ようこそ、異能対策課!
なんか急に主人公がデレデレし始めてますが、出会ってから結構時間が経過している設定なので許してクレメンス
あと、鏡有栖という名前は御影県から与えられた身分証明の物なので、御影県では本名の扱いである。
私の兎は今日もカワイイなぁ……と鏡有栖は真っ昼間から森野兎の顔を一心に見つめながら思っていた。
「あ……あのぅ……」
森野兎は純日本人といえる、黒目黒髪の美少女である。小柄であり、普段はどこかおっとりしてみえる。黒髪は動きやすさを優先してはいるが、肩ぐらいまではあるので極端に短いわけでもない。黒い目は黒曜石を思わえる輝きをたたえている。本当に若干だがタレ目なのを気にしているようだ。
なお身長の割には胸の山の主張が中々だ。カワイイ。そして、相も変わらず兎は照れている。私が私の兎を愛でるなど日常茶飯事だというのに、なぜそれに慣れないのだろう。そこがまたカワイイ。
「おい、鏡。完全に戦闘特化の嘱託職員であるお前と違って、私たちは通常の業務もそれなりにあるんだ、あまり森野の邪魔をするんじゃない」
「紬か……私は兎を愛でるという崇高な仕事をしている、それを邪魔するんじゃない」
「お前は一体なにをいっているんだ……?」
紬はなぜか若干戦慄すらしているようだ。なぜかは知らんが
紬雷花は、腰にまで届くような黒髪と、深く吸い込まれるような暗闇を凝縮したかのような黒い瞳を持つ、長身の美女である。スレンダーなモデルじみた体型を持つ・若干ツリ目で切れ長の瞳が冷たい印象を与えこそするが、森野兎などの後輩に対する面倒見はいい。ついでにいえば、基本的に自分の雇用主として命令を出す立場でもある。とはいえ、その自分に軽口を許しているのだから、有栖とて別に彼女のことを本気で嫌っているわけではない。
だが、森野兎が自分が若干タレ目がち見えることや、兎自身が小柄なことをコンプレックスに思っているためか、紬のような長身で聡明な女性に憧れていることを知っている。それが悔しいのだ。とはいえ、他の異能対策課の連中の大半は、鏡有栖に対して過度に及び腰である。それを思うと、雇い主としては付き合いやすく、しかも森野兎に好かれている彼女にあまり過剰に反抗すると、兎の自分への好感度に悪影響が出るかもしれないとなれば、まあ譲歩せざるをえまい
「だがまあ、兎もそこそこ仕事で忙しいようだからな……ならば今日のところは自分の仕事を済ませることにするかな」
だが、実は森野兎や紬雷花が別にそこまで忙しいわけではないのは知っている。というより、ここが異能対策課である以上は仕方がないことだ。いくら御影県では公務員に属する扱いを受けているとはいえ、異能対策課に属している人間は、異能に対抗するための人員である。
つまり、異能に類する事件が起きれば警察より優先的に出動する義務がある。である以上は、デスクで一日中書類と格闘しなければならないような仕事を割り振られては困るし、実際にそこまで仕事を割り振られるわけではないのだ。
とはいえ、暇を持て余して遊びに耽ることが出来るほどではない。だからこそ、ここはひくことにする。
それに自分にも仕事がないわけでもない。もっとも、異世界出身の嘱託職員な時点で出来るだろう仕事が絞られてしまうこともあり、自分にいたっては昼から出勤して仕事量を確かめることからはじめるのだが。
「……そのことなんだが。自分からいっておいてなんなんだが、鏡には別のことを頼みたいと思っている」
「……異能関連……今からか?」
「いや、予測では今日の夜らしい。詳しいことはこの書類に書いてあるが、今日のところは半兵衛の所で仕入れをしたあとは、早退してもらって構わん」
ふーむ、なるほど。そう思いながら今日の自分に割り振られた仕事を見る。紬は今日は早退していいとはいっているが、基本的に早退した場合に自分に割り振られた仕事は、よほど期限がギリギリでない限りは自分で処理する決まりになっている。そう考えれば……だ──
「まあお言葉に甘えて早退はさせてもらうが、キリのいい時間までは書類の方と戦闘するとしよう。明日が怖いからな」
「そうか。悪いな」
「構わんよ、給料を貰っている以上は、相応には働くさ」
そう紬に返答したときには、彼女の顔には森野兎に見せるものとは異なる笑みが浮かんでいた。
──己の獲物に足る存在と戦うことに歓喜を覚える、魔術を生業とする戦闘巧者としての顔である──
その顔の凄絶さと美しさに、思わず顔を赤らめて魅入ってしまっている森野兎が目に入らなかったのは、鏡有栖にとって幸せだったのか否なのか。それは分からない
なお、どうして主人公と森野兎がこんなに仲が良くなったのか、特に有栖がどうしてここまで兎にデレデレしているかは、あとになって判明する予定です
予定は予定ですが、いつかは明言していない。つまり……ry(