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貶めた者に呪いあれ

 菅地すがち 凱矢がいやそれが俺の名前だ。

 容姿?ふ、自分から言うのは躊躇われるが、甘く整ったフェイス。程よく鍛えた均整の取れた身体。


 新学期、俺は俺を囲う女子の生垣の向こうに絶世の美少女を見つけた。

 息を呑む程の美貌。背は小さめか。だが、手足は長くスタイルも良い。何よりデカい。


「君も新入生歓迎会にどうかな? 彼女たちとも仲を深められるし、何よりも部活に入るなら繋がりは必要だからね」


「貴方が男性である限り、女子を侍らせられるほど格好良くても興味ないのでご遠慮させてください」


 静かで透き通る凪い水のように美しい声だった。

 侮蔑が込められた目がゾクリとするほど妖艶で、冷笑を浮かべる唇は甘そうで……。


 だが、俺が振られた、だと……。Natural-born Perfect communication美少女キラーの俺が振られた……。


「は? 千羽、アンタさ、せっかくボッチなアンタに凱矢先輩が声かけてくれたのに何断ってんの?」


仁田ひとだ 陽愛ひまなさん、貴女はそちらの殿方と繋がりがあるのかもしれないけれど、誘いを受ける受けないは私の自由でしょう? それに私、暇じゃあ無いので」 


 どうぞ貴女はご自身が選ばれるよう、存分に尻尾を振ってアピールして下さい。

 そう彼女の目が語っている、ように思えた。


 千羽ちゃんは詰め寄っている陽愛に平手打ちをされかけるも、手首を掴んで止めていた。


「冷静さを失って感情的になって、醜く顔を歪ませる貴女を見れば百年の恋も冷めるでしょうね。貴女が脱落して、貴女の席に誰かが座る。それでも良いなら空いてる手で殴れば良い」


 ヤバい。乱される。


「お、凱矢振られてやがる。凱矢を断わる女子って何気にはじめてじゃね?」


 俺の肩を叩いたのは親友の城田 圭だ。


「ああ、そういう…」


 軽蔑を俺たちに、憐憫を女子たちに向ける。

 完全にヤリ目と勘違いされた、いや強ち間違いではないけど……。


 翌日、俺が新入生に振られた事が広まっていた。それを弄られた俺は彼女を貶めていく噂を流す。


 それは瞬く間に広まった。


          ■


 全校生徒授業の一環で、俺たちはヘッドギア【ElDorado】を使用した。此れはメーカーが無償で体験させてくれた。


          ■


『きーはーはははははっ!! 私の名前は【COCOON】開発者小此見博士である』


 なんなんだ! 何なんだよ此れは!!


『君たちだけに贈る特別なメッセージだ。正式開始日である本日、【ElDorado】を提供したのは、当ラボのアンケートによって、君たちが通う学校の教師含め生徒諸君に幸せになってほしいというアンケート結果があったからだ』


 本来はアンケートで不要な者を決める為のアンケートだと言う。ニート、不登校は恥、自分が伸し上がる為に邪魔、陰キャは邪魔、消えれば面白い、可愛いから、美人だから気に食わない、ウザいから死ね、軽い罰で済まされたから仇討ちの為、報復等々理由は様々だ。


『君たちの鎖骨の間に生命核を施しているので確認してくれたまえ』


 襟を広げ確認する俺たち。特に女子生徒や女教師たちはベアトップミニワンピースだ。生命核が露わになって分かり易い。


『プレイヤーとなった諸君にはこの世界で一生懸命に生きて貰いたい。一生懸命に生き、この世界の魔神を斃すか、我々、運営を壊滅させることがプレイヤー諸君のクリア条件である。だが、手っ取り早いのは、隣人を殺し生命核を百個集めることだ。人を貶めるのが得意な諸君らの奮闘を期待する』


 なんだよ!! 巫山戯るな!! 冗談でしょ? 嘘よ!! 様々な罵詈雑言、嘆きが広場に木霊する。


『プレイヤー諸君の状況はオールドメディア、ニューメディアで報せてある。【COCOON】から接続を断てばプレイヤーは死ぬ、と。だが、残念ながら、我々の忠告は本気にされず、無視され、事故かはたまたこれ幸いと故意に【COCOON】の接続を断った者も居る。1000人から実に142名が残念ながらこの世界からも現実世界からも消えてしまった。因みに、生きている君たちの身体は【COCOON】ごと医療機関、及びホテルに保護されて居る。喜ぶが良い。君たちプレイヤーは家族、知人に“まだ”必要だとされている』


 アンケートに不要だと答えたのが家族や知人では無いことが救いだと小此見は嗤う。


 何で俺が、私がと茫然自失する者、いったい誰が、とこの場に居ない犯人を探す者とプレイヤーが見せる反応は様々だ。


 中でも隣のプレイヤーを警戒し、怯え、睨む者たちが圧倒的に多かった。


 俺のNatural-born Perfect communication美少女キラーが効かなかったのは、俺を、俺たちを恨んでいるのは一人しかいない。


『私を貶めて幸せですか? 私を貶めて得た幸せなら、先輩は何を蹴落としても穢しても必ず幸せになる事を願っていますから』


 俺の身体が突き動かされる。


 俺は親友から圭から生命核を奪う。


「あ……凱、矢なん、で……」


 俺の周囲で女子が悲鳴を上げる。


「お前さえ、お前さえ、俺を弄らなければ……死ねよ、お前にはそう思っていた」


 圭のアバターが砕ける。


 俺は、俺はああぁぁああっ!!


 離脱には周囲が邪魔だ。次々と生命核を奪い逃亡した。


 唖然とした教師は遅い。


 俺は捕まることなく逃げおおせる事が出来た。


 世界観に合わせた衣装を買う。フード付きのコートで顔を隠す。


 橋の下に顔を伏せて、浮浪者を装う。

 朝早くに町を出て魔物を倒して日銭を稼いで空腹を凌ぐ。Levelが上がると町を出る。


『あー……菅地かぁ、初日にやらかして逃亡生活だろ? ザマミロだ。カーストトップが今や最底辺の犯罪者だろ』


『おれ、アンケート、実はアイツに入れたんだわ』


『オレも入れた。リア充自慢ウザ痛かったしな』


 な、ぁ……千羽のは俺への呪いだ。彼奴等……。


 悪意、というなら、因果応報でしょう、と幻の千羽がシニカルな笑みを浮かべる。


 俺は背後から奴等を橋の下へと叩き落として殺害して生命核を二つ手に入れる。


 次の町へ行こう。


「……俺は死なない! 生きて戻る!!」


 

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