花の匂いを運び、見たこともない蝶が舞っていた。
「ここ……どこだよ……」
アレンが呟くと、草の向こうから足音が近づいてくる。
そのリズムと一緒に、あの懐中時計の音も重なる。
「やっぱり、来たんだね」
その声は――やさしくて、少しだけ切なげ。
振り向けば、白い髪の青年が立っていた。
月明かりみたいに光る髪。
長い睫毛の下で、金色の瞳が静かに揺れる。
「……お前、なんなんだよ」
「僕はホワイト。君を待ってた人だよ」
「はあ? 俺を……?」
ホワイトは歩み寄ってきた。
アレンのすぐ目の前で、しゃがみ込む。
距離が、近い。
心臓が、ドクンと鳴る。
「君の名前、アレンでしょ。……ちゃんと来てくれて、嬉しい」
「……なんで、俺の名前知ってるんだよ」
「ここは君の知らない世界。だけど、君のことは知ってる世界」
ホワイトは微笑むと、アレンの手を取った。
指先が触れ合った瞬間、
懐中時計の音が――ふっと、止まった。
「っ……!」
静寂の中、2人の鼓動だけが響いていた。
アレンは思わず視線を逸らす。
なぜか顔が熱い。
(なんだよこの距離……近すぎ……っ)
ホワイトはアレンの手を包み込み、
耳元で小さく囁いた。
「ようこそ、ワンダーランドへ」




