魔精霊
アルシェさんが遺跡調査の許可を貰い、私たちは翌日から遺跡を探索することになった。
遺跡に入ると、そこには、報告通りの崩れた食堂があった。
くわぁん、と一瞬、平衡感覚を失いかける。
蹈鞴を踏むも何とか転倒だけは免れる。
「なん、だ……これは……」
「精霊……なの?」
アルシェさんとリーゼが呟く。
私たちの目の前には、リーゼ曰く精霊が学生生活を営んでいた。
『忌々しい。惑わされてはなりません。これは嘆きの果てに変質した精霊の見せる未練に過ぎない』
私たちは物陰に隠れて様子を見る。
翠の精霊女王が腕を払うと疾風が駆け抜けて、変質した精霊の未練とやらを薙ぎ払うと、学生の真似事をしていた精霊の姿が色を失い、形を失い、様々な色を混ぜたかの様な気味の悪い漆黒の精霊だったモノへと変貌した。
『学生の念が転写されたり、学生の嘆きをと精霊が同化したモノがあの無貌の精霊です』
それはつまり――
「――エンプティ」
『そう。アレこそただの力の塊となった精霊――【清浄なる世界の理】が求める魔精力です』
翠の精霊女王がリーゼの呟きに答える。
「忌々しいと思ってる精霊の力を何故欲するの」
『対精霊部隊――鬼兵となる人間でも精霊でもない者を製造する為に欲するのです』
「……エクレール公女殿下たちは此方を見て亡霊系の魔物と判断した上で探索を続けたんだ……」
「続けられたのは聖力使いだからだろうが、斬りかかった護衛が悪夢を見たのは災難というしかないだろうな」
「どうしますか?」
「悪夢は終わらせてやろう……」
リーゼが蝶のように舞、蜂のように魔精霊を斃せば、アルシェさんの流麗な呪文が紡がれ、精霊術が放たれる。
私は出遅れたものの魔精霊を退治する。
掌に魔精霊の結晶。
「……浄化して精霊力を流したら新たな精霊として生まれ変わらない?」
『……結晶は死骸と思いなさい。ですが、悼んでくれてありがとう。私の枝族の精霊です。先程の鬼兵ですが、その結晶を移植するのですよ。そうすれば精霊を蝕む力が手に入れられる』
精霊を捕らえ、わざと狂わせて魔に堕す。
そして結晶を抉り出して人間の心臓に移植する。
まだ消滅していない魔精霊は結晶を取り戻すべく心臓に宿る。
だが、人間の心臓が肉体が檻となって、移植された人間と同化していく。
そうして鬼兵が製造されていく。
中には力を求めて精霊結晶を喰らう者も居る。
――それ私の本当の父親の事でしょうね
私は悪用されないように砕く。




