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ワンダーランド・ボーイ  作者: 櫻木サヱ
ハートの王国と危険な微笑み

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19/32

Confession under the moon ♡

影が消えた夜、ワンダーランドの空には満月が輝いていた。

 庭園の泉には、月の光が銀色に映り込み、静かな波紋を作っている。


 アレンは一人、泉のほとりに腰を下ろした。胸の奥で、まだチェシャの手の温もりが残っている。

 ホワイトも近くで静かに見守ってくれていたが、今は二人きりの時間――


「……アレン」


 チェシャの声が、夜の静寂に溶けるように響いた。

 いつもなら軽く笑ってからかうのに、今は違う。目が真剣で、揺れているように見えた。


「さっきは……ありがとう。君がいてくれて……助かった」


 アレンは胸の奥がぎゅっと締め付けられるのを感じた。

 チェシャの声は、いつもより少し低く、耳に甘く響く。


「……チェシャ」

 思わず呼んだ名前に、チェシャは少しだけ驚いた表情をした。

 でも、すぐに柔らかく笑って――肩をすり寄せてくる。


「ねぇ、アレン……君って、僕のことどう思ってるの?」


 それは、いつもなら冗談めかして言うような質問。

 けれど、月明かりの下、真剣な瞳で聞かれると胸が締め付けられる。


「……俺……正直、わからない」

 心臓が高鳴る。

 でも、このまま誤魔化すこともできない。


「チェシャが好き……でも、ホワイトも――」

 言葉が途切れそうになったとき、チェシャは指先でアレンの顎に触れ、顔を自分の方へ向けた。


「ふふ、そっか……じゃあ、僕は……」

 顔が近づく。鼻先が触れそうなくらいに近い。

 チェシャの呼吸が、アレンの唇のすぐそばで震えている。


「僕はね……君を、ずっと見ていたい」


 その言葉に、アレンの胸がぐっと熱くなる。

 手が自然とチェシャの背中に回り、引き寄せる。


「……チェシャ……俺も……」

 でも、その瞬間、遠くからホワイトの声が響いた。


「アレン!」


 ハッと現実に引き戻される。

 チェシャはにやりと笑い、少しだけ身を引いた。


「ふふ、逃げるなよ、鍵くん。これはまだ序章さ」


 月明かりが二人を包む。

 甘く、切なく、少しだけじれったい――

 夜の庭園は、まるで二人の心の距離を映す鏡のようだった。

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