リーゼの場合 決勝
アルシェさんの研究の成果と、私の契約精霊――翠の始祖精霊エメラルディアから語られる勇者センヴァーリアの天剣流。
その本家本元の天剣流の使い手であるソウジュと武舞台で対峙する。
試合の開始とともに私は後方へ飛び、距離を取る。
ソウジュは私を追って駆けている。
――反応が早い! 読まれていたっ!!
しかも矢鱈と緩急を付けて駆けてくる。その緩急があり得ないほどの分身を生む。
『天剣流走破術 貪狼よ』
エメラルディアが技を教えてくれた。けれど対処法までは教えてはくれない。
――自分で見破れってことね。
これがスキルでも身体強化でもないって何の冗談よ。素なのでだから恐ろしい。そうも言ってられないのだけれど。
――本物がどれか見極めないと。
「っ!!」
ソウジュの一体が拳を引き、拳撃態勢に入るのが見えて、私の身体が迎撃しようと反応してしまい、態勢を自ら崩してしまった事に気付いた時には遅く、足払いを受けてしまった。
「つ! あっ!!」
それだけにはとどまらなかった。
ソウジュは足払いの次の攻撃に移る。
倒れる私に[天照]を追撃として放って来た。
「ぉ゙ゔっ!!」
腹部に掌底を受ける。身体が爆砕されたかと錯覚するほどの衝撃が背中側で起こる。
だからと言って腹部が痛くないわけでは無い。
まずい、と感が警鐘が鳴る。
ソウジュが美脚を振り上げていて――
「これで落とす」と試合の終わりを告げてくる。
――悔しい……。
「[落陽]」
天剣流 貪狼から荒波、天照から落陽。流れるような技の連撃。
――負けたくない。
負けん気に火が着く。
「風よ」
脚を振り上げたソウジュの足下から風が吹き上がり、彼女の攻撃は不発に終わり、姿勢まで崩している。
「破っ!ぐぅ……っ」
二段構えの技。鞘での攻撃から抜刀斬撃に繋ぐ[羅睺]。鞘打ちは防がれてしまったけど想定内。抜刀して弧を描き――だが、身体は衝撃が抜けておらず円滑に斬撃へと繋げられなかった。何故ならソウジュに手首を掴まれて攻撃を止められたから。
自分に落胆と、本人から天剣流を学べたソウジュに嫉妬。
「何も無いところから研究と研鑽を重ねて、真に迫る……凄いよ。リーゼ。本当に凄い」
ソウジュは無駄ではないと言ってくれる。
真に迫ると言われて無駄では無かったと思えた。
私たちはただの斬撃の連撃と、拳撃・蹴撃の連撃で戦いはじめる。
武舞台全域を目まぐるしく駆け、激しい攻防を交わす。
ソウジュの蹴撃を風を纏い飛び躱す。
それが間違いだった。
ソウジュは空振りした勢いを回転力を加えた拳撃に変えた。
「戦技[五月雨]」
目にも留まらぬ打拳雨。
それでも負けたくはなくて鞘で迎撃するも、私の防御が遅れ始める。
精霊力の防護膜が剥がされていく。完全に防御が間に合わず打たれる。
「きゃ、ああぁぁああっ!!」
こんな悲鳴をあげたのはいつ以来か……。
地に倒れ、それでも立ち上がり、ソウジュに問う。
「それが、さっき私がソウジュを浮かせた時の、最適解ってわけね」
「答えの一つかな」
「そう……」
あの時、私が万全なら私のも最適解ってわけね。
それよりも、とソウジュは笑いながら、私の攻撃の方が相手をフルボッコに出来て気持ちいいでしょう?という。
貴女何を溜め込んでるのよ。怖いわよ。
私の余力も少ない。だから勝負に出る。
刀を担ぐように構える。
「破軍で私に挑むんだ」
ソウジュが獰猛な笑みを浮かべる。
貴女が言ったんじゃない。破軍星を背にすれば必勝を約束され、向かい挑めば必ず敗れるって。
「気づいたみたいだね」
「貴女、背負ってるじゃない。あの激しい攻防の中で剣星図を描いていたのね」
そうだよ、とソウジュが私を見据える。
仕掛けたのは私。8度のの斬撃と迎撃。最後の突き技は躱され反撃の突き技を食らって一点集中の防護膜が破砕され、私は気を失った。




