white☆shadow
放課後の空気は、少し冷たい。
アレンはカバンを肩にかけ、校門をくぐった。
いつもと変わらない道――のはずだった。
「……え?」
信号の向こう、並木道の先に――
白い髪の青年が立っていた。
黒い学ランの列の中に、ひとりだけ浮かび上がるような存在。
透けるような肌、金色の瞳、そして――
胸元にぶら下げた古びた懐中時計。
カチ、カチ、カチ……
音が、風に乗ってアレンの耳まで届く。
(あんなやつ、学校にいたか?)
そう思う間もなく、白髪の青年がふいにアレンを見た。
目が合った瞬間、心臓が跳ねる。
彼は小さく微笑み、唇を動かした。
『――遅れると、君が消えるよ。』
「……は?」
次の瞬間、青年は踵を返し、走り出した。
白いコートの裾がひらりと舞う。
アレンの足が、勝手に動いた。
理由なんて、なかった。
ただ――
(追いかけなきゃいけない気がした。)
⸻
「待てって!」
信号が変わる。車のクラクションが鳴る。
それでもアレンは走り続けた。
並木道を抜け、人気のない公園へ。
青年は大きな木の根元で立ち止まると、こちらを振り返った。
柔らかく笑う、だけどどこか寂しげに。
「君は、ちゃんと来たね」
「な、なにそれ……お前、誰なんだよ」
青年は答えず、足元の大きな樹洞に視線を落とした。
まるで、そこが――落とし穴のように。
「時間だよ、アレン」
「え……なんで、名前――」
問いかけるより先に、青年は闇の中に飛び込んだ。
ためらいが、ほんの一瞬。
次にはアレンも、迷いなくその穴へと足を踏み入れていた。
⸻
闇の中で、時計の音が響いていた。
カチ、カチ、カチ――。
胸が高鳴る音と、どちらが速いのかわからない。
(いま、俺……なにしてんだ……)
――それでも、不思議と怖くなかった。
むしろ胸の奥が、温かく高鳴っていたのだ。




