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小比見がダイブしました。
森林の中。焚き火を囲んで動物肉の丸焼き喰らっていたジェネラル級ゴブリンが立ち上がり、食べかけの骨付き焼肉を投げ捨て、咆哮する。
すると乱痴気騒ぎをしていたゴブリンたちも呼応し、粗雑な武器を掲げ、鬨の声を上げる。
占拠された村。村娘を犯していた勇者級と英雄級のゴブリンが、村娘を放り出し、板に張り付け肉盾とし、丸太を削り造った棍棒にも縛り付ける。
彼らは人間が彼女たちを傷付ける事が出来ないと学んでいるからだ。
張り付け、縛り付けられた娘や子供たちに語って聞かせ、恐怖を煽る。
崩れた砦跡。人の骨を組み合わせた魔法杖を手にしたゴブリン魔術師が目を開ける。
目の前のゴブリンたちもまた短いが骨で作った魔法杖が握られている。ゴブリンたちから大魔術師と敬われる彼は報復の時は来た。我々を捨てた人間どに思い知らせてやろうぞ!! 杖を高々と掲げる。
そして――
「戻って来たで……。ファントム……いてもうたるからな……」
隠れ家――現実に死に戻りし、休憩を挟み込み直ぐ様【COCOON】を起動、ダイブした。
――なんや知らんが、明石の言うとったが、俺が設置した襲撃ユニットのゴブリンどもが勝手に動きだしたっちゅうとったな。なんでや?
せやから俺もまたゴブリンのアバターでダイブした。
森林、村、砦、そいで俺が率いるのはロージー・キシィワーバっちゅうキャラに管理させてる町からの襲撃。
静かなる侵略イベントを暴くっちゅうイベントのキャラや。
まぁ、外患誘致罪で処される悪役なんやが。プレイヤーはコイツを暗殺する必要がある。いわゆる人誅ちゅうやつやな。
人誅に失敗すると殺られる前に殺ってやる、言うてゴブリンの魔石を喰らって、ゴブリンに転化して人暴れして逃げおおせる。そんなイベントや。
で、俺は当然ロージー・キシィワーバを唆した魔族のゴブリンのアバターや。何が違うかって。そら、ナイスガイな外見や。イケメンやでイケメン。ほんで俺自身の頭脳を持ったアバターや。
そんな俺は今、ワームを使役し、地下道掘りつつセンヴァーリアに侵攻中や!!
三方を外から襲撃や。NPCの冒険者どもやプレイヤーどもが、残る一方も外からや、と警戒しとる中、手薄になった町中にいきなりドーンッや!! 冒険者やプレイヤーの信用、信頼度もガタ落ちや!!
これでプレイヤーの安地は無くなる。
そいでや、このイベント。ソロやと参加出来ん仕様や。『ファントム』にはキツイやろな。なんせ、レイドボスを単独で討伐。莫大な経験値とアイテムを掻っ攫って行きよったんや。ぎょうさんのプレイヤーから妬まれ恨まれとる中で自分が『ファントム』や言うて名乗り出れんやろ。
戦わんかったら戦わんかったで、逃げた言うて拡散させて炎上させてる。これで『ファントム』も終いや。




