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法剣武闘大会 予選

 ――顕れたのは、鱗が剥がれ落ち、肉体は腐り、血液が毒液と化したドラゴン――ゾンビドラゴンだった。


 ゾンビドラゴンの醜くも恐ろしい姿に観覧者は悲鳴をあげ、席を立ち一目散に出口へ向う。


 考えることは誰もが同じで、出口は何処も詰まって閉まって逆に身動き出来なくなってしまっている。


 警備の冒険者の注意の声も虚しい。誰の耳にも届いていない。


「どうですか? 恐ろしいでしょう? 弟の足に口吻して許しを請うなら、フェーダードラッヘを下げてさしあげましょう。いかがです?」


「誰が捧げるか。お断りよ。気色悪い」


「そうですか! ではドラッヘ殺ってしまいなさいっ!!」


 億劫そうに地に伏せたゾンビドラゴンが頭を擡げる。

 ダバダバダバと滝のように血が落ちる。地面がシュウシュウと音を立て溶ける。


 大きく口が開かれ、大気の魔力が吸われて溜められていく。

 

 魔力が高まり、ゾンビドラゴンが発する威圧感がビリビリと肌に伝わって来る。


「ソウジュ嬢ちゃん!!」


「ブランさん駄目だっ!!」


「ソウジュちゃん!?」


「今、武舞台に降りたらコイツ観覧者に向けてブレス撃たせるよ」


「よくご理解なさっているではないですが! えぇ貴方方【シルヴァラ】だけではなく、他のクランが助けに入るなら、容赦なく観覧者に狙いを定めます」


「オン ソチリシュタ ソワカ、オン マカシリエイ ヂリベイ ソワカ」


「ん? んん? なんと言ったのです? 命乞いならはっきり聞こえる様に言いなさい」


 お母さんに教わった文言だ。怖いとき、魔が手を差し伸べて来そうな時は唱えなさいって。

 そうすれば妙見さんがその破邪の剣で怖いものも魔も討ち払ってくれるって。


「では、ご希望通りに、私がさっきから呟いていた文言はね。破邪顕正の剣――人々に降りかかる厄難や災いを斬り払い、邪悪を斬り裂く呪文!!」


 右手に破邪顕正の力を溜める。青白くとても清らかな力だ。

  

「ドラッヘ!! や、殺ってしまいなさぁぁああいっ!!」

 

 カッとゾンビドラゴンの口内が光り、魔力の奔流が迫る。


『避けろ』と異口同音の声がした。


「フバーハハハハッ!! 良ければ後ろの観覧者たちは消し飛びますよっ!!」


「オン ソチリシュタ ソワカ、オン マカシリエイ ヂリベイ ソワカ……破邪顕正――」


 引いた手を突き出す。


 練環発勁氣功破の破邪の力を加えたバージョン。


「――霊光破軍!!」


 魔毒砲と霊光破軍がぶつかり、凄まじい衝撃が周囲を襲う。


「なはーっ! はっはっはっはっはっ!! な゛にぃっ?! な、何だとっ!? わ、私のドラッヘの猛毒ブレスと同等の魔法で迎え撃っただとぉっ!!」


 高笑いから目を剥いて驚く浮かれポンチ。

 だけど――


「ぐっ……こ、の……っ」


『ギャオオォグラアアァァアアッ!!』


「わ、私の力……が、呑まれてる……」


 ズッ……ズリ……。


 霊光破軍は一瞬拮抗しただけでゾンビドラゴンの魔毒砲に呑み込まれていく。

 

「く、ぐぅ……押し負け……る……」


 即席の破邪の力が通用するなんて思ったのは甘かったかな。


 それでも必ず勝つって約束したんだ!

 ヒーローは負けないっ! 約束は守る! 裏切らない! そして必ず勝つ!!


 押し込まれて、右足が地面を抉る。


「ぐ……く……ぅ……負け……ない……」


 歯を食いしばる。


『諦めない……ヒーロー……ですか……』


『そうだよ。だから善側で踏ん張って生きてられるんだよ』


 天元さん改め【沙羅】から話しかけてきた。


『変身グッズ持ってるくらいにはなりたかったんだ……。なりたかったものに背くような恥ずかしい姿はさらせないでしょう。ごっこ遊びでもさ、それになろうって思ったんだ』


『だから善性であろうと?』


『そうだよ』


『独りですよ?』


『わかってるよ』


『しかたありませんね力を貸してあげます』


「……私たちは、絶ッッッ対に負けるものかぁああぁぁああっ!!!! 霊光破軍 沙羅双樹ニルヴァーナ!!」


 押されていた身体が止まる。

 崩れそうだった身体が支えられる。

 弾かれそうだった右腕――右手に見えない手が重なり合う。

 霊光破軍の勢いが増して魔毒砲を押し返す。


 高笑いをしていた魔物使いが奔流の余波に呑まれた。


 竜の最期を幻視した。

 フェーダードラッヘ:その柔らかで温かい羽毛は最高級品の素材となる。

 その幼竜はコレクターに高値で取り引きされる。

 主食は野菜、水。

 性格は温厚。


 高笑いの男たちのクランは産卵期を狙った。

 体力を消耗した状態で卵を護りながらこのフェーダードラッヘは戦わなければならなかった。


 私だって素材欲しさに斃して来たから何かを言う資格はない。それを裁けるのは竜だけだ。


 卵を奪われた。あとは親竜の羽毛だ。

 着実に弱っていた。あとはテイムするだけだ。捕獲結晶を男が翳す――前に中間の一人の攻撃がオーバーキルとなって竜は絶命した。激しい怨みを抱いて。

 死体は消えず、ゾンビドラゴンとして蘇った。

 そこを男が呪縛して使役した。私に復讐するために。


 奔流はゾンビドラゴンを消滅させて消えた。


 浄化に消費されたからかな……。

 戦技場は遺跡かってほど崩れていた。

 

 魔物使いの男は下半身が呪いに侵されている。

 

『しょ、勝者ソウジュ!!』


 審判居たんだ。彼はゾンビドラゴンに呪われた男に駆け寄る。


『治癒班、至急治癒班を』


 解呪と回復をさせる為にタンカで運ばせると次の死合を行うため、次の闘者と新たな魔物使いをコールした。

 そして両者が武舞台に立った。

 

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