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時は遡り――
エルフェンリートの森――聖泉深部――
複雑且つ精緻な文字が刻まれた岩戸。その岩戸を封じる鎖にも同じ様な文字が刻まれている。
ズズンッ!! と岩戸を激しく揺るがす。
その激震は岩戸の中にまで響く。
振動に合わせて己を呪縛する鎖が鳴る。
岩戸がまた揺れる。
永い時を深い闇に溶けていた意思に火が灯る。
「……喧しい」
己を封じる岩戸が悲鳴を上げるか如く軋む。
それは徐々に断末魔の様な不快な音を上げる。
呪鎖が捩じ切れた。
それは連鎖し、己を縛り上げる呪は跡形も無い。
だが、永い時を少しずつ少しずつ力を削られていた。
身体を再構成させる。
美しい夜闇を思わせる霊気の奔流が人の型を成してゆく。煌めく星が如く粒子が舞う。美しい夜、聖夜を想わせる精霊が在った。
漆黒の霊衣を纏う精霊は己が存在を知らしめるように、その力を展開させた。
精緻な紋様を中心に左右四対――八枚羽が展開された。
――堅牢な魂の牢獄を破壊するほどの力を生じさせた存在か……。
崩れ去った岩戸の残骸を見下ろす眼は何処までも冷たい。
水上に浮上した精霊は辺りを見渡す。
「随分と派手に戦ったな……。それでいて世界樹には被害を出さないだけの冷静な判断は褒めてやろう」
そっと触れる。
「精霊界が堕ちてから幾星霜――」
精霊界とはこの世界に重なる様に在った隣界のことだが―― 漆黒の精霊の呟きの通り、精霊界はこの世界に堕ちた。
世界樹の記憶を追った精霊は目を見開いて絶句した。
「生きていたのか……家族を、娘を成したのか……」
感慨深くつぶやく精霊は微笑を浮かべた。
「間接的とはいえ我を解き放った。褒美をやらねばな」
神気を封じて行く。左右四対――八枚の羽が左右二対――四枚羽になり容姿も人間の15、6の小娘の様な姿に変わる。
「こんなものか……姿は良しとしよう……。では行くとしよう」
ふわりと衣を翻して漆黒の精霊は飛び立った。
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