Shadows and swaying hearts
迷宮の奥深く、光と闇が入り混じる空間に、黒い靄のような“影”が立ち現れた。
その存在は、アレンの心の揺れを敏感に感じ取り、まるで吸い取ろうとするかのように迫ってくる。
「っ……!」
アレンは思わず後ずさる。
チェシャが軽やかに飛び出し、手を伸ばす。
「僕がいるから、逃げなくていい」
その声に、アレンはほんの少し安心する。
だが次の瞬間、ホワイトもすっと前に出て、アレンを守る姿勢を見せた。
胸の奥で、アレンの心はぎゅっと締め付けられる。
――二人とも、自分を守ろうとしてくれている。
「この影……ただの幻じゃない」
ホワイトの言葉に、アレンはうなずく。
胸の中で、チェシャの温かさとホワイトの優しさが交錯し、心が大きく揺れる。
影は形を変えながら、二人の間に割り込もうとする。
アレンは咄嗟に二人の手を握り、三人で一緒に立ち向かう。
「――負けない!」
チェシャの目が光る。
ホワイトも淡く光る手でアレンを包む。
そして三人の心が一つになった瞬間、影は光の中に消えた。
その後、静寂が訪れる。
アレンは息を整えながら、二人の顔を順に見た。
「……チェシャ、ホワイト、ありがとう」
「ふふ、ボクたちがついてるからね」
チェシャの笑みはいたずらっぽく、でも心強い。
「君のためなら、何だってする」
ホワイトの言葉は静かで、でも重く胸に響く。
アレンの心は、どちらへの想いもはっきりしていないまま、さらに揺れ動く。
迷宮の試練は、冒険だけでなく――心の選択も迫る場所だった。
夜の迷宮に、三人の影が揺れる。
じれじれで甘く、でも少し切ない――そんな空気が、さらに濃く漂っていた。




