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 削岩ワームを斃し、アルシェ様、クラン・シルヴァラの皆様と別れ、ソウジュさんと共にギルドへと戻って来ました。

 そして、ソウジュさんを食堂へとお連れし――


 冒険者の皆様がゴブリンの軍勢討伐に出陣し、一休みしていた料理長と料理人たち。


 一人の為に動くのを渋る雰囲気を感じたのか、ソウジュさんは今回の報酬分から食材を買い、調理を始めてしまった。



 ゲーム世界だろうが異世界だろうが料理と言ったら王道のマヨネーズだよね、と言うことで卵黄に植物油、林檎酢と香辛料、塩、砂糖を使いマヨネーズを作る。

 次にゆで卵を作って玉ねぎも微塵切りにしてマヨネーズと混ぜる。

 タルタルソースの出来上がり。

 

 パンを粗く削り、パン粉を作る。

 鶏もも肉を切り、筋を切ったり、叩いたり、フォークで穴を開けたり下拵えをする。塩胡椒、生姜にニンニクをすり下ろしたものを揉み込む。

 小麦粉を振るいにかけ、肉をコーティング。バッター液を作り、肉を潜らせ、パン粉を纏わせ、油で揚げる。

 チキンカツ――チキンコートレットの出来上がり。

 イングリッシュマフィンに似たパンを上下に切り分け、水洗いしたレタス、少量のタルタルソース、チキンコートレット、たっぷりのタルタルソースを乗せて、チキンコートレットマフィンの出来上がり。

 それをあと三つ作る。


 フレイヤさんの分もだ。一人二つ。


 私はテーブルで待つフレイヤさんのもとへ向かい、彼女の前にチキン……チキンカツマフィンを乗せたお皿を置く。


「やっぱりアールヴは臭いのきついものは食べないです?」


「いえ。そんなことは無いです。偏見ですね。何故かアールヴは肉などを食べないと思われがちなんですが、普通に狩りはしますし、そもそもソレを厭うては冒険者もやってられませんし、肉体も育ちませんから」


 アールヴの食事前の祈りを終えてフレイヤさんはチキンカツマフィンに齧りつく。


 私がフレイヤさんに待って貰っていたのは確認したいことがあるからだ。


 だけど、それはチキンカツマフィンを食べてからだ。頂きます。


 料理酒と醤油の旨味が足りないかな。あと、空腹を満たすことを優先したから、下味が馴染んでない。

 でも、タルタルはそこそこ美味く出来てる気がする。

 フレイヤさんは黙々と食べてる。もしかして私に気を使ってる?


「ソウジュさん、お料理、お上手なのですね」


「最低限出来るくらいかなぁ。自分で作って自分で食べる為に覚えたから、誰かの口に合うは考慮してないんだ」


「そうですか? 私の口には合いましたが……」


「不味いものは作ってないけど、世の中には自分では作らないのに指示をしてくる人っているからね。その人たちは苛立つみたい」


「何でもそうですね。安く買い取りだと文句を言い恫喝してくる。私たちからすると、安く買い取られたくなければ、それを売れるか自分たちで売れば良い。それをしない。そんな連中に時間を取られ業務が滞る。腹立たしい」


 探りの会話が途切れてしまった。


「……」

「……」


「フレイヤさん。ワームに弱体化の魔法かけました? 上空に飛ばした時、私の攻撃が弱まったんです。あのワーム対物理防御が高かったんだと思います。でもブランさんの戦斧は魔法を纏っていたとはいえ、あっさりとワームを乱斬りに出来た」


「ソウジュさん。確かに削岩ワームには魔法が効きます。ですが危険度の高い魔物です。私たちの方が格下となりますが、ソウジュさんのファントムアタック、ファントムペインのお蔭で、ワームは理性――と言って良いのかは疑問ですが、そう言ったものが失われていたんです」


「暴走状態だから、効いた?」


「ええ。本来は徐々に蝕むものですが、ソウジュさんの攻撃によって、上空に飛ばされた時点でワームの生命力は危険域にあった。だから弱体化魔法が即効いた。それが討伐の真相です」


 地中から突撃、直ぐに地面へと飛び込み地中に離脱するのがワームの戦法で、いつ挟み込み攻撃を喰らうか判らない為に近接攻撃が出来ず、地上に縫い留めることも簡単じゃない。

 それが危険度が高い理由。

 空中に打ち上げたことで無防備になり、ただの的になった。

 魔法や魔法矢で死に体だったけど、回復されたら再度、私が囮にならなければならないから、ブランさんがラストアタックしたんだって。  

 

 疑問も解決したし、お腹も満たしたし。

 

「私も少しは援護しようかな」


 【探索】で状況を観てるけど、シルヴァラの三人やアルシェさんが遊撃で戦場を駆けているけど、戦況は良くない。


 抜かれるのも時間の問題かな。


 【天元】さんは何処まで私の厨二病についてこられるかな?


 答:見せてもらいましょうか。貴女の厨二病とやらの幻想を。


「ソウジュさん?」


「フレイヤさんは記録を取ってギルマスに報告しないとでしょう?」


 部屋に戻り再び屋根に登る。あ、尖塔ではないよ。


 【探索】で敵対の赤い光点をロックオンする。


 詠唱は必要無い。私が使う業に一々詠唱を挟むのは無駄だ。

 まぁ、格式と言うか様式美と言うか、壮厳? 壮麗? そう言うものが必要なのだろう。


 技名を言えば気持ち攻撃力が上がるような感じかな?

 それよりも速さを求めたい。

 活躍の場を奪っても駄目だから、スタン程度の威力で、と。


「千破矢降」


 一極集中雷撃の千破矢降ではなく、数多の雷を降らす雷撃に変える。


 領都の外、ドーナツの輪のように戦場が広がる上空にドーナツの輪状に雷鳴雷光が轟き、地上のゴブリン軍勢へと雷槍が降り注いだ。


リアクション、☆、ブクマで応援いただけるととっても励みになります。

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