Entrance to the labyrinth
ワンダーランドの森の奥深く、昼と夜の境目が曖昧な場所に、古びた迷宮の入り口が現れた。
石でできた門には、不思議な文様が刻まれ、月の光に淡く浮かび上がる。
「……ここが迷宮か」
アレンは息をのむ。胸の奥がざわつく。
チェシャが軽やかに跳ねるように現れた。
「ふふ、緊張してる?」
「……してるよ。だって、ここで何が待ってるか分からないんだろ?」
チェシャはにやりと笑った。
その笑みには、いつものいたずらっぽさだけでなく、どこか真剣さが混ざっている。
「ホワイトも来てる」
振り返ると、青白い瞳をしたホワイトが静かに立っていた。
その視線は、アレンを守るという強い意思を宿している。
「……二人とも、俺の心配してくれてるのか?」
「もちろんさ。君は大事だからね」
チェシャが肩をすり寄せ、ホワイトがそっと手を差し出す。
アレンは胸の奥が熱くなる。二人とも、自分を守ろうとしてくれている――それが嬉しくて、でも、どこか胸を締め付ける。
「さぁ、行こうか」
チェシャが先に門の中へ踏み出す。
アレンはホワイトの手を握り、二人と一緒に迷宮の奥へ進む。
中は薄暗く、壁に刻まれた文字や奇妙な模様が揺らめく。
歩を進めるたびに、足元の石がかすかに光る。
それはまるで迷宮自体が呼吸しているようだった。
「……この迷宮、俺たちのこと、試すつもりなのかな」
アレンが小さくつぶやくと、チェシャが耳元で笑った。
「ふふ、試すっていうか……楽しむんだよ。冒険は、危険があったほうが面白いんだから」
その言葉に、アレンの胸がざわつく。
でも、少しだけ、勇気も湧いてきた。
奥へ進むと、淡い光が差し込む広間に出た。
そこには、いくつもの扉があり、どれを選ぶかで道が変わるように見える。
「……どの扉を選ぶ?」
チェシャが振り返る。
アレンは深呼吸し、二人を見た。
「……二人と一緒なら、どこでも行ける気がする」
その言葉に、ホワイトは穏やかに微笑み、チェシャは嬉しそうに目を輝かせた。
迷宮の入り口で、三人の心が少しずつ固く結ばれる。
冒険も、恋も、これから始まる――




