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「ソウジュさん。此方に手を乗せて下さい」
私を案内をし終わったシュリカさんがギルドマスターに呼ばれて戻って来た。
ギルマスが机の端に置いてある音の鳴らない呼び出しベルを軽く叩いたのだ。
スタッフが常駐している場所と繋がっていて、そっち側で音が鳴るのかな?
シュリカさんと入れ替わるようにキシィワーバが連れ出され、犯罪者として地下牢行き。外の連中も捕縛される。
ギルマスはシュリカさんを労い待機させる。
「嬢ちゃんの魔力を登録するものだ。その魔力でこの針が動いて個人識別票に嬢ちゃんの情報が刻まれるって寸法だ」
手を置くとピリピリとした感覚が掌に起こった。
ステータスを刻む機構が動く。識別表に直接刻むのでは無く、正しくは私の魔力で識別表に照射して写しているという。
「では、此方がソウジュさんの個人識別表になります。記載された情報に間違いが無いかご確認下さい」
手渡されるドッグタグ。
ドッグタグは依頼を受ける際、終わった後に受付けに出す。するとその情報が追加され、終わった後に成功か失敗かが記録される。
良くあるステータス表記はないという。首を傾げられた。
数値にした所で意味が無いという。そんなものは戦闘感だとギルマスは笑う。
実際に筋肉ムッキムキのギルマスと、細腕の私がゴブリンのカイザー級が率いる数多の軍勢に勝てるとは到底信じられない、というのが普通の感覚だし、私が強者の風格が感じられない。
だから強さは闘ってみないと判断出来ないし、強者なら闘わなくても判断出来る事がある。それが出来ない奴が早死にする、とギルマスは真剣な表情で言った。
名、年齢、性別、生まれた月日は合ってる。それはそうだ。アカウント作る時に入力したんだから。でも入力したはずの年が無い?
何故?
称号
【魔神に挑みし者】【脅威を喰らいし者】【計画の破壊者】
パッシブ・スキル
【リザレクション】
【天元】
【嚆矢の一撃】
【Absolute Virgin Field】
アクティブスキル
【看破】
【索敵】
【狙撃】
【隠形】
魔法
[百合魔法【百合に挟まる雄は滅却してしまえ】]
『薔薇色の祝福』
[グラビティー・ギャラクティックエクスプロージョン]
[千破矢降]
[夢幻]
流派
【千羽天剣流】
[千羽天剣流 体術]【天照】【星環】
[千羽天剣流 練環氣功破【破軍】]
【千羽天剣流【千破矢降】]
▽
派生技
[舞翔脚]
[ブラッディレイン・ニークラッシャー]
[昇天衝脚]
これらが記されるのは成長の証ってこと?
あとは討伐した魔物などだ。
経験値が無いのは“感じろ”が基本だからだろう。
あと[グラビティー・ギャラクティックエクスプロージョン]って何? 長いし、小学生が取り敢えず格好良さげな言葉を並べた感がするのは気の所為?
答:あらゆる属性の魔法と組み合わせたグラビテーションの魔法がアールヴイーターの体内で時間差で一纏めになった結果、いちいち属性をくっつけて放たれるダメージを演算するのが面倒――おほん、失敬。魔力消費を抑える為に全属性をぶち込んだ魔法に仕上げました。褒めてもいいんですよ?
う、うん、流石だよ、凄いよ【天元】さん。これからも頼りにしてます。
私のステータスは限界突破っていうか天元に到ってしまったから、あとはひたすらに戦闘感を上げていく事が主な目的になるけど、この
膨大な経験値が必要になってくるとレベリングはダルくて萎えるんだけどさ、ゲームにバトルスキップとか無いよね。
自分が強くなったか数値で見えないのは心が折れるかも。
現実的だって言われてしまえばそうなんだけど、ステータスの上昇で強くなって悦に浸るプレイヤーには受けが悪そうだ。
あと[昇天衝脚]って絡んできた冒険者に見舞った金的のことだよね。昇天するほどの衝撃の脚技って意味かな? あれって崩れ落ちて来た頭を踏み落として地面に叩きつける追撃も可能何だよね。
とかイメージしたのが駄目だった。
[天墜・落地星]なる技名となって追加された。
「間違いは無いよ」
「では、これで登録は完了致しました。私たちが閲覧出来るのは本人確認と依頼達成の成否と過去の記録です。あと――」
冒険者ギルドや商業ギルドの受付では銀行みたいに預けたり引き出したり出来る。
残高照会や記帳も行える――以上が個人識別表で出来る事の説明だった。
ギルドの受付嬢、エリートとかキャリアウーマンとかっていう称号を得る代わりに、休養とか休暇をその対価に支払うことになってない?
その上、冒険者の愚痴や自慢話を聞かされて、口説かれたり、セクハラされたり、依頼者の長話や家族の話や病気の話を聞かされて業務が滞って、待っていた人に罵詈雑言を吐かれて、その矢面に立たされるんでしょ? 病むよ?
続いて冒険者ギルドとセンヴァーリア辺境伯による依頼であるセンヴァーリア防衛戦への参戦要請に応じた事を記された。
「シュリカ。嬢ちゃんを隣室で休ませてやってくれ」
案内された一室で私は時間を持て余していた。
何時襲撃があるのか解らないから落ち着かない。
緊張感も何時まで保っていられるか分からない。
それが切れた時に襲撃があったら?
「一層のこと此方から討ちに行けると良いのに」
夜討ち朝駆け、一気呵成に攻める。さっさと終わらせて、あとはのんびり過ごす……そう出来れば良いのに。
――何がグッバイオールドワールドだ。現実と変わらない。
利権チュパカブラたちが媚て傾倒して誘致して、異国に技術を土地を売り、彼方此方侵食され、世を乱す。
アサシンを職業にするプレイヤーが暗闘を繰り広げるイベントなのかな?
リーゼから貰った残り少ない木ノ実を食べながら時を待つ。