Triangle Night, Heart's Choice △
舞踏会が終わり、ワンダーランドの城下町には静かな夜が戻っていた。
月の光が石畳を銀色に照らし、薔薇の香りがまだわずかに漂っている。
アレンは広場のベンチに座り、深く息をついた。
胸の中で、ホワイトとチェシャ、それぞれの瞳が浮かぶ。
どちらも大切で、どちらも手放せない――だからこそ、胸が張り裂けそうだった。
「……アレン」
ふわりとした足音。振り返ると、チェシャが影のように現れる。
顔はいつもの悪戯っぽい笑みではなく、少し不安げだった。
「ねぇ……君、どうするつもり?」
「どうするって……?」
「二人のこと……どう思ってるのか、知りたいんだ」
チェシャの瞳は夜空に映る月のように揺れている。
その距離感に、アレンの胸がぎゅっとなる。
そのとき、背後から青白い光が差す。
ホワイトがそっと手を差し出した。
「……アレン、君の心を決めるなら、今、正直に伝えてほしい」
「僕は……君を守りたい」
その言葉は、真剣で、切なくて――胸に刺さった。
「……チェシャ、ホワイト……どっちも、俺にとって大事なんだ」
チェシャは肩を落とし、でも少し笑った。
「ふふ、分かってる。だから、僕は……焦らない」
ホワイトも静かに頷く。
「僕も……君の心が決まるまで、待つよ」
月明かりに照らされて、三人の影が石畳に揺れる。
じれじれで、甘くて、でも優しい夜。
アレンは深く息を吸い、胸の奥で心を決める――
まだ選ばなくてもいい。
でも、二人の想いを知った今、心は少しだけ軽くなった。
その夜、ワンダーランドは静かに眠り、三人の距離は少しだけ縮まった。




