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私たちとエクレール様たちは紫闇の森の入口で別れた。
エクレール様たちは一足先にヴァルトエァベーレ公国へと戻り、アルシェさんが依頼を引き受けたという事を大公に報せ、遺跡に突入する部隊を再編成する。
私たちはセンヴァーリアの冒険者ギルドで紫闇の森――あ、私が紫闇の森と言っているのは孤月というのが嫌だなぁ、と感じたから、エクレール様たちに倣って蔑称では無く本来の名で呼ぶ事にした。
森を離れることを伝える為に向かっている。
一応ホームグラウンドがセンヴァーリアだからね。礼儀というものだ。
偽装の魔法、いや偽装術を施されたキャンピングカーで休憩を入れつつ四時間ほどで着いたよね。
アルシェさんはキャンピングカーを次元宝物庫に仕舞うと身体を解した。
「さて、ギルドへ向かうとするか」
はい、と私とリーゼは頷き、冒険者タグを衛兵に見せて町に入る――というか、アルシェさんとリーゼは顔パス。私だけがタグを求められた。
町の貢献度に衛兵のおじさんは目が飛び出るか、と言うほど驚いていた。
しかし……貢献度は高いというかカンストしている筈が暮らす人々の信頼度と好感度が一桁と低い。
この矛盾にタグの偽造、成果の捏造が疑われて、事情聴取を受ける事に。
アルシェさんたちは事情を話そうとしてくれたけど断って、二人には先にギルドへと向かって貰った。
何故、断ったか?
だって後ろにも人居るし、関係者を騙る輩が居るかも知れないからね。
私は人の性善説を信じていない。だから、私は事情聴取を受け入れたんだ。
正直に話したよ。話したけど正直に話せ、としつこい。
私が余りにも正直に話さないから、痺れを切らした衛兵隊長が冒険者ギルドに問い合わせる。
ああ、伝言鳥か。
そして暫くして帰って来た伝言鳥――ガーリッツさんの言葉を聞いて衛兵隊長の顔色が蒼白に変わっていく。
「す、すみませんでした!! 貴女がスタンピードを報せ、尚且つ、町を無傷、町の人々の死傷者を零に抑えて、恐怖を払拭させる為に報酬や魔物を斃して得るはずだった収入も寄付をして下さった、我らが町の英雄殿の言葉を信じぬなど、コヤツにはあとで十分に言い聞かせておきますので何卒ご容赦の程を〜」
うん、一番疑ってたのは貴方だし、テーブルをドンと拳を叩き付けたのも貴方だよね。
ゴマすりをしながら気持ち悪い猫なで声で近付かないで。
私は犬派だ。柴犬ガチ勢だ。あと男は嫌いだっ!!
近付くんじゃねえぇぇぇぇっ!!
――なんて蹴り回して潰してやりたいけど、私は優しいからね。微笑で受け流して上げよう。
「ちょっ!!サンシター隊長っ!? そりゃあ無いっすよっ!!」
「五月蝿いっ!! 馬鹿もんがっ!! 貴様の進退がどうなろうが知らんがな俺には家族が居るんだぞっ!! 家族を養わねばならん!! 息子は法剣学園へ入って学費がかかるんだぞッ!!」
――まぁまぁ、仕事ですし、私は気にしてませんから。ソレはソレコレはコレと言いますし。
「知らない。貴方の家庭の事情なんて。私には関係無い。同情してもらえると思ってます?」
「ぁ……」
膝から崩れ落ち、漂白されていく隊長さん。
あ、あれ? 本音と建前を間違えて本音が口に出てた。
「あー……すみません。うちの隊長が……」
「処分を決めるのは私では無いので。貴方は真っ当に仕事をした」
「そう言って頂けると助かります。その隊長がしゃしゃり出て来たのは、アルシェ様の粘着支持者でして……」
厄介ファンかぁ。
「はぁ……なんと言いますか、その……」
「最近、幻想……夢幻一角馬は男色に目覚めたから、現処女厨は男好きに変わる加護が与えられるとか、何とか」
「え? は?」
「男同士が永遠に交われば処女性が守られるとか、なんとか」
うーん厄介ユニコーンは相手が同性でも許せなかったか。
「ほら、自分たちが交わっていれば他を気にする余裕がない、とかなんとか」
「あ、幻想一角馬を斃しているから詳しいんですね……アルシェ様本気勢の隊……長、が?」
「衛兵隊宿舎は楽園でしょうね」
絶叫する衛兵さんを置いて私は立ち去る。




