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ワンダーランド・ボーイ  作者: 櫻木サヱ
ハートの王国と危険な微笑み

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21/31

Triangle Night, Heart's Choice △

舞踏会が終わり、ワンダーランドの城下町には静かな夜が戻っていた。

 月の光が石畳を銀色に照らし、薔薇の香りがまだわずかに漂っている。


 アレンは広場のベンチに座り、深く息をついた。

 胸の中で、ホワイトとチェシャ、それぞれの瞳が浮かぶ。

 どちらも大切で、どちらも手放せない――だからこそ、胸が張り裂けそうだった。


「……アレン」


 ふわりとした足音。振り返ると、チェシャが影のように現れる。

 顔はいつもの悪戯っぽい笑みではなく、少し不安げだった。


「ねぇ……君、どうするつもり?」

「どうするって……?」

「二人のこと……どう思ってるのか、知りたいんだ」


 チェシャの瞳は夜空に映る月のように揺れている。

 その距離感に、アレンの胸がぎゅっとなる。


 そのとき、背後から青白い光が差す。

 ホワイトがそっと手を差し出した。


「……アレン、君の心を決めるなら、今、正直に伝えてほしい」

「僕は……君を守りたい」

 その言葉は、真剣で、切なくて――胸に刺さった。


「……チェシャ、ホワイト……どっちも、俺にとって大事なんだ」


 チェシャは肩を落とし、でも少し笑った。

「ふふ、分かってる。だから、僕は……焦らない」


 ホワイトも静かに頷く。

「僕も……君の心が決まるまで、待つよ」


 月明かりに照らされて、三人の影が石畳に揺れる。

 じれじれで、甘くて、でも優しい夜。


 アレンは深く息を吸い、胸の奥で心を決める――

 まだ選ばなくてもいい。

 でも、二人の想いを知った今、心は少しだけ軽くなった。


 その夜、ワンダーランドは静かに眠り、三人の距離は少しだけ縮まった。

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