表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/20

一休みと考察

 防具を外して仰向けに寝転び、天井を見ながら、それにしても――と考える。


 緊急とは言え、見ず知らずの娘を自室で休ませるなんてセキュリティ意識は大丈夫?

 私は助かるんだけどさ。医務室なんて男の人も入って来るし、安心して休んで居られないからね。

 不可抗力で傷付けたら組織の評判が悪くならないように隠蔽したり、逆に私が兵を誑かしてベッドに誘い込んだって罪を着せられる。そんなのはもう嫌だ。


 兵士なんて厳しい訓練、罵倒でストレス溜まって性欲も溜まってそうだし。獣だ気をつけないと。


 部屋の外――廊下が騒がしい。

 ゴブリンとは言えど軍勢となると楽観は出来ないのかも知れない。きっと非番の兵士に緊急召集が掛かったのだ。


 メニューを開く。


「まだバグが修正されてない」


 何時になったらゲームを止められるんだろう? セーブもロードメニューも問い合わせも無い。


 目の端のゲージが減っていく。

 空腹感と喉の渇き。


 魔法で小さな水球を作り、喉を潤す。

 水では空腹感は止まってくれない。


 空腹感が浮上(※ログアウトのこと。因みにログインはダイブ)出来ないことへの不安感を連れてきた。


 考えろ。


 1.チュートリアル前にラスボスに殺された事によるバグ。

 今までこう考えていた。

 2.ラノベよろしく運営のデスゲーム開始宣言で機能は消された。

 3.あり得ないかも知れない。けど、あり得ないなんてあり得ない……私、ラスボスに殺された瞬間、異世界転移したって言う可能性。もしくは転生?


「この身体……本体? 本体を模した義体? 嗚呼もうっ! どっちだぁ〜っ!!」


 なんだか泣けてきた。

 

 ふと、頭を過ぎったのは巨体ゴブリンだ。


 ――あの四角い光と手の動き、メニューを開いて何かをしていた動きだ。


「私以外にも……いや、わざわざ悪側――悪なんて無いか……善悪なんて立ち位置で変わるものなんだから、魔物でのロールプレイが好きな人かもだしね。他人の趣味に口出しちたら駄目だよね。……だったら悪いことしたかな? いや、プレイヤー殺っちゃったんじゃあ……ないかな……。でも【天元】さんは見敵必殺を推奨してたし……【看破】もプレイヤーだって表示されなかったし……。いや、待って、リーゼやタリアさんにもNPCなんてマークで出なかったよね」


 【看破】のログを見る。


 安心してください。ゴブリンプレイヤー小此見は死んでませんよ。

 現実でデスゲーム宣言したデスゲームメーカー。

  監禁、殺人の容疑者。逮捕に至っていない。


「え……?」


 小此見って開発陣の小此見輝哉? 


「何で急に? あ、私が斃したしたからエネミーの正体が詳らかになったんだ」


 でも【看破】なら最初から解ったんじゃないかな?


 回答:それではボスを含めたエネミー、クリーチャー事典をコンプリートする楽しみが無くなるからです。


 それなら、アールヴイーターを【看破】出来たのは?


 回答:処女厨夢幻一角馬と紐付けされたクリーチャーだからです。


 ゴブリンは最初の斥候を斃したあと遠距離で仕留めたから【看破】は使ってないや。


 【看破】を使わなくても勝てると感じたから……か?


 それにしてもあの巨体ゴブリンが小此見だったなんてね。

 ゲーム雑誌のインタビュー記事で、本物が見たいんだ、本物の命の輝きを見たいんだ、って言ってたからね。

 追い詰められた人間の本物の感情を見せてくれたまえ、って嗤っていた。

 そう、飛び付くであろうプレイヤーを嗤っていたんだ。

 あれはアリの巣に水を流し込んでアリの行動を観察する者の目だ。もしくは翅や手脚を千切って捨てた蝉がどうなるか観察する者の目だ。

 命で実験をする者の目だ。


 回答:優位に在る時は神態度。不利になると小者ムーブを連発する典型ですね。


 あのタイプの人間は勝てる相手を選んだ勝ち戦しかしないからね。神にでもなったと勘違いした人特有の驕り方だ。

 私に負けて、ちくしょう……っ。ちくしょおおぉぉおおっ!! って叫んでるね。間違いないよ。


 ここは閃き(アイデア)の元となった世界ってことだ。

 

 姿見がある。


「【看破】」


 自分に【看破】をかけるも全てが■■■だった。


「何でヤベー奴みたいになってるのさ」


 自分で自分を【看破】したら死んじゃうとか?

 あー……もしくは何かが足り無いんだ。

 誰かに見破られたら弱点に繋がるとか、真名に繋がるから伏せられてる。

 人間って表示されない時点でこの身体は義体が確定したも同然だ。


 双樹:星造生命体。


 あ、自分で見破ったら判明した。


「星造生命体ってなに?」


 回答:星が造りし生命体。


 そのままだね。星の危機に造り出された守護者とかそんな感じ?


 こう言うのは物語のクライマックス間近で真実が明かされて、感動的に盛り上がって涙無しでは居られない、そんなイベントじゃあないかな。

 あっさり答えが出ちゃった。


 でも、星の危機とは何ぞや? それにゲームとリンクしてるのは何で?


 何故この異世界に小此見は出現出来たんだろう。

 

 ねぇ、【天元】さん。


 回答:禁則事項により答えられません。自らの目で確かめてください。


 それっきり【天元】さんは沈黙してしまった。


「義体って言うことは戻れる方法や可能性があるってこと……だよね」


 小此見が異世界と思われる場所にダイブ出来たのだから、その逆に戻る術もあるということだ。


 私は遥か彼方に届けと天井へと手を伸ばす。


 繋がってる。途切れていないならその手段を必ず掴んでみせる。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ