幕間2
リーゼの試合を見る。
センヴァーリア天剣流の戦技は使用していない。
身体強化と風を纏った速さで相手を翻弄する戦い方だ。
防護膜という精霊力のバリアを張っているから軽装でも大丈夫なのだとか。
リーゼの愛剣は豪壮で厚みのある刀身だ。
「同田貫っぽいんだけど……」
対する相手は直剣で天煌覇流剣術という戦技を惜しみなく使っている。
「ああ、なるほど」
「どうした?」
私の隣で弟子の試合を観戦しているアルシェさんが私の呟きを聞き、尋ねてきた。
因みに此処にはギルマスとフレイヤさん、辺境伯一家が揃っている。
「センヴァーリア天剣流だけど、開祖の性格が出てるなって」
「どういう事だ?」
「センヴァーリア天剣流は神速の、それも一対多の戦術。リーゼの戦い方と修めた剣技は確かに源流だ。対して相手の天煌覇流戦技の使い手は常に一対一の一撃必殺の戦技が多い。そこから雅流は連撃の流麗さを重んじてるはず」
貴族の三男という男が連撃を繰り出した。
「でも、遅いし、その場付近での連撃に意味はない。煌覇流も雅流も私から見れば児戯だ」
私の言葉に皆がギョッとする。
「ソウジュさん……何故児戯だと言えるのです?」
辺境伯ガナッシュさんが若干ピキッて尋ねてくる。
「身体強化なしレベル強化されたステータスを封印して、地面に付いて引き摺るほどの鉢巻をして、それを引き摺らずに走れます? 戦技を行えますか? 言ったでしょう。天剣流は神速の戦技だって」
私は雅流を習っているだろう御子息を見る。
「……先生はその様なこと、仰っていませんでした」
「ああ、俺も師匠からは習ってねぇな……」
「児戯だなんて言ったけど、私が言ったのは煌覇流だの雅流だのと分けてるからだよ」
リーゼの速さに翻弄されるのは技の打ち終わりに空白が生まれるから。
リーゼの相手が[星環―巡ー]らしき技を使用する。終わる。確かに連撃だけど単発。次の技に移るその一瞬の空白をリーゼが攻めて三男は敗れた。
次の相手が[天照]らしき技を使用する。躱され、着地の隙をリーゼに狙われて負けた。
嫌な予感がする。
「ガーリッツさん……もしかして、天煌覇流と雅流の戦技って、単発の必殺技スキル……じゃあないですよね」
ガーリッツさん、フレイヤさん、辺境伯一家が思ってもいなかった齟齬に気付いた表情を浮かべる。
私も驚きだよ。
「嘘でしょう……」
「因みにだがな源流はスキル化はされていない。スキル化というものはな――」
アルシェさんが精霊力を収束させるとスクロールが顕れた。
「師匠クラス持ちが弟子にスクロールを渡す。すると弟子はその技を覚える。だが、出来る感じがする程度だ。その出来る感じがする程度のスキルを使用し、経験値を溜め、スキルレベルを上げていくんだ」
そうして熟練度がMAXになってはじめて自分の技になるという。
アルシェさんは師匠のいない源流を研究していて、最適解に持っていく試行錯誤をてようやく身につけた技だ。だから弟子のリーゼも教わるのにスキル化を求めなかった。
だったらスキルを繋げれば、と言ったら技後硬直で無理だと言われた。その技後硬直も熟練度で長さが変わるという。
そこから先は口にする事は無いかな、と口をつむぐ。
私は花摘みと言って部屋を出る。
「タイミング良く次の技を出すコンボなんて常識じゃないかな」
まぁ……他人は他人。常識が違った。それだけだ。
だから、上級冒険者だろうが手を抜く事に決めた。
天剣流で迎え撃つのはリーゼだけだと決めた。




