表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/7

ようこそとはならない 招かれざる異邦生物

異邦人と異邦生物、違法と異邦もかけてるんだよなぁとかいってみる

 服部半兵衛は思う。

 あの女、鏡有栖は狂人か否かなら、間違いなく狂人に分類される。

 無抵抗な人間を痛めつけることや、自分より弱い人間を殺すことには抵抗があるくらいには、一般的な倫理観を持ち合わせてもいる。

 だが同時に、どうしようもないくらいに死合いが、自分が命を賭して戦うという行為に、無意識に悦びを感じてもいるのだ。自分と対等な相手との戦いを常に求めている。

──そのことに対して、どこか後ろめたく想ってもいる──

 ようするに、どうしようもないくらい面倒で厄介な性格をした、戦闘狂だということだ。



 鏡有栖は、その後異能対策課に戻ってそれなりの時間書類と格闘してから、自分に与えられた宿舎に戻った。御影県には、異世界人に対して一時的に宿舎を貸し出す制度がある。もっとも、同じ異世界人でも異能が使える人間と使いない人間で、宿舎の建物が分けられている上に、ここはこの世界に順応しようとしている人間でないと貸し出し期限が延長されない。

 鏡有栖も、もうじきここを出ることになるだろうが、それは彼女が生活基盤を整えるだけの能力がある、と判断されたからである。

(家に帰ってから、特にやることがあるわけでもないが……)

 とはいえ、アストラルローブを着る必要があるのだが……御影県でローブ姿で出歩くのはやはり目立つ。ぎりぎりまでローブはバッグに入れることにすれば、そういったことで時間がかかるものだ。

 確認のため、半兵衛から渡されたカードに触れる。魔力を通せば、世界の法則を塗り変えられるという革新が胸に満ちた。

「魔術が使えない、ということはないな」

 これについては、精神的な安定を得るための儀式という側面が強い。別に紙であれば魔力を込めて世界の法則にアクセスすることは出来る。カードであることの重要性は、制約と誓約による異能の強化……()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()……とでもいうべきものだ。

 書かれている文様、そして紙の材質に問題がなければそれでいい。紙の材質が雑なら話は別だが、この世界で紙の質が雑だということはまずない。唯一、自分の体調で異能が弱まるということはありえるが、それも今確認して特に問題はない。

 その確認行為が、自身の精神を安定させる。ようするにルーティーンだ。

(また明日、兎の顔を見る。そう思うだけで、生き残る意思が湧くのは、なぜだろうな……)

 生きる気力は戦いにおいて、重要な要素だ。それを失った者に、紙一重の戦況で勝利を掴むたけの気概があるわけがない。


──いくか……それに戦いになるとは限らんしな──


 おそらく、そんなことはないのだろうが……と思いながら。

 森野兎の勘はよく当たる。彼女はこの転移でくる存在を、あまり好意的な意識を感じない、と表現していた。ゆえに、十中八九戦いになる。


──森野の勘、異能に対する洞察力などは、おそらくは異能に類するものだ──


 確認することが非常に難しいので断言は出来ないが──とは紬雷花の言葉である。たしかに、勘をいざ確認しようとしても、証明は出来まい。

 だが、いままで異能や異能を操る者に対する異常なまでの勘や洞察力は、ほとんど外れたことがない。だから、異能対策課で森野兎の言葉を無視する者は存在しない。

 彼女の言葉は当たるということを前提に、話が進められる。

 今回も、おそらくは当たっている。いや──

「これは、残念ながらようこそとはいえないだろうな」


 それは、広い広場の中に()()()()。回りは幸いにして、重要な建造物の類などは見当たらない。主に星あかりと、遠くの家々の微かな灯火が広場をわずかに照らしている。

 そこにいるのは、巨大な亀といっていいだろう。全高ですら2mを超えている亀など見たことも聞いたこともないが。

 そもそもそれ以前に……だ。顔の部分に鼻と口がなく、ただ大きな一つの目玉があるだけな生き物を、亀などとはいうまい。

 嘆息する。まだ確証があるわけではない。だが、戦場で感じたことのある気配がこちらを包んでいる。

「好意的でない……甘い言い方だな。殺気を感じる……いや──」

 言いえて妙な話かもしれない。確かにこいつからは、好意的な意識などは感じないだろう。

「そもそも知性さえロクにないのであれば、好意的な意識など感じるはずもない……か」

 これはロクに何も考えていない。今こちらに殺気を向けているのさえ、おそらくはただ邪魔だから潰す程度にしか考えていない。


──まあ、であればコチラも相応の手札を切って対応するだけだが──


 そして彼女は、表のカードを五枚自分の手に取る。はたして楽しいゲームになるかどうか。有栖は手札を見ながら思考を始めるのだった。

AからKまでのカードといえば、トランプが思い浮かぶが……

まあトランプを参考にして、地水火風の属性を使うことを思いついたというわけです

表のカードルールはまず五枚を手に取るところから始める。

と思いきや裏のカードルールも五枚とるところから始めるんだなこれが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ