エピローグ
法剣武闘大会で優勝した翌日、起きて直ぐに食堂に降りる。
「あ、ソウジュさん」
「ミリアおはよう」
「おはようございます。ソウジュさん」
「ダンさんユウリカさんおはようございます。たまごドックと、トラウトサーモンマヨドックお願いします。ホットミルクで」
かしこまりましたと、ダンさんがゆで卵を作り、トラウトサーモンを焼いて、ユウリカさんが黄身を解し白身を小さく切り、トラウトサーモンの骨を取り除いて身を解し、ミリアがマヨネーズと混ぜていく。
ミリアがお待たせしましたと運んできてくれる。
ありがとう、頂きますと、言葉にしてたまごドックを食べる。
黄身がマヨでトロトロと言うかドロドロ濃厚黄身マヨ。それがぷるぷつとした食感の白身に絡んでいるのが私好み。こく砂糖が引き出し、味を引き締めるのは微量の芥子。
焼いて香ばしさが出たトラウトサーモン身解しマヨ。塩、コショウ、東国の豆醤――醤油少々、コクだし砂糖少々、引き締めの芥子。
因みにリーゼは昨日のダメージが尾を引いていて未だ眠っている。アルシェさんは冒険者ギルドで出立の報告。
「ソウジュさん」
「はい、何でしょうか?」
「あの、よかったのでしょうか……優勝の賞状をお店に飾っても……」
「本当にウチの設備に賞金を使ってしまうのかい」
「カツ料理に説得力が出ますから構いません。賞状がこれから迷惑もかけるかも知れない。だから作り置きが出来て、時間経過が起きない料理保管箱が必要です。マヨネーズや他のソースも劣化しない様に」
夫婦とミリアが深々と頭を下げる。
「頭を上げて下さい。私が美味しい料理を食べたいだけですから」
ホットミルクを飲みつつまったりしていたら、店の対岸で怒号が響いた。
「何事だっ!!」
「ダンさん落ち着いて。料理に虫でも入ってたんでしょう」
「な、え? あ! まさか奴ら本当に料理に虫を願掛けだの縁起物だのといってまぜたのかっ!?」
「ありえないわ。普通に冷静に考えればアレを料理に混入させるなんて……」
二人が戸惑っている。まさか大商人が与太話を信じて実行するとは思っていなかったようだ。
「私の所為だね。私が余りにも強すぎた。冒険者は敗北し、死ぬっていう噂を流して、不正までしてゾンビドラゴン出したのに、私が斃しちゃったし、その前の優勝宣言もあった。そして優勝した。冒険者は思うだろね。自分は雑魚じゃないって。そしたら此処に食べに来るし、泊まる者も現れる」
「だから、ソウジュさんの案を……」
「説得力を持った。使わない手は無い」
その結界が表の騒ぎだ。
治安隊が出動して来た。
タリアさんが店に来た。
「失礼する。久しいね。表の騒ぎの元凶が貴女だと喚いていてね。事情を聴かせてもらえないか」
私は事情聴取に素直に答える。
この店でこの店の回復の為の案で与太話だと言う事を。
「誰もいなかった……か。隠密スキルだな……密偵が勝手に持ち帰って、カモーリ・マッカー氏が与太話案を盗り自身の案だと採用し、作らせたと。自業自得、商売上の敗北と言うだけではないか馬鹿馬鹿しい。時間をとって済まないね。これも規則なんだ」
そう言って戻っていき、治安隊のメンバーに話、撤退していく。まぁ逆上したら此方に来るよね。でっぷりとした男が向かってくる。
「道を渡る時は左右を確認しましょう」
馬車に撥ねられた。
「アレは貴族の馬車だな……その走行を邪魔をした……許されない、だろうな」
ダンさんの言葉通り、大怪我を負い、瀕死かも知れない相手に回復薬液を飲ませて、詰めている。
申し訳程度に回復した男は血の気が失せ、精神的に死にかけている。
その後、私たちがセンヴァーリアの町を出立する頃には店は硝子が割られ、扉は蝶番から外れかかっていて、店内も荒らされている。商人一家は夜逃げしたらしい。主人を置いて、持ち出せるものは全部持ち出して。




