初配信
「皆さん、ごきげんよう。双樹チャンネルへようこそ。私の声は届いていますか? 見えていますか?」
それが私の配信の開始挨拶。
コメント欄は動かない。告知もしていない早朝からの配信だから当然だ。
深夜勤務の受付で潜入登録を行いダンジョンへと入った。深夜と早朝はあまり潜る人は少ない。
今も私しかダンジョンに居ない。
エンカウントする魔物は大人の膝上くらいの高さの魔物だから蹴撃が中心になっていく。
「スライム。粘性と軟性魔物。体の一部を伸縮させて攻撃をしてくる。その時の硬度はコンクリート並みに増す。防御時はその粘液に武器や攻撃者の身体を呑み込み、溶かす」
けれど――
魔力で武器や身体を包んでバリアを張れば簡単に魔石を壊せる。スライムは魔石で小遣い稼ぎよりも経験値稼ぎに。それでもスライムの魔石でも小遣い稼ぎをしたければスライムの粘液体を蹴散らして魔石を素早く奪い、自分の魔力で魔石を染め上げると粘液体は魔石に集まれず、スライムの粘液と言うアイテムになる。
単純にスライムのHPと防御力を上回る攻撃で蹴り飛ばせば粘液体が弾けてスライムは死ぬ。
そこで必須なのが攻撃スキル。魔力を帯びた攻撃。
私の攻撃方法はスキルがロックされている探索者の方法。
私は新たなスライムを踏み付けて転がす。スライムがプルプルしているのは私の足を押し戻そうと攻撃―身体の一部を硬くさせて居るから。
足で捏ねくり回していると新たな魔物――ハダカデバネズミ型の魔物が現れた。
捏ねくり回していたスライムを蹴り、砲弾としてハダカデバネズミにぶつけた。
ハダカデバネズミはスライムの粘液に溶け、スライムはHPが消し飛び粘液と二つの魔石を遺して死んだ。
「通常は魔力バリア、身体強化ともに魔力放出系は魔力量に依存し、特に身体強化は身体に負担をかけ体力消費も激しい。 放出力が最大戦闘力だと勘違いしているけど――」
魔物を蹴散らしながら【探索】で最奥にあるボス部屋へと辿り着く。
扉を開くと眼前には地底湖の様な光景が在った。
【索敵】でその地底湖がスライムの集合体だと分かる。
「敵名エンペラースライム。基本攻撃は普通のスライムと同じ。ただ威力が桁違いなだけ。恐れる理由は無いかな」
私がボス部屋に入り、エンペラースライムに近付くと、地底湖が盛り上がり、アクティブ形態へと姿を変えた。
「道中のスライムと違うのはその巨体からの物量攻撃――」
巨体から繰り出される連撃を躱す。
「――武器や防具でパリィする事は出来るけれど、武器、防具の切れ味、耐久値は減っていくけど、避ければノーダメージ。でも躱すだけじゃあ撃破は出来ない。全属性揃えた魔法士構成のパーティーだと属性変化に対応して魔法攻撃出来るけれど――」
クランならともかく少数のパーティーだと全属性揃えて後衛編成はバランスが悪そう。
ソロだと全属性は経験値振り分け効率悪そう。
――天剣流 戦技[五月雨]。
エンペラースライムから伸びる触腕攻撃に拳連撃を中て、迎撃破壊していく。
浸透勁拳撃によって吹き飛んだスライム片が再生出来ないほど弾けていき、エンペラースライムを弱体化させていく。
「攻撃で再生出来ないほど木っ端微塵にすればご覧通り、エンペラースライムの手数が減っていき、最終的には――」
触腕は蔓の様になり、それを払いのけてエンペラースライムを踏み潰す。
魔石がぬるんと飛び出して、エンペラースライムは討伐完了となった。
エンペラースライムが収まっていたクレーターの底に宝箱が一つ。
開けてみるとグローブが入っていた。
[シーカーグローブ]
HP+200
攻撃力20
防御力15
素早さ+8
シーカーは探求者の意味だ。
私は初心者の革のグローブからシーカーグローブに装備を変える。
単独撃破とそのボーナス経験値でレベルも上がった。




