幕間1
ルーキーズトーナメントが終わって、宿へ戻ると【シルヴァラ】のメンバーやアルシェさんリーゼから労われ、ダンさんユウリカさんミリアには心配された。
「なあ、嬢ちゃん。嬢ちゃんの故郷では料理に縁起物として虫を入れるのかい?」
「そうだよ。特に黒い触角のアレ。アレって一匹見れば数匹居るって言いますよね」
「あ、ああ……」
ダンさんとユウリカさんは引いているし、ミリアは嫌だぁって言ってるし、ブランさんはマジかコイツみたいな顔で私を見る。エリナさんは微笑んでるのに目が笑ってない。ロビンソンさんは弓をメンテナンスし始めた。
「そこから子孫繁栄に転じた縁起物として尊ばれたんですよ」
私がニコリと話を締めくくるとアルシェさんが皆に信じるなよ、とネタバラシをしてしまう。
「よく、そこまで出鱈目を思いつけるな」
ウソなのかっ、と皆が私を見る。
「外に此処を潰そうとする連中の密偵がいたのよ。だからウソの情報を持ち帰らせたのよ」
「本当に採用したら正気なのかと疑うような話なんだがな」
皆がアルシェさんの言葉に「だよなー」って空気が弛緩する。
夕食にパンとひき肉とひよこ豆、野菜のコンソメスープを頂き、部屋に引き上げる。
翌朝は勝ち残った者でトーナメント試合に出場する為にダンさんとユウリカさんにかつサンドを作って貰い、会場に行く。
昨日と違ってトラブルも無い。むしろ私がゾンビドラゴンを斃したことで、験を担ぐことを良しとする冒険者が、かつサンドを気にしている。
「うん。ごちそうさまでした。これで今日も余裕で全勝出来るね」
ニヤリ、と笑みを浮かべて新人冒険者たちを見ると、目を逸らされた。
おいおい君たち、ドラゴンスレイヤー目指してるのに、ドラゴンスレイヤーの挑発から目を逸らしたら駄目でしょう。
まぁ……色々考えたみたい。工夫をこらした戦い方をしてた。
足下が疎か。脚を刈ってやったりブロックして回転させてやれば終わった。
相手は一瞬何をされたか解らないような顔をしていた。
私は新人の女性冒険者に囲まれて、先ほどの技を教えて欲しいと頼まれ、通りかかったシュリカにも是非、と頼まれた。
冒険者ギルドとしても冒険者の僅かでも生存率が上げたいとのことだ。
女性冒険者は男性冒険者から下に見られている。
女性特有の日があったり、ステータスが低い時は筋力や体力で劣るからだ。
それを乗り越えてこそ、名のあるパーティーになるというものだけど、逸る新人男性冒険者はそれがまどろっこしく感じるようだ。
私は条件をつけた。先ず始めは上手な受け身の取り方から、と。
授業でもスキーでも受け身や倒れ方から学ぶもの、だよね。
頭から地面に落とせば、倒せば大抵死ぬ。だから上手な倒れ方、倒され方をしなければならない、人形を使い破壊して見せて、心を込めて繰り返し説明した。
殺って見せ、言って聞かせないと、納得して動かないよね。
頭が壊れた人形が自分になる、なんて嫌だろうし。
ちらほらと、ギルドの女性職員や受付嬢まで混ざっている。シュリカが手を振っている。可愛い。振り替えしておこう。
皆受け身が上達した所で技に入る。
「お疲れ様でした。ソウジュさん、ギルドの申し出を受けて頂いてありがとう御座いました。ギルマスより、報酬が出ています。現金にしますか? それともお預かりにしますか?」
「じゃあ預かりでお願い」
「では冒険者登録証をお願いします」
私はタグをシュリカに預ける。
記帳が終わり、シュリカは奥へ下がる。汗を流しに行ったのだろう。
私も宿へ戻る。




