何者でもない者の正体と地下に眠るもの
私がキャンピングカーへと戻るとアルシェさんとリーゼが起きていた。
リーゼが目を覚ました時、隣に寝ていた筈の私が居ないから慌てたようだ。
しかし、リーゼの気配にアルシェさんも起きて、二人の契約精霊が理由を話すと、キャンピングカーで待機することに決めて私が戻るのを心配しながら待っていた、と言う。
「ごめんなさい」
心配と単独行動に対して謝ると、私は経緯を語ると同時に渡されたダガーを見せる。
「【エンプティ】に精霊殺しの禁呪が刻まれたダガーか……」
「……【エンプティ】は“何者でもない者”または“奪われた者”の組織だ。元々は【清浄なる世界の理】が作り出した対精霊部隊だった」
アルシェさんの“作り出した”と言う言葉が気になった。部隊なら設立と言わないだろうか?
そう問うとアルシェさんは言った。
「全ての精霊が良い精霊とは限らない。そいつらは――魔精霊は肉体を得る為に、精霊核に還ったのさ。それを孤児に植え付けた。だが、そのなかの一人が尋常ならざる力を得てしまってな。孤児たちをまとめあげて出奔した。それが世を恐怖に陥れた初代魔王――マユミ・センヴァーリアが斃した魔神憑きの魔王だ。【エンプティ】は魔王の配下――工作員だ」
【清浄なる世界の理】は人間主義。アールヴたち精霊種を亜人と見下すのは人間主義だからだ。
精霊の撲滅を目指し活動しているのに対し、【エンプティ】は世界の改竄を目的としている。
改竄は今在る人々、文明を殺す行いだ。それには自分たちの存在も含まれている。
「じゃあ、彼方此方で啀み合わせているのは?」
「……魔神、魔王と言えども世界を改竄する力なんてありません」
私の問に答えたのは静観していた翠精霊だった。
「負の感情を吸収し、溜め込んで動力とする【星理漂白魔導兵器ラメントペレデ】。マユミが地の底に封じ、隠すしか無かった兵器です」
思わぬ所で、謎が一つ解けた。
アルシェさんとリーゼも絶句してしまっている。
「……本来ならば貴女たち自身の手で真実を見つけ出して欲しかったのですが……奴等の方から、マユミの娘に接触をして来た」
「彼奴はその事を知っていたと思う?」
「それは判りません。しかし、貴女だけに接触をして来たのならば何かしら理由がある筈です」
次は見敵必滅を心掛けないと。
謎は解けた。しかし考えなければならない事は増えた。
眠れるか分からないけど、移動の為にもう一度眠る。




