法剣武闘大会 開幕
この町にも在った戦技場。
その貴賓席の中でも一番良い席――天覧席に領主一族が私たち出場者を見下ろしながら法剣武闘大会の開会式を行い、開幕を宣言する。
初日はルーキーの冒険者は低ランクの魔物との戦いだ。
たどたどしい動きに笑いと野次が飛ぶ。
勝ち残った者は対戦魔物ランクが上がっていく。
調教された魔物が使い捨てられていく様に思うところが無いと言えば嘘になる。
ルーキーは魔物に狩られてしまう前に上級冒険者が魔物を斃して救出する。
それにもブーイングが飛ぶ。
普段は見ることの無い戦闘、血飛沫に観覧者は呑まれて酔っている。
良い戦いをした者には惜しみない拍手とおひねりが飛ぶ。
イケメンよりも朴訥で質実剛健なルーキーが人気のようだ。
シュワっと広がるとんかつの旨み。ソースとマヨがコクを生み出し、辛子が引き締めてシャキシャキとした食感を生み出すキャベツの千切りがかつの重みを緩和させる。かつサンドを選手控室――待機所で、他の出場者の目がある中、これ見よがしに食べる。
「あ、あいつ……舐めてるのか?」
「暢気に食いやがって……」
「だがよ……美味そうに食ってるよな」
「あ……ガーメッツイの奴が行ったぞ……」
かつサンド3箱目を開けようとした時、影が差した。
「おい!アマ! 何食ってやがる!!」
「見て分からないものは聞いても分からないんじゃない? でも教えて上げる。此れは勝運上昇、必勝の祈りが込められた料理。勝利を掴めという料理。その名をかつサンド!! あげないから。欲しければ売ってる場所教えてあげてもいいけど?」
ドヤ顔したら私の手からかつサンドが叩き落とされた。
「巫山戯るなよアマッ!! 此処は闘いの場だ。俺たちは――」
グシャとかつサンドが踏み潰された瞬間、問答無用の[天照]を放っていた。
臨戦態勢に入った他の出場者たち。
「文句があるならかかってきなよ。出番の前に――」
終わらせてあげる、と言いかけた所で名前が呼ばれた。
私が戦技場に姿を現すと観覧席がざわつきどよめく。
まぁ彼らからしたら私なんてベビーフェイスの幼女に見えるでしょうよ。
そんな私が魔物と戦えるのか疑問なんだと思う。
目の前には調教師。
私は礼をするが調教師は結晶に魔力を込める。
召喚されたのは、双角のバイコーン。
初戦のルーキーにはボアや一角兎が選ばれて来た筈では?
「よくも我が弟のテスティスを蹴り潰してくれましたね……完全修復治癒魔法……高く付きましたよ。しかし、それで弟の恐怖が消えることは……言えることは無かったのですよ……女性……とくに貴女の様な幼女に怯える」
幼女という言葉に瞬間的にイラッとしてピキッた。
「怯えて、弟は……弟は……男色に目覚めてしまった……夢に見るそうです薔薇の花びら舞う中、ユニコーンの獣人が弟を愛でる夢を……雄々しい腕に抱かれて安らぎを得る夢を……」
試合始まってるし、話長いし……。
一歩、二歩でバイコーンが動揺からか体勢が崩れた。三歩で私はバイコーンの双角を掴む。振り子の様に身体がバイコーンの顔面へと近く中――[ブラッディレイン・ニークラッシャー(膝蹴り)]を喰らわず。
ガコオォッと戦技場に甲高い音が響く中、バイコーンの巨大がゆっくりと傾き、砂埃を立てて倒れた。
「隙だらけだったから、遠慮なく逝かせてあげた。次は?」
観覧席が静まり返る。いや、静まり返ったのはバイコーンの強さを知る冒険者席の観覧者と、領地と王都を往来する必要がある貴賓席の一部、一般席の極僅かな観覧者だけ。
その他は良し悪しはあれど盛り上がっている。
おひねりが飛んでくるのを感知して、振り返って取る。
今、私に当てようとしたよね?
「くっ、このっ! その余裕面をしていられるのも此れで最後ですっ!!」
結晶が男の手の中で砕けた。
そして顕れたのは――




