エピローグ
「ゴブリンが変異体?!」
千破矢降を使った後でフレイヤさんにゴブリンがオコノミ、アカシという何者かによって魔改造された魔物だと報された。
「変異体だなんて【看破】では視えなかった」
どういうことだろう。
オコノミは開発者である小比見でアカシはスタッフの明石という女性だ。
小比見、島、明石の三人のインタビュー記事をゲーム雑誌で読んだから顔も知ってる。
「わざと報せ無かったって、私、疑われてる?」
「我々はそうは考えてはいません。ですが仲間を武器を心を奪われ、折られた冒険者の中にはそう考えて、貴女に責任を取れ、と考える者も少なくないでしょう」
そこで提案されたのがギルマスが口八丁で冒険者の意識を他へ逸らすまでの間、アルシェさんの住まう森に匿って貰う、という避難方法。
「ギルドもそのほうが助かる、か……私も嫌な思いしたくないし、アルシェさんにお世話になるよ」
「では、私からギルマス、アルシェ様にお伝えしておきます。ソウジュさん……あの雷撃があればお一人で薙ぎ払えたのではありませんか?」
「そうなったら討伐の褒賞金は私の総取り。それはそれで戦場に立つことさえ出来なかった冒険者たちから恨みを買うことになるから。でも私の総取りっぽくなったね。辺境伯様にもギルマスにも伝えてよ。私の褒賞金は地下の討伐分で良いって」
私は討伐数が記録されているであろうドッグタグをフレイヤさんに渡す。
フレイヤさんが申し訳ありません、と頭を下げて退室した。ギルマスとアルシェさんの下に向かったのだろう。
「なんで【看破】がオコノミエディション、エクステンデッドエディション、アカシアジャストメントエディションを見破れ無かったのかな」
考えてみる。
私はこの世界? 星? それを含めた周囲の星? が危機感を覚えて造り出した生命体――だと言う。
ならば【COCOON】に本体が残っているのか、いないのか気になるけど、取り敢えずこの世界に転移というか新生したわけだ。
私の他にこの世界に来ていない、なんて言い切れない。
それはプレイヤーだけとは限らない、と考えるならあり得る話だ。
「あー……そう言うことかぁ」
私はゲームを始めた筈だ。ゲームの世界だと小比見や明石が設定だの能力値だの作っていて当たり前だ。
だから【看破】は態々記す必要はなかった。
ゲームのゴブリンはゴブリンだ。強さなんて程度差でしかないし、役職付きは強い、フィールドも変われば見た目は同じでも名前も変わる。これも当たらり前だ。 私と同様にイレギュラーで魔物までこの世界に転移なり新生していたら、この世界の冒険者の【見破る】には変異体と映り、製作者が表記されたに違いない……ってギルマスやフレイヤさん、アルシェさんに言えないよね。
「でも、冒険者たちが敵わないほどの変異体ゴブリンと役付のゴブリンを薙ぎ払えた私の強さって、何?」
答:貴女は魔神に片膝とは言え、折らせた。故に基礎ポテンシアは魔神に劣りはするものの、それが出来る程の強さ、となっています。
それは人型族、獣人などからすれば“最高の境地に至る”事を意味するのです。
それが【天元】さんなんだ。
答:私は貴女なのですが……スキルだのアビリティだのを使いやすくした存在――イマジナリーシスターとでも思ってください。
――うーん……それじゃあ【天元】さん、なんて他人行儀だよね。じゃあさ、“紗羅”でどうかな? 沙羅双樹の字違い。
答:……【天元】をスキル名。固有名を【紗羅】とします。私は紗羅です。
よろしく。紗羅。
沙羅双樹の沙羅は私の配信者名に使っていたからね。因みに[瑞雨沙羅]が配信者名というかチャンネル名。
――……帰りたくなってきた。
マンションは逃げ場所だったけどさ、母さんや妹の涼風には何時でも会えたから……やっぱり消えたとなれば心配してる……よね。
「私が私の姿をしていれば星造生命体でも何でも良い。帰還出来ればさ」
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