プロローグ2
センヴァーリアの町からの帰りの道中の馬車の中。私は目の前に座る娘を孤月の森で試すつもりでいる。
ソージュと名乗る娘。
エルフェンリートの森巣食い、アールヴを喰らう魔物――アールヴイーター。奴はアールヴに対して【威圧感】でアールヴを怯えさせ、アールヴ特攻持ちで非常に高い物理・精霊術(魔法)防御を誇る。
奴に対抗出来る――出来たのが夢幻獣――聖獣である一角馬の枝族。
エルフェンリートの王族は当然のことながら、市中からも清らかな乙女を選出し、夢幻一角馬の勇者に差し出し、アールヴイーターを退治してもらう。
それが贄の儀式。
此度、選出されたのは弟子であるリーゼとその姉妹。
リーゼは始祖精霊と契約しており、精霊使いとしてアールヴイーターを斃すつもりで郷へと戻った。
アールヴが使用する精霊術や魔法では無く、契約精霊に攻撃をさせ、リーゼ自身は身体強化を用い技の冴えと武器の斬れ味で、アールヴイーターの防御力を抜き、斃す気でいた。
だが、エルフェンリートの森に居たソージュが、夢幻一角馬の勇者もアールヴイーターも単独で撃破してしまった。
その後、リーゼとともにアールヴイーター発生の根源を絶った。
リーゼが未だに帰還して居ないのは、事後処理に捕らわれているからだろう。
有り体に言えば王家の婚姻だな。
始祖と契約しているリーゼを娶る、もしくは婿入りしたいと、リーゼと始祖精霊の絶大な力を欲するもの欲情するものばかりだろう。
それらを強引に迫った場合、リーゼの契約精霊の機嫌が急降下していくだろう。
そうなってはアールヴは風精霊の枝族――精霊種として滅亡するだろう。
話を戻そう。
私の目の前に座って目を瞑り、意識を集中させている娘だ。
流浪の民と言うが、その割に世の在り方を知らな過ぎだ。いや、正しくは表層は知っているようだが、その内側の在り方を知らないと言えば良いのか、案内書クサいのだ。
それは田舎者故の無知とは違う。流浪の民という苦労も見受けられ無い。
表層の在り方しか知らぬ娘が、センヴァーリア流戦技――それも源流を修めていると言う矛盾。
源流は始祖精霊と、その対となる神獣以外知りようがない戦技。
それを始祖、神獣の契約無しに修めている。
徒手空拳にも関わらず、簡略された騎士甲冑。
幻想一角馬の勇者を斃して手に入れた戦利品。
その時にこの騎士姿になったという。
ここでも冒険者――流浪の民としての知識の無さが露呈した。
魔物――特に幻獣種などの魔物にある傾向なのだが、戦利品の防具の類は装備者の体格によって大きさが変化する。コレはダンジョン内の宝箱等から手に入れた防具も、である。
此れを【感応現象】と言う。
戦闘衣と防具を自身の戦い方に合わせるように助言をした。
ソージュが集中しているのは戦闘衣と防具を変化させようとしているからだ。
だが、余程、騎士に憧れがあるのか上手くいっていない。
■
アルシェさんにバトルスタイルに合った戦闘衣にした方が良いとの助言を貰って、【感応現象】を利用してファンタジー姫騎士装備から格闘に適した戦闘衣に変化させようとしているんだけど、私の中にある格闘系の戦闘衣は某有名な戦士たちか某有名なRPGの格闘家のコスチュームだったりする訳で……。
あーでもないこーでもないと、うんうんと唸り、熟考――もとい迷走していると、もう直着くぞ、とアルシェさんに知らされて――
――動き易い……動き易い……。
動き易いのはスポブラ、スパッツ、レギンスあたりだろうか。スウェット、ジャージとか。
それなら意匠をファンタジーっぽくしたボディースーツはどうだろう? カップ型胸部防具。ホットパンツくらいにしてブーツはサイハイブーツ。
サイハイブーツは防具でも武器でもある。
じゃあ拳は攻撃に特化させたナックルにするか攻防型のグローブにするか……どちらでもアームガードが必要だよね。
■
もう直着くぞ、と伝えてやると、吹っ切れたのか【感応現象】が発動し、ソージュの戦闘衣、防具がその形を変化させていく。
格闘――体術に適した戦闘衣と武具防具と成っている。
騎士が何故合っていないかというと、夢幻一角馬を斃して得た戦利品は戦闘衣は防具だからだ。
騎士姿なのに剣を佩いていない。
魔法が使えたからか、またはセンヴァーリア流戦技の源流――体術を体得しているからか、はたまた武器を選ばずなのかは本人しか分からないが、外から見ると違う。
騎士姿なのに剣、槍、戦斧も所持していなければ、嘲笑されるか舐めていると思われるだろう。
ソージュに絡んだ輩がその類の奴だったのだろう。
ソージュを良く居る寄生して等級を上げようとする成り金貴族の一人で、装備が立派だったから脅して、装備を己の物にしようと企んだのだろう。
だが、体術主体の戦士ならば、防具も武器へと出来る。それがナックルグローブであり、戦闘靴だ。
此れで多少は舐められなくなるだろう。
「着いたぞ。心の準備は良いか?」
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