The Queen of Hearts and the Rose Smile ☪︎*。꙳
赤い城は、まるで血のような深紅に染まっていた。
夜空の下、薔薇の香りが風に乗って広がり、アレンの鼓動をさらに速くさせる。
「……なんか、息苦しいくらいだな」
「当たり前さ。ここは“心”を縛る場所だから」
チェシャが木の枝から軽やかに飛び降り、アレンの肩に腕を回す。
その無邪気な仕草に、ホワイトの眉がピクリと動いた。
「……チェシャ、あまりベタベタするな」
「やーだね♪ 僕はこういうのが好きなんだよ、ね、アレン?」
「ちょ、ちょっと近いってば!」
アレンの頬が熱くなる。
ホワイトは横目でじっと二人を見つめ、いつになく静かにアレンの手を握った。
「……僕のそばにいて」
その一言が、妙に甘く、胸の奥をぎゅっと締めつけた。
大きな扉が、ギィィと音を立てて開く。
その向こうに立っていたのは、赤いドレスに身を包んだ女王だった。
黒髪の間から覗く深紅の瞳が、アレンを射抜くように見つめてくる。
「――ようこそ、鍵の少年」
女王は妖艶な微笑みを浮かべ、アレンに一歩近づいた。
その瞳は、まるで心の奥を覗き込むようで、アレンは無意識に後ずさる。
「ふふ……そんなに怯えなくてもいいのよ?」
女王の声は甘く、耳元に直接囁かれるような響き方をした。
「あなたの“心”が、とても美味しそうなの。――だから、試してみたいの」
「試す……って……?」
「あなたの心が、誰を選ぶのか。愛するのか。誰に触れられたいのか」
一瞬で、ホワイトとチェシャの手がアレンの左右に伸びた。
ホワイトはしっかりと手を握り、
チェシャは肩を軽く抱くように、悪戯な笑みを浮かべる。
女王はその様子を見て、愉しげに目を細めた。
「……あら、三角関係って、甘くて苦くて、最高じゃない?」
「ちょ、ちょっと待って! 俺、そんな……!」
顔が一気に熱くなる。
心臓がバクバクして、頭がうまく働かない。
ホワイトは小さく囁くように言った。
「大丈夫。僕が君を守る」
チェシャは、真逆に甘く笑いながら耳元で囁く。
「僕の方が、楽しい世界に連れてってあげられるよ?」
女王は高らかに笑った。
「いいわ。舞踏会で、あなたの心を暴いてあげる。――逃げられないわよ」
赤い薔薇の花びらが、ふわりとアレンを包み込んだ。
その香りは甘く、少しだけ危険な匂いがした。




